※連載「終りのまなざし」の番外編のようなもの
※終りのまなざしのヒロインとこの話のヒロインは別人です。友人同士という設定


『三反田数馬くん』

その人は一文字も間違えることなく、初対面であるはずの僕の名前を呼んだ。
僕が三年生になって間もない頃だった。
薬草の本をめくっていた手を止めて、医務室の床に座り込んだまま見上げたその人のことを、僕は四年生になった今でもよく覚えている。
背が高くてほっそりとした体で、立ち姿はまるでしなやかにまっすぐ伸びた竹を思わせるような、女の人。
医務室の戸に白く細い指をかけ、初夏の白い太陽を背負った姿に、僕は数秒、見惚れていた。



僕がまだ一年生だったある時、善法寺伊作先輩の同級生だという女の先輩が怪我をこさえて医務室に訪れたことがあった。
たまたま医務室には僕しかいなくて、一年生ながらにたった一人で人の怪我を診なければならない状況に、ちょっと焦ったのを覚えている。僕はまだ保健委員のたまごで、包帯の巻き方ひとつとっても先輩には遠く及ばなくて、いちいち深呼吸しなきゃ作業にならないくらいだった。
たどたどしい手つきなりに、細い腕に包帯を巻き終え、内心でこっそり胸を撫で下ろしていた時。その人は「ありがとう」の後に「一年くん」と付け足した。
一年生なんていうのは、まだ入学前の甘えた精神に毛が生えた程度の未熟な時期で、だから僕は、そういう言葉に対していちいち律儀にムッとしていた。
その人に悪意がなかったことは、今ならもうすっかり理解できる。だって、その人は僕の包帯の巻き方を褒めてくれたから。
その後も時折あの先輩とお会いしたけど、そういえば僕のことをまともに名前で呼んでくれたことはほとんどなかった。
二年になれば「二年くん」だったし、三年になれば「三年ダくん」とかふざけた呼び方をされた。さすがにもういちいち腹を立てたりはしなかったけど、三年だから三年ダくん、のセンスはいかがなものかと思ったものだ。

そういうわけで、保健委員会は接点のないくのたまともそれなりに関わりを持つ稀有な委員会だった。
くのたまなんて意地悪くて怖くて近寄りたくない、なんて思いがちだったけれど、年の離れた先輩は案外僕らに優しかったし、おかげでくのたまを必要以上に敵視したりしないで済んだ。同い年や一個上のくのたまは相変わらず何かにつけては僕らを利用しようとしたり罠にかけようとしたりするけど、それはもうそういうものとして受け入れる他なさそうなので、色々と諦めた。



三年生になってしばらく経った、五月は中頃を過ぎたくらいの日のことだった。

僕は保健委員会の当番で、時間になってもやって来ない伊作先輩を一人で待ちぼうけしていた。先輩が遅刻してしまうのはよくあることだし、保健委員会の人間が遅刻をするのは、もはや仕方のないことだ。何故なら不運だから。
先輩が来る頃には部屋が心地よい状態になるように、障子戸を半分開けておくことにした。
昼間の空気は洗濯したみたいに爽やかで、部屋を通り抜ける風は絹みたいに柔らかかった。毎年、立夏を境にして、まるでスイッチが切り替わるみたいに正しく風の色が変わるのが不思議で、だけどそういう瞬間の風が好きだった。

僕は医務室に置いてある薬草の本を手に取った。伊作先輩おすすめの本。
先輩は、すでに暗記していらっしゃるらしかった。

「枇杷の葉っぱは痛み止め」

独り言ちながら、書物のページの端っこを親指で軽くめくった。
歌うみたいに、暗記した本の内容を読み上げるのは、伊作先輩のクセだった。

伊作先輩の下、五年、四年に保健委員はいない。つまるところ、伊作先輩にとって直属の後輩は僕だ。

「桜は塩漬け、咳によく効く」

いつか、いつか先輩はいなくなる。
その時、僕はどうしたらいい。
保健委員の先輩として、下の学年のみんなにどう振る舞えばいい。

そういう類の不安は、三年生になった日からずっと抱えていたものだった。
こうして医務室に一人でいる時は、特にそういう不安が増長していって、先輩が来るとほっとして。けれど結局、先輩に頼ってしまう自分が嫌になって。
そうやって、日々堂々巡りを繰り返していたのだ。

「とん、とん」

柔らかい声だった。
遠く聞こえる下級生たちのはしゃぐ声に被さって、はっきりと聞こえた声。
耳に優しい、女の人の声だ。

言葉の意図を解りかねて、返事をし損ねた。
開けていない側の障子の、その向こうに声の主がいるらしい。太陽の光で浮かび上がる影の背格好からして、先輩のようだった。僕たち三年生は、背の高いくのたまの先輩にはまだ背が追いついていなかったりする。

「とんとん、保健委員さん、いますか?」

おんなじ声で呼びかけられて、声を裏返しながら慌てて「ハイ」と返事をした。どうやらノックのつもりだったらしい。

床の軋む音ひとつ立てずに、その人は障子戸の影から姿を見せた。
しゃんと伸びた背筋に、まっすぐな視線。淡い桜色の忍び装束に、日の光が当たって優しく光って見えた。
その人の姿につられるみたいに、僕は丸まっていた背筋を伸ばした。そういう、不思議な力のある人だった。

「三反田数馬くん」

だよね? と小首を傾げるその人は、開いた口が塞がらないまま固まっている僕の顔を見て小さく吹き出した。
僕はこの人を知らない。初対面のはず。

「どどど、どうして僕の名前……?」
「ん? いや、ちょっとね」

にひ、と歯を見せて笑う年上らしい女の人の、その意外な幼さが唐突に眩しくて、目を丸くしたまま素早く瞬きした。
変に緊張して、思わず視線を落とす。
そこで、僕はようやくその人が足を不自然に庇っていることに気づいた。

「あれ? あの、ひょっとして、足を……?」
「そう、ちょっとヘマしちゃってね。診てほしくて」
「大変じゃないですか……! さ、早く中へ」

慌てて促しながら、読んでいた本を部屋の隅へ押しやり、足を庇うようにして腰を下ろした彼女と向き合った。

「どこを怪我されたんですか?」
「足首捻っちゃったんだ、すぐ川の水で冷やしたから痛みは引いてるし、そんなひどくないとは思うけど」

言いながら、その人は服の裾をまくり上げて見せた。確かに、足首の辺りが少し赤黒く腫れている。肌が白いせいか、余計に痛々しく見えた。

「失礼します」

細い足首にそっと手を添え、患部に触れる。確かに、腫れてはいるが熱を持っていない。すぐに冷やしたのが正解だったのだろう。
内出血でもしたみたいな見た目のエグさに反して、怪我の具合は酷くなさそうだ。ホッと息を吐きながら手を引き、背後の棚を振り返った。

「包帯で処置しましょう。しばらく固定して動かないようにしないといけませんから」
「ありがとう、助かる」

優しい声を背中で聞きながら包帯を一巻き分取り出し、改めて彼女に向き直る。
凹凸の少ないなめらかな足の甲に包帯の端を当て、そっと巻いていく。
足元に視線を落とし、包帯を巻くことに集中してはいるが、彼女から受ける視線のせいかなんとなくつむじの辺りがくすぐったい。

「やっぱり手際がいいね、三反田くん」

また、当たり前のことみたいに名前を呼ばれたことにどきりとして、一瞬手元が危うかった。

「……あのう、どうして僕の名前を?」
「君のことを変な風に呼ぶくのたまがいるでしょう、善法寺と仲が良い子」
「へ? あ、ああ、あの人か……」
「あの子から話聞いてたから、三反田くんの話。しょっちゅう怪我するから、よく手当てしてもらってるって。すごく助かってるって言ってたよ」

なんだ、あの人ちゃんと僕の名前わかってたのか。
いつもミョーな呼ばれ方ばかりされているから、てっきり名前なんてうろ覚えなのかと思っていた。

「ご友人なんですか?」
「うん、卒業後の進路的に目指してるものが近いからかな、結構仲良いよ」

卒業後、という言葉に嫌な汗をかきながら、手の汗で包帯が滑り落ちないよう、一つ深呼吸をして気を引き締め直した。

「あの、六年生なんですか?」
「そうだよ、六年生。そっか、私名乗ってなかったね。みょうじなまえって言います。改めてよろしくね、三反田くん」

包帯を巻くのに集中していたところに、急に無理やり顔を覗き込まれた。思わず「うわあ!」と飛び上がらんばかりに肩を跳ねさせ、危うくあと少しで巻き終えられそうだった包帯から手を離しそうになった。今までの苦労、全部おじゃんになるところだった。
そういう僕の様子に、みょうじ先輩はまた子どものような笑い方をした。もともとの顔つきが大人びている分、そうして無邪気に笑われるといちいち見入ってしまいそうになる。
平常心、と自分に言い聞かせながら最後の一巻きを終え、包帯の端を結んだ。

「終わりましたよ」
「わ、すごい。ちゃんと綺麗に巻かれてる」

包帯でぐるぐる巻きな自分の足を、目を輝かせながら眺めるみょうじ先輩は、後ろで結んだ髪の毛をひょこん、とジャンプさせながら勢いよく顔を上げ「ありがとう、三反田くん」と声を跳ねさせた。
そこまで喜ぶようなことなのかな、と心の中で独り言ちながら「いえ、僕は保健委員ですから」とお決まりの言葉を口にした。

「そういえば保健委員って、善法寺の下は三年の君が一番上なんだっけ?」

みょうじ先輩が何でもないように切り出した話題に、つい一瞬言葉が詰まった。
すぐに気を取り直して「そうですね」とだけ返したが、みょうじ先輩は何かに気づいたのか、少しの間、互いに無言になった。

「私たち六年が卒業したら、三反田くんが保健委員の最高学年になるのかぁ」
「予算会議とか、僕らはどうしたらいいんでしょう」

乾いた笑いまじりに不安を口にしてみたが、こんなことを相談されたってみょうじ先輩は困るだろう。怪我をして、医務室を、保健委員を頼ってくれた人に、保健委員の僕が縋ってしまうのはどう考えても筋違いだ。

「す、すみません。僕、影が薄いから、こう……すぐ不安になっちゃって、って、何言ってるんでしょうね、僕……」
「影が薄い、か」

慌ててごまかすこちらの言葉に、みょうじ先輩は真剣な顔で顎に手を当て、何事か考え始めてしまった。かと思うと、その一瞬の間に顔を明るくさせ、僕の顔を覗き込んだ。

「ね、こういうのどう? 一年、二年、三年が会計委員の気を引いてる間に、四年の君が影の薄さを利用して、帳簿をこっそり都合の良いように書き換えちゃうの! で、いつの間にやら十分な予算が手に入っちゃうわけ! どう?」

悪戯っ子が新しい悪だくみを披露するみたいな口調で、トンデモな策を口にするみょうじ先輩は何でだかすごく楽しそうだ。
その様子につられて、胸の奥から勝手に笑いがこみ上げてきた。

「本当にそんな策が通じますか?」
「通じるよ、何たってプロ目前な私の策だもの」
「あははっ、そうですねぇ、それも一つの案ですね」

自信満々に胸をそらすみょうじ先輩と顔を見合わせながら笑った。このほんの少しの時間で、僕は多分、気持ちが結構楽になっていた。
ひとしきり笑った後、みょうじ先輩は僕の頭にぽすん、と掌を置いた。

「忍者のたまごなら、何でも武器にしないとね。大丈夫だよ、三反田くんなら」

数回、僕の頭をぽんぽんと軽く叩いて、みょうじ先輩は軽やかに立ち上がった。

「さて、私は行くよ。じゃあね三反田くん。足、ありがとう」
「いえ、お気をつけて」

さっさと行ってしまうかと思いきや、先輩はしばらく僕の顔をじっと見下ろしていた。何だろう、と先輩を見上げながら頭のてっぺんにハテナを浮かべていると、先輩は不意に優しく口の端を上げた。

「善法寺にも話してやりなよ、そういうのさ」
「え?」
「君だって、後輩に頼りにされるのは嬉しいものでしょう」

じゃあね、と手をヒラヒラさせながら、みょうじ先輩は今度こそ出て行ってしまった。
言葉を噛みしめる間も、みょうじ先輩という嵐みたいな人との出会いの余韻もないまま、入れ違いで伊作先輩がやってきた。

「今、くのたまの子、いたね」

開口一番、伊作先輩はみょうじ先輩が出て行ったほうを見ながら呟くようにそう言った。

「数馬」
「はい、何でしょうか」

改まって名前を呼ばれて、背筋を伸ばす。優しく振り返った伊作先輩は目を細めながら口を開いた。

「予算のつけ方とかさ、ちゃんと教えるから」

思わず目をまん丸くして、みょうじ先輩が歩いていった方向を目だけで追いかけた。
もしかして、みょうじ先輩は伊作先輩が医務室に近づいてきていたことに気づいた上で、あんなことを言ったのだろうか。

「ありがとうございます」

もう、とっくに姿の見えなくなってしまったみょうじ先輩に、届くはずのない言葉を口にをする。
後輩の目には見えないところで、先輩方は僕らの背中を押してくれている。そういう力に気づいていって、僕らは彼らの心を受け継ぎながら、先輩になっていく。

「ありがとございます、伊作先輩。どうぞよろしくお願いします」

伊作先輩に向き直り、膝に手をつき頭を下げる。
先輩は「もちろん」と声を弾ませて、これまで組んだ予算の帳簿を写したものを僕にくれた。それから、最低限必要とされる予算額や、金で買わなければ手に入らない薬草とその相場、どういう気候の年に何の薬草が安く手に入るか、そういうことを細かく教えてくださった。
頭の中で、ぼんやりと分かった気になっていたことが、きれいにまとまっていくのが分かった。
日が暮れた頃、伊作先輩は「ざっとこんなもんかな」と冗談めかして説明を終え、小さく息を吐いた。

「あとは僕ら六年がいる、最後の予算会議を見て覚えるといいよ。実際やってみてわかることもあるし」

でも、数馬なら大丈夫だと思うよ。
みょうじ先輩と同じことを、伊作先輩はおっしゃった。
根拠のあるなしに関わらず、先輩からの「大丈夫」という言葉が力になるのはなぜだろう。

いつか、自分が誰かにとってのそういう存在になりたい。

そういう願いを抱えながら、僕は三年生としての一年間を過ごした。



六年生の先輩方は、早い人だと二月には学園を出て行く。
卒業式を大々的にやることはなく、それぞれがそれぞれのやり方の「卒業」をしていく。言葉を残していく人、いかない人、最後にみんなでご飯を食べる委員会、酒を酌み交わして気持ち良く別れていく委員会。

そうやって次々に六年生がいなくなる中、伊作先輩は三月の最後の日まで学園にいた。そして最後の日まで、普通に医務室にいて、普通にみんなの手当てをしていた。
伊作先輩が去る最後の日は、保健委員会の全員が医務室に揃っていた。みんな、伊作先輩と最後の時間を過ごすために、示し合わせたみたいに医務室に顔を揃えたのだ。

その一日の終わり、夜が更けた頃。一年生は寝てしまって、二年生の川西左近も船を漕いでいて、目をしっかり開いているのは伊作先輩と僕だけだった。

「数馬はさ」

行灯の小さな灯りの中で、伊作先輩は小さく口を開いた。

「迷いながらでも、間違わない方向へ進んでいける類の強さがあると思うんだ」
「強さ、ですか?」
「うん、僕には無い強さだ」

伊作先輩は力強く頷いた。

「だから大丈夫だ、絶対に」

握り拳を作って、歯を見せて笑った伊作先輩はさて、と呟きながら早々と腰を上げた。
どうやら、もう出発してしまうらしい。

「先輩、もし先輩が怪我をされたら、ここに来てください」

僕らは先輩が何者になったって、保健委員会の後輩として先輩を迎える。だから、先輩。何も気にせず、僕らに会いに来てください。

「うん、ありがとう」

伊作先輩が、嬉しそうに無邪気な笑みをこぼしたのを見て、なんだか僕は心底ほっとした。この人も、きっと大丈夫だと思った。
学園を出ても、伊作先輩は大丈夫だ。

みんなにもよろしく伝えておいて、と言い残し、伊作先輩は学園を去った。
これは僕の憶測でしかないけど、伊作先輩は時間の許す限り、この学園の保健委員でありたかったのだと思う。だからこういう去り方をしたんじゃないか、なんて勝手に思っている。

みょうじ先輩と最後にお会いしたのは三月の始め頃のことだった。何かの縁なのか、昼休みの校庭でたまたまでくわしたのだ。
みょうじ先輩はいつ学園を発つのですか、と問えば、飄々とした顔で「さてね」とはぐらかされてしまったことも、鮮明に覚えている。

「みょうじ先輩は、卒業後はどうされるのですか?」
「みんなと似たようなものだよ。情報のために何でもやる。色々やる」
「そう、ですか……」

みょうじ先輩は、首を後ろにぐんと逸らしながら天を仰ぎ、雲を吸い込んでしまうみたいに深く息を吸った。

「ね、三反田くん。私の案採用してくれる?」
「案?」
「いつか話したでしょ、予算会議のやつ」
「あはは、あれですか? そうですね、最終手段として考えておきます」
「もし使うことがあったらさ、結果教えてよね。また私が学園に来た時にでもさ」
「はい、約束です」
「よし」

みょうじ先輩は、初めて会った時と同じように僕の頭をポン、と一つ叩いて、やっぱり子どもみたいな顔で「じゃあね!」と笑って走って行ってしまった。

こうして約束を作ることが、少しでも先輩の力になれば良い。
いつかまたみょうじ先輩に会いたいという気持ちと、またみょうじ先輩と会うための口実が出来たことが嬉しいという気持ちと、みょうじ先輩のまっすぐな背中を見送る、少し苦しい気持ち。
自分で思っていたより、僕はあの人のことが好きだったのかもしれないけれど、それがどういう種類の感情なのか今は分からずにいる。

そうして先輩方がいなくなってから、初めての予算会議。
相変わらず、毎度お馴染みめちゃくちゃの揉みくちゃなものだった。
でも、保健委員会は若干の怪我人を出しながらそれでも予算をもぎ取れた。

伊作先輩、僕は先輩のおかげで必要な予算を少しも間違えずに組むことが出来ました。
いつか教えて頂いたことの一つひとつをなぞることで、僕は保健委員会を守ることが出来ました。
いつか、この事の顛末を話せる日が来るのを心待ちにしています。

みょうじ先輩、お元気でしょうか。
僕は相変わらず影も薄いし不運には磨きがかかったし、色んな意味で伊作先輩に近づいています。
でも、驚くことにみょうじ先輩の冗談みたいな策が当たり、僕は田村三木ヱ門会計委員会委員長代理から予算をもぎ取ることが出来ました。
お約束通り、僕は必ずあなたにこの事を話したいと、強く思っています。

どこにいるのかも分からない先輩方に伝えたいこと、話したいことが、僕にはたくさんある。
四年生に上がってからは実技も格段に増えて、怪我も増えたけれど、僕は今日も、誰かに伝えたい言葉を携えながら生きている。

きっといつか、また出会える人たちへの言葉を絶やさず紡ぎ続けることが、誰かの救いになることを、ずっと祈り続けている。