ここ最近、孫のなまえがあまり訪ねて来なくなっていた。歳を考えれば幼い頃より時間が取れないのは至極当然のことなのだが、妙に、侘しいような心持ちになる。
春は桜の花びらを集めて見せて、夏はここは涼しいからとジムのすみでずっとバトルを見ていた。秋は学校の運動会について話しに来て、冬も雪の中を、嬉しそうに駆けてきた。今はもう昔のことだ。
これもまた、あの子の歳を考えれば、そんなことをするような歳ではないとすぐに分かる。成長を喜ぶ反面、やはり年寄りは侘しいのだ。
一番最近私に会いにきたのは、確か半年ほど前、いやそれ以上だったか。ジョウトではない別の地方へ行ってくると聞いた。気を付けろ、風邪を引くな、と同じようなことを何度も言った。もう子供じゃないんだから、となまえは笑った。そうか、と私もあの場では笑い返したものの、子供じゃないんだからという言葉を、その後何度も反芻した。私から見ればなまえはまだまだ子供なのだけど、それでも世間からすれば確かにもう子供という歳ではない。
このまま嫁に行ってしまうようなことがないとは言えない。花びらでも運動会の楽しい話でもない、横に男を連れて来る私の孫。そんな想像を、頻繁にしてしまうのだ。
「ヤナギさん、お客様です」
休憩中の折、ジムトレーナーの一人が私を呼びにくる。客、というのは挑戦者とは違うだろう。
「誰だ?」
「ヤナギさんの喜ぶ方ですよ…さ、入って」
手招きされてドアから入ってきたのは、見紛うことなどない、なまえであった。半年前よりもどこか垢抜けて、すっかり母親に似てきている。横には男ではなく、一体のポケモンを携えていた。この地方では見慣れない、枝のような角の生えたその生物。
ジムトレーナーはなまえにごゆっくり、とだけ声をかけて去っていく。
「久しぶり、おじいちゃん。このこね、メブキジカっていって、イッシュ地方の子なの。季節によって姿が変わるんだ、本当だよ?だからね、」
また夏に来るからね!