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周囲が呪霊認定してくるけど俺は立派な人間です2

「やっだ〜〜〜〜!!絶対やだ!俺行かないから!!死にたくないもん!!!」
「善…赤子のように泣き喚くのをやめろ!煩わしい」
「自信過剰なじいちゃんに教えてあげるね!今のじいちゃんはどんなに頑張っても、最強が最強であることを強調するための噛ませ犬ポジにしかならないってことをよォ!!」
「な、なんだとーーーーーッ!!表出ろ表ェ!!」
「すでに表だァァァ!!」

 善は漏瑚の拳骨を食らいながらも地べたに大の字で寝転んでジタバタして全力で抵抗した。こうすると捕まえにくくなるのである。しかし、そんなものは漏瑚に通用するはずもなく、善は重めの拳骨をもらった。暴言の数だけもらった。全てクリティカルヒットだった。しかし、クリティカルヒットが直撃しても倒れる善ではない。読書中の真人にしがみついて全力で盾にした。

「やだ!!なんでじいちゃんはわかってくれないの!俺弱いんだってェ!弱いんだって!!」
「そんなこと、わかっとるわ!というか、誰がじいちゃんだ。儂はお前の爺になった覚えはないぞ」
「ジジイにじいちゃんって言って何が悪いんだよォ〜!!じゃあ、いいよ。これからはジジイって呼ぶから」

 善はなんとか話を逸らして漏瑚との会話を引き延ばそうとした。だって死にたくないのである。漏瑚の実力は知っているが、それでもあの夏油が「殺すのは無理だから封印しよ!」というレベルなのだ。どうして自分から死亡フラグにタックルするのだ。善は弱いので漏瑚の思考回路が理解できなかった。一方、漏瑚は漏瑚で善の思考回路が理解できなかった。確かにこいつの攻撃力は宿儺の指を取り込んだはずなのに4級から3級にしかレベルアップしなかった。しかし、それはあくまで攻撃力の話。奴の真髄は防御力にあるのだ。善の話だとあの宿儺の攻撃を無傷で防げたそうだから、善がいれば五条悟を殺せなくても死ぬことは決してないというのに。

((分からず屋め…))

 奇しくも二人の心はシンクロした。
 しかし、いい加減二人のやり取りを煩わしくなってきたのは外野である。真人はずっと同じページを読んで真顔になっていたし、今まで座り込んで空を眺めていた花御は二人をガン見していた。陀艮は相変わらずプカプカ浮いていた。真人が爆発するのは時間の問題だな。この中で精神年齢が一番高い花御は無駄のない動作で立ちあがって陀艮に「二人の頭を冷やしてあげなさい」とアドバイスした。

「ぶふーーーっ」
「…。」
「…。」

 こくんと頷いた陀艮は物理的に二人の頭を冷やした。しょっぱかった。


「わかったよ。俺、一緒に行くよ。じいちゃんより心が大人だからね」
「…!!!」

 このクソガキ、めっちゃムカつく…!!
 漏瑚はとてもイラっと来たが、自分の方が大人なので、何も言わなかった。自分の方が大人なので。しかし、善は「でも、代わりにお願いがあるんだ」ともじもじしながら漏瑚を見ている。漏瑚は大きなため息を5回ほどついてから、善の話を聞いてあげた。

「死地に行くなら、巨乳美少女にエール送ってもらわないと死にきれない」
「だから、死なないと何度言ったらわかるんだ、お前は!!」

 それは善の最後の悪あがきだった。おめーらプライドエベレストだからできね〜だろ〜!と思ってのことだった。漏瑚は怒りの沸点が低いので、2回目は耐えられなかった。仕方がないので、読書をしている真人を召喚する。真人は「気持ち悪いね!」と爽やかに言い放ったが、それでも善好みの巨乳な美少女に変身してあげた。多分、この五月蠅い二人にどっか行ってもらいたかったのだと思う。漏瑚は当分、真人に足を向けて眠れないなと思った。

「おい、真人。巨乳美少女が好きなことのどこが気持ち悪いんだ」
「善こそ、魂の容れ物に過ぎない形に拘るなんて変わっているなあ」
「は?巨乳美少女は男のロマンだぞ。というか巨乳好きはノーマルですから。日本書紀、読んだことねえの?この土地に代々住んできた人々の性癖はみんなねじ曲がってるんだ(善調べ)」
「主語が大きいよ、善」
「で、でも!巨乳は男のロマンだって宿儺様だって言ってた(大嘘)」
「えええ。宿儺は善よりまともな感性してると思ってたのに」
「どういう意味ですか?泣いていいですか?」

 あまりにもくだらなすぎるので、善が熱く語っている間に(というか真人が善の相手をしている隙に)漏瑚は善を紐で自分の背中に括り付けた。そして語り終わったタイミングで、よいしょと背負う。

「やだああ!五条悟に顔見られたくない!」
「ほら、これでも被ってな」
「あうっ何故ひょっとこ」
「騒がしくてすまなかったな」

 叫び出す前に真人は善にひょっとこの面を被せた。ナイスファインプレー。漏瑚はペコリと頭を下げる。真人は片手をあげて、再び読書に戻った。


「うわっ!俺、俺様系イケメンって無理」
「急に仰け反るでないわ!」
「えっと…呪霊って育児をするんだね?」

 五条は目の前の光景が謎すぎて笑いをこらえるのが大変だった。火山頭が自分より体のデカいひょっとこをおぶっている。ご丁寧におんぶ紐までつけて。五条的には相手が未登録の特級という事実よりもそっちの方が重要だった。なんだ、これ。ウケる。

「あああああ!もうマジ無理死んじゃう。じいちゃん、チビッたら許してね…」
「やめんか!今日一番、ぞわっとした!!ええい、儂はこの男に用があるから貴様はしばらく黙っとれ!!」
「どうせ、抱き着くなら包容力のあるお姉さんがよかった」

 それっきり、ひょっとこは何も話さなくなった。話さなくなると、急に静かになる。火山頭は何事もなかったように戦闘を開始した。
 
(ふうん。なるほどね)

 五条は火山頭がわざわざひょっとこを背負ってきた理由を察して、にやりと笑った。ひょっとこは攻撃をしてこないが、それでもとても弱いことはすぐに分かった。どんなに甘く見積もっても3級程。しかし、なぜか攻撃は通らない。おそらく、攻撃という選択を自ら排除することで、己の攻撃すら通らない鉄壁の防御を得たのだろうと五条は思った。


「面白いねえ、久々に楽しめそうだよ」

 五条は楽しくなっていた。鉄壁の防御が絶対の防御に昇華されれば、もっと面白くなるのに、と。


「も、もう無理…。無理だよ、漏瑚さん…次はもう、耐えられないよ」
 
 背筋が凍るようなプレッシャーのぶつかり合い。間近で見た命の削り合い。死を怖がり続け、死を回避するためなら喜んで恥をさらす善だ。善の精神的疲労は蓄積され続け、限界に達しようとしていた。それを察して漏瑚は黙ってポンと頭をなでてやる。

「高性能な代わりに燃費が悪いみたいだね、その子」

 漏瑚は五条の強さを身に染みていた。先程の攻撃も、奴は本気ではなかった。それでもあのスピード。あの重さ。おまけにこちらが息を切らしている間に宿儺の器まで連れてきていた。そこまでにしておけよ、チート野郎。漏瑚は覚悟を決めた。

「安心しろ、善。まだ勝てぬと決まったわけではない」
「いや、逃げよ。超逃げよ」

 善がよくするように漏瑚は都合の悪いことはスルーすることにした。だから、善がここまで踏ん張ったのだ!回復に割かなくて済んだ呪力も残っている。儂も頑張るぞー!!と漏瑚は呪力を練りこんだ。

「おい、人の話は聞いておけよ!おい、ジジイと心中は勘弁して!!」

 善は全力で絶叫した。


「だから、言ったでしょ!!どう考えても自分から死亡フラグにタックルしてるって言ったでしょ!!花御さんが来なかったらどうするつもりだったの!?ちなみに俺はじいちゃんを身代わりにして逃げまっす!!」
「貴様ーーーーーー!!儂をボールの代わりにするな!!ドリブルするな!!」
「真人くん!ヘイパス!!」
「夏油くん!」

 日頃のストレスも漏瑚で遊ぼ(※意訳:お前ボールな)したお陰で、善のストレスは一時的に解消された。夏油や真人だけでなく、あの花御も参加してたのだから、意識高い系呪霊のノリは同じ呪霊同士でもついていくのが大変だったのかもしれない。

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