士団とギルド



月が遠のき、夜空は次第に明るさを持ち始める

太陽が世界を照らしだした

朝日が登ると人々は徐々に活動を開始しはじめる
それはシーフォ家も例外ではなく騒々しい朝を迎えていた


「遅刻したー!どうしよう、今日は重要な話があるって言ってたのに、ばか!ばかばか、オレのばかー!」
「んな事いっっねえで早く行け!!フレンは大分前に行ったぞ!!ほら、これだけでも持ってって向こうで食え!」
「二度寝したアルス兄が悪いぜー!」
「うぅ、せつにゃんこめ、帰ったら覚えてろー」
「多分忘れてると思うぜ、セツナだしな」
「…アルスさん、無駄話はいいですが、時間はいいんですか?」
「ぬは!ヤバイ!これ、ユーリありがとういってきます!」


片手には今朝の朝食予定であった野菜スープの入った筒をしかと持ち、脱兎と家を飛び出していった

わりとよくある光景なので慌てる事なくコーヒーを啜るパシャとモグモグとパンを食べるセツナとライ、眠そうに目を擦るカロル…傍ではラピードが欠伸をしていた

ただ1人ユーリだけは渋い顔をして窓からアルスの慌てて走る背中を見つめる

今朝のフレンの話を思い出すと、結構ヤバイ状況にあるかもしれない…

大事にならなければいいがー…そう願いユーリは窓から離れた







「遅い!」

「う…ご、すみません」


辺りに厳しげな声音が響いた
大理石の壁に反響しフレンの本来の声よりも大きく聞こえアルスの肩が揺れる

急いで走ったが間に合わなかった

すぐに頭を下げたが、今ここに集まる隊のみんなを待たせた責任は頭を下げただけでは許して貰える筈もなく、その責任者であるフレンは険しい表情をしている


「…アルスには罰を与える。今日は1日城で雑務をしてもらう」
「……はい」
「ラント副隊長には、アルスの監視を任せる」
「はっ!!」
「それ以外の者は私と共に護衛の任についてもらう。解散後直ちに正門に集合するように、…では解散!」


フレンの凛とした立ち振る舞いに他の騎士たちの覇気が湧いた
そんな姿を見て、家とは大違いだなぁとほうけていると肩を叩かれる

振り返ると、自分の不甲斐なさで付き合わせてしまう事になったアスベルの姿があった


「あの…アスベル副隊長…すみません」
「まあ、仕方ないさ。オレたちは隊長から任された仕事に全力で答えたらいいんだ」


力強く拳を作ったアスベルはアルスを励まそうとしてくれているのだろう

その気持ちを汲み取り、アルスも持ち前の元気とやる気を見せる
雑務と言われても、大した仕事もない


「アスベル副隊長…何をすれば?」
「そうだな…。騎士団支給の剣の手入れ、鎧の手入れ…くらいじゃないか?」
「うわー…分かりました」


手入れは地味で単調だ
せめて体を動かす仕事がよかったが、フレンはそれを見越して雑務を言い渡したのかもしれない
肩を落としたアルスの腹が空だと訴えるように鳴いたのを聞いたアスベルは苦笑した


「朝がまだなんだろう?食べてから開始しようか」
「はい!」


恐らく他の隊では食事などさせてはもらえないだろう
アルスはアスベルの心遣いに感謝しつつ、野菜スープが入った筒を取りに行った


武器庫で剣や鎧を磨き、どれくらいの時間が経ったのか分からなくなった頃、不意に思い出したようにアルスは顔を上げた


「どうしたんだ?」
「あーえと…フレン、隊長の重要な話ってなんだったのかと思いまして…。それに護衛って…」
「ああ、あの話か。手入れが終わったら話す」
「うう…気になる、から速攻で終わらせる!」


あくまで雑務を終わらせてからだと言うアスベル
アルスは腕まくりをして剣磨きの布を握りしめた


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