「落ち着けよ、赤也!!」
「だってこいつが!!」
「だから、私は誘拐犯じゃな」
「もしかしてこれって、俗に言うトリップってやつか?」
私たちはみんな一斉に銀髪さんの方を向いた。
03.現実世界
「トリップ?」
ブン太くんが首をかしげて、銀髪さんに聞く。
「トリップって、英語で『旅行』って意味の言葉ですよね?」
切原くんも首をかしげる。
「よく知っとるのう、赤也。」
「バカにしないでくださいよ!!これくらい知ってます!」
てゆうか、切原くんは私の襟元から手を放してくれないのかな…
ほんと、苦しいんだけど。
「で、旅行ってどういうことだよぃ?」
ブン太くんの言葉に銀髪さんは軽く笑う。
「旅行は旅行でも、戻れるか怪しいが。」
銀髪さんの言葉を聞きながら、私はさすがにもう限界まできていた。
あ、もうダメ
「く、苦しい…ですっ……」
すると、それに気付いた切原くんが「あ」と、私から手を放した。
「ゲホッゲホ……」
あー、死ぬかと思った。
「………」
それでも切原くんは謝ってくるどころか、私を睨み付けてきた。
「大丈夫か?」
ブン太くんはすぐに駆け付けてきてくれて、床に手をついてる私の目線にしゃがみこむ。
「っはい……」
本当は全然大丈夫じゃないし、切原くんに「ふざけんな」と言いたいところだったが、もうそんな元気なんてない。
とりあえず、駆け付けてきてくれたブン太くんは優しい人なのだと理解できた。
「で、トリップってどういうことっすか?」
切原くんは、私のことなどお構いなしに銀髪さんに聞いた。
銀髪さんは、チラッと私を見て話を続ける。
「つまり、この携帯に書いてあることが本当なら、俺たちは漫画の世界からこの世界にやってきたってことぜよ。」
「そんな携帯に書いてあることなんて、嘘に決まってるじゃないっすか!」
「………。」
銀髪さんは私のところに歩いてきた。
な、なに?
「お前さん、テニスの王子様って漫画を知ってるって言っとったのう?」
「…知ってるといっても、存在を聞いたことがあるだけで、内容は知らないです。」
「本屋さんにあるのは確実なのか?」
確実かって聞かれると、ちょっと自信はないけど
売り切れでない限り売ってるはずだから、たぶん
「あります。」
私はそう頷いた。
- 15 -
前 | 次