涙雨フラジール
あー今日も疲れた……
真田副部長はいつも通りのスパルタだったし。
いや、地区大会が近いからいつも以上だったな。
今日は早く帰って寝よう。
じゃなきゃ、地区大会までに体が保たねぇ。
そして、俺は着替えるために部室のドアを開けた。
すでに先輩たちは着替えてて、暑苦しい。
「おー、赤也おせーぞ!」
そう言って、ブン太先輩はガムを膨らませた。
「仕方ないじゃないっすかぁ…」
後輩である俺が練習後の片付けしてたんですから。
「そういえばブン太、お前さん今日告白されとったのう。」
仁王先輩が思い出したように口を開いた。
って、告白?
「!」
ブン太先輩がびっくりして固まってる。
「そうなのか?」
ジャッカル先輩も初耳らしい。
「なかなか可愛い子だったが……」
「……断った。」
仁王先輩の話を遮って、ブン太先輩は一言だけ呟いた。
断ったって、『フった』ってことだよな?
「えー!付き合わなかったんですか!?」
仁王先輩が可愛いと言うくらいなんだし、もったいないっすよ。
と俺が思ってたら…
「たるんどる!」
と俺の隣りで真田副部長が言ってきた。
げ、隣りにいたのかよ。
「そろそろ地区大会があるというのに、色恋にうつつを抜かすとは何事かー!」
「お、俺は何にもしてないっすよ!」
「いいか、俺たちは無敗で……」
「わかってますって!」
真田副部長は最後に「けしからん」と呟いて、いち早く部室から出て行った。
……何で俺が怒られなきゃいけなかったんだ?
「仁王、真田の前で余計なこと言うなよ!」
ブン太先輩がそう言って仁王先輩を睨む。
「プリッ」
「でも、どうして断ったんだ?真田の言う通り、地区大会があるからか?」
ジャッカル先輩がシャツを羽織りながら言った。
「まぁ…それもあるけどよ、何か俺のタイプじゃなかったんだよなぁ。」
タイプ?
あれ、この前タイプは『物をくれる子』だって言ってませんでしたっけ?
「その人は、物とかくれなさそうな人だったんですか?」
「はぁ?なんだそれ。」
「だって、前はそうだって…」
「そう言うお前はどうなんだよ、赤也。」
「え!俺は……」
「彼女の一人くらいいねーのかよ?」
何で俺に聞いてくるんだよー!
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