彼が髪を切ったなら
※589現パロ
高校生位で
くさってはいない…はず

蒸し暑い廊下を抜け、教室の扉を開ければ、同様に湿気と熱気含んだ空気が風にのってスコールの身体にまとわりつく。
雨が降ったかと思えば急に晴れだしたり…この季節は不快指数が上昇するな…等と、彼はいつもの様に心の中で呟いた。

今日は授業が半日の為、既にほとんどの生徒がいなかったが、自分を待っていたであろう二人組を見つけ近付く。
しかし、その二人の光景にスコールの動きが一瞬止まる。

椅子に座ってスマホをいじるジタンの後ろにはバッツの姿。
…そして、櫛で丁寧にジタンの髪をとかしている…泣きながら。

「…何をしている」
「あ、スコール来た。早く帰ろうぜ〜」
「うぅ…お帰り…」

尚もシクシクと半泣き状態のバッツに、スコールは訝しげな視線を送る。

(何なんだ…気持ちが悪い)

「いや、ジタンがさぁ…髪をさぁ…切っちゃうんだってぇ…」
「どうしてお前が泣いているんだ」
「モッタイナイじゃないか!こんなに綺麗な金髪なのに!」
「だって、あっちーんだもん。イメチェンも兼ねてこう、バッサリと」

そう言ってジタンは自分の髪を、下の方から思いっ切り持ち上げる。

「あああ、折角とかしてたのにー!」
「悪い、悪い」

謝り方があまり申し訳なさそうじゃないジタンの背後では、魂を抜かれた様な顔をしたバッツが、のそのそと櫛を手に取り、構える。

(まだやるのか…)

「別にいいじゃないか、髪型ぐらい」
「ぐらいって…スポーツ刈りレベルになったらどうすんだよ…はっ!まさかそこまでしないよな?な??」
「さー…どうだろ」
「ちょ、そこは否定して!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐバッツだったが、手はしっかりと動いていて、どこから出したのかゴムや髪留めで器用にジタンの髪を結っていく。

「ほら、似合うだろスコール。男子の永遠の憧れ、ポニーテール!」
「………」
「おい、人の髪で遊ぶなよ」
「ホントの本当にアリだと思うかスコール?ジタンの超・短髪!」
「……」
「イイ男はどんな髪型でも似合うんだよ。な、スコール」
「…」
「それは幻想だ!俺もそう思っていた時期があった…が、やっぱりダメー!NOだ!」
「おい、バカやめろー!重い、重いって」

腕で×を作りながらジタンの頭の上に押しかかるバッツの首根っこをスコールは掴み、引き剥がす。

「想像してみろよスコール、このサラサラがツンツンになってしまう恐怖」
「た、確かに想像はしにくい…が、ジタンの自由だろう?」
「スコールも触ってみればいいんだ。そうすれば絶対反対する!」
「いや、いい…おい、止めろ、引っ張るな…!」
「どーでもいいから早く帰ろうぜー…」



***



後日。
学校の廊下にて。

「ん?ジタン髪切った??」
「あ、セシルか。よく分かったなぁ」
「最近暑いよね、僕も切ろうかな」
「反対するヤツがいなきゃいいと思うけど…」
「?」
「じゃあなー俺こっちだから。バッツとスコールが早く来いってうるさくて」
「うん、じゃあね」

手を振り、走り去っていくジタンの後ろ姿を見ながらセシルはクスリと小さく笑う。

「なるほど、反対されると辛いね〜」

ジタンの髪型は以前とほぼ変わらずで、切った事は切ったのだが、毛先数センチだったという。


〜fin〜


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2014 6.23 UP
私もそう思っていた時期がありました
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