クリスマスイブということで街はイルミネーションで彩られケーキの店頭販売がされ、おもちゃ屋さんの紙袋を提げたおじさんや人待ち顔のお姉さんに、はしゃぎ回る子供たちと、たくさんの人で溢れていた。
シンオウはだいたい毎年クリスマスの時期は雪が降る。ホワイトクリスマスだなんて世間ははしゃぐけど、私はとりあえずこのシンオウのどこかを旅しているであろう友人が心配である。冬のシンオウの雪は尋常じゃない。場所によるけどアホみたいに降るわ積もるわで、修行のために旅をしているトレーナーたちはそりゃもう大変だ。慣れていない人は立ち往生、下手すりゃ命の危険もある。
コウヘイくんは大丈夫だろうか。お隣さんということで長い間友人をやっているが、彼が旅に出てから心配で仕方ない。なぜって、コウヘイくんヒョロいし。ヒョロいしメガネのオタクだし体力ないし変態だし。たまにお土産を提げて帰ってきては私を訪ねてくれるけれど、すぐに旅立ってしまう。頼りないけれど、本物のポケモン馬鹿でバトル馬鹿なのだ。

友達たちとのクリスマスパーティを終えて帰宅して、自室のベッドに腰掛けぼんやりとどこかを旅するコウヘイくんのことを考えていた時だった。窓のほうからコンコン、という音が聞こえた。目をやるとそこにはサンタクロース。まぁ素敵。そうそうクリスマスイブだしね?サンタクロースくらい来るよね、私いい子にしてたし。

「いやいやいや違う、なんでデリバードが私の家に」

そう、デリバードだ。なぜかはわからないけれど、デリバードが私の部屋の窓をくちばしでつついている。とりあえず窓を開けてみる。冷たい風が入ってきて思わず身震い。

「…て、あれ?」
「どーもなまえさん、お久しぶりです」

窓の外を見下ろすと、コウヘイくんがいつもの怪しげな笑い方で、家の前に立っていた。ていうか何故いる。帰ってくるなんて連絡、コウヘイくんちのおばさんから聞いてないのに。慌てて上着を羽織り外にいるコウヘイくんの元へ駆け寄った。彼の横にはさっきのデリバードがちょこんと座っている。

「なんでいるの!?」
「いえ、本当は寒中見舞いだけでも送ろうかとも思ったんですけどねぇ、なんとなく、帰ってこようかなと」
「な、なんとなくって…あ、あのデリバードは?コウヘイくんのポケモン?」
「ええ、新しい仲間なんですけどこれがなかなかバトルの戦法を考えるのが難しくて、それがまた楽しいんですけど」
「待って待って、長くなりそうだからちょっと待って!おばさんには?連絡してないでしょ?コウヘイくん帰ってきたこと知らないんじゃないの?」
「ええ、まぁ。なんとなく、でしたから。それに」
「それに?」
「一番にあなたに会いたかったので」

コウヘイくんは基本いつも怪しげな上に気持ち悪い笑い方をするけど、たまに、本当に稀に綺麗に笑う。今の言葉に添えられた笑顔はそれだった。かっこいいのだ、コウヘイくんのくせに。コウヘイくん相手に赤面なんてしたくないのに顔が熱くて仕方ない。マフラーもしてくれば良かった、そうすれば顔を隠せたのに。

「まぁクリスマスに予定がなくてどこ行ってもリア充だらけなのが耐えられなかった、というのが本音ですが」

台無しだ馬鹿野郎。