ひとしきり涙を流し終えたらやけにスッキリした。
今まで緑色のアイツのせいで抱えたやっかいな気持ちは完全になくなったわけじゃあない。
まだ恨んでいるところもある。
それでも、こんな小さな女の子に存在を認めてもらえるだけで心が軽くなるなんて予想以上だ。
何も言わず、背中に手をまわしていたナマエの胸から顔をあげる。


「すまない・・・」


「いいよ」


妙に気恥ずかしくって居心地が悪い僕のことをナマエはいつもの笑顔で見守っている。
少し彼女から離れる。


「首も、その、服も」


「あ」


見下ろせば涙のせいでナマエのブラウスはちょうど胸のあたりだけが透けてしまっていた。
もちろん下着もうっすら見える。
ピンクだ。


「びちゃびちゃだね〜」


笑いながら少しだけ困った様子だ。
洗濯して、乾燥機かけて、彼女の門限にまにあうだろうか。
時計をみてみればかなり長い間、僕は泣いていたようだった。


「ギリギリ間に合うと思う。脱いで」


「あ・・・・・・う、うん」


ナマエに背をむけて適当に服を探す。


「悪いけどおわるまでこれ着ててくれるかな」


見つけた一枚を後ろ手に渡したらおずおずと服が引き抜かれる。
しばらくつづいた衣擦れの音もやんだことを確認して後ろを振り返った。


「じゃあ、これよろしくお願いします・・・・・・」


「う、うん。わかった」


受け取ったブラウスを掴んで急いで部屋をでる。
刺激がつよすぎた。
別にナマエのことは好きでもなんでもないが、この頃の男子というものは多感なもので。
体格に差があるせいで肩がずれおちそうなくらいぶかぶかだ。
庇護欲をあおられると同時に下半身がほんの少しでも反応しそうだった。
自分で選んだ服であるが危なかった。
気が動転しながら掴んでいるブラウスに残った体温に気づいてしまい、一人でどぎまぎする。
さっさと洗濯乾燥機に放り込んでスイッチを押して部屋に戻る。
ナマエへ恋愛感情はわかない。
それでも安心する。
なにより見えない友達のことを認めてくれたこともうれしかった。
ナマエとは恋人っていうより友人でいたいかな。
もときた廊下を通って扉を開ける。


「なにしてるの?」


部屋に戻るとナマエは体育座りをして膝に顔をうずめていた。
僕がかした服で膝をつつむようにしている。
一瞬でも服が伸びそうだと思った。
それよりも縮こまっているナマエが珍妙で思わずそう声をかけたが、ナマエはたいそう驚いていた。


「え!?いつ戻ってきたの?」


「ついさっきだけど。なにしてるの」


「これは、その、花京院くんの匂いがするなぁ〜って」


「・・・嗅いでたの?」


「ごめんなさい」


「別にいいけど・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


変態かと思ったが、ナマエの気持ちを推し量ると全うな行動かもしれないと花京院は思い直す。
向こうはまだ自分に恋心を抱いているのかと考えると申し訳なくなった。


「花京院くんの私服ってあんまりみないから」


たしかに。
付き合いをはじめてからまだ季節をひとつもまたげていない。
平日は学校もあるので制服のままだ。
休日はさすがに私服をきているが、それでも回数は少ないことには変わりないだろう。


「嬉しくなっちゃって」


「へー。そう」


「外あるいてると目立たない?」


「そういうの気にしたことないや」


「え〜絶対視線あつめまくりだよ」


「・・・来週デートする?」


「ひっ!?デート!?!?突然!?」


「行きたいところあるし。勉強会もそれほど必要なくなったと思うんだけど」


「勉強会は必要だけど、是非ご一緒したいです・・・」


てれてれと笑う彼女からは僕への好意がにじみ出ているが、僕の気持ちはやはり動きそうにない。
不憫に思えてしまう。
そうさせているのは自分だというのは棚にあげて、少しでもナマエの気が晴れることをしてやりたいなあ。
変に期待させるようなことはやめるべきだと思う自分と、喜ばせたい自分がせめぎあっていた。
昼食はナマエの好きなものでも聞いてそれを食べよう。
ぼんやりと頭の中で計画をたてながらナマエの制服がかわくのを待った。


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