「俺はどうしてシズちゃんを殺したいんだろうか」
「したい、と望むのだからそこには相応に利益があるわけで」
「そう、シズちゃんがこの世から、俺の目の前から消えることで得られるもの」
「俺はそれが喉から手が出るくらい欲しいんだ」
「ねぇシズちゃん」
「シズちゃんは?」
「俺がこの世から消えたら」
「どんな利益が君を待ってるのかな?」
細い指先が静雄の唇をなぞり、臨也の切れた口の端がゆっくりと上がった。
お、
し、
え、
て、
よと、その唇が形作るのをひとつひとつ、静雄は見逃さなかった。
「だってシズちゃん」
「シズちゃんがその望みを叶えたらさ」
「俺はいないわけだから」
「必然的にそれを知ることは出来なくなるよね?」
「魂とか霊とか、まあそんなアブノーマルは置いといて」
「俺はさ、」
「シズちゃんの前から居なくなるわけだから」
「ねぇシズちゃん」
お、
し、
え、
て、
よ、
し、
ず、
ち、
ゃ、
ん
数え終わってから振りかぶった標識を力任せに叩きつける、が臨也はとうに静雄から離れてしまっていた。
あはははっと響く声がビルの間をつうと通り大通りに逃れてゆく。
「ばいばい」
「シズちゃん」
「またね」
嘘、
「もう二度と会いたくないよ」
ば、
い、
ば、
い、
し、
ず、
ち、
ゃ、
ん、
闇に反射するネオンの光が眩しくて思わず、瞬きした。
聞いて欲しかった
(何をかって?そんなの俺に聞かないでよ)
(恋焦がれ提出作品)