お願いです!
お願いだって!お願いですから。
なんどこの言葉を繰り返しただろう。
ナマエはベッドの上で横になっているDIOにあるお願いをしている。


「嫌だ」


「そこを何とか」


「なぜナマエに肉の芽を埋めなければならないんだ」


必要なんですよ。
今後の私の行動プランには、DIOに肉の芽を埋め込まれることは必要だった。
ほかにご一行と合流する手段が思いつかなかった。


「それは・・・」


「もう私の言うことを聞く気は失せたか?肉の芽なしじゃ聞かないのか?」


一瞬、子犬のような表情を浮かべてまるで縋られているようだった。
アヴドゥルさんにはあんなにも簡単に肉の芽を仕掛けようとしたように見えたけれど。
どうやら、肉の芽で支配するのはあまり気に入っていないらしい。


「聞きます!聞くよ!」


「それならば、なぜ・・・・・・」


「私がジョースター一行に潜入するために必要なの、お願いします!!」


ええい、言っちゃった。


「ナマエが?」


「うん」


「フン。笑わせるな」


鼻で笑ってナマエをあしらおうとするDIOに困ってしまう。
私なんかが潜入だなんておかしい、と思っているのだろう。


「バレない自信は正直ないです」


「そもそも潜入なんてしなくてもいいだろう」


「DIOが思っている以上に私の行動は今後重要になると思うんですけど」


もうふてくされそうだった。
何をいっても、どんなお願いをしてもDIOが肉の芽を埋めてくれる気配がない。
枕に顔をしずめて足をバタバタしていたらうるさいと足を軽くはたかれた。


「う〜〜〜」


力加減はかなりしてくれているので痛くはないけど、気にくわない。
うまく説明も説得もできない自分の力量のなさに苛立つ。
唸っているとDIOが口を開いた。


「私の肉の芽はおまえが知っているようにスタンド能力を衰えさせる」


後頭部からぽんぽんと頭をなでられる。
視界は近すぎる枕のせいで真っ暗だ。
DIOの表情はわからないが手や声からは穏やかな様子だった。


「私に敵意を抱いている者をてなづける以外には必要ないだろう」


エンヤ婆に肉の芽をしこんだ人が何を言っているんだ。
DIOはこうしてナマエにちょくちょく嘘をつく。
良い人ぶりたいのか。
いろいろわたしが知っていることをDIOはわかっているはずだ。
未来のことを知っているかと尋ねられたとき、おそらく DIOは無言を肯定と捉えている。
DIOにとって都合の良いことも悪いことも知っているナマエに嘘をつかなくてもいいのに。


「わたしのセトル・ダンは戦闘能力なんてないので能力がさがったところでさして意味はないの」


「だが」


「スタンド能力を使って承太郎たちにけしかけるわけではないし、安心して」


言ってから何で安心して、なんて声をかけたのか自分でもわからずナマエは言葉がつまった。
DIOが私の心配をしてるなんて思い上がりも甚だしいよね。
うわ〜なんかDIOにいわれそう。


「・・・」


あれ?無言だ。
スルーされるのも傷つくなあ。
それにしてもまだ肉の芽を埋めてくれる気配はない。
もう私が潜入する予定のことも言っちゃったし、これも言ってしまおう。


「DIO、DIOって死ぬと思う?」


「突然なんなんだ。死ぬわけがない」


「詳しくは言えないけど死んじゃうよ。DIO、灰になって消えちゃうかもよ」


「思いつきでもあまり私を不快にさせるな。ナマエ。今日のおまえは様子がおかしい」


そりゃあそうだ。
何も知らなければそう思うのが普通だ。
急ぎすぎたかもしれない。
予想より早くことが進んでいることに焦っているのだ。
読むのと体感するのとじゃ訳が違う。
準備不足の他になかった。
じっくりと話すとしても、上手いことDIOに伝えられるかどうかは私の頭では難しいだろう。


「・・・・・・っはぁーーーー・・・・・・・・・・・・・・・そうだよね」


でもここで食い下がれない。
吐ききったため息をきるようにDIOに身をのりだす。


「でも、肉の芽はお願いします!!」


願掛けでもするようにDIOの顔の前で両手をぱちんとあわせて祈る。
ナマエは鬱陶しいと言われても埋めてもらうまでは引き下がらないつもりだ。
そんなナマエの考えを見抜いたのか、面倒になったからかはわからない。
無言のまま額に手をそえられた。
大きなDIOの掌では視界までもが遮られる。


「ん?」


どうかしたのかと尋ねるまえに、ナマエは急な倦怠感を感じた。
思考もうまくまとまらず、ぼーっとしている。


「なに・・・これ」


「肉の芽だ」


手が放れてひらいた視界には眉間に皺を寄せたDIO。
なんでそんなに不機嫌なんだろう。
気になるなぁ。
でもうまく考えられないや。


「へえ・・・ありがとう、DIO」


ふんわりとした思考のまま。
まずは、頼みを聞いてくれたので礼をいう。
ふんと鼻で笑われた。
そのままナマエはDIOに頭、頬、のどのあたりをなでられる。
猫じゃないのに、と思うが。
人間でもそのあたりを優しくなでられると心地いいものだ。
ふわりふわりと夢心地のままご機嫌なナマエはつづける。


「あのね、部下の人たちに私のことは気になさらずって伝えておいてね。変に手加減されたら承太郎たちに勘繰られちゃうと思うから。死んじゃったらその時だね〜」


「なっ!?!?」


「ねむいぃー!」


文句を言われそうだと察知したナマエは、DIOの言葉を遮るように大声をあげてDIOにダイブした。
普段のナマエならありえないことだ。
鍛え上げられた腹筋ののかたくもあり、ほんの少しだけある柔らかさを満喫する。
顔をぐりぐりこすりつけるようにすれば薔薇だろうか。なんだろう。
とにかくいつものDIOの良い匂いがする。


「おい!ナマエ!離れろ」


「やだー!きもちい〜いいにおい〜〜」


「肉の芽を埋めてそんな反応は初めてだぞ。ふざけているだろう貴様」


「ふざけてないよー」


とにかく言いたいことを伝えるとあとは思考が散乱して、目先にある心地よさを追求していくことしかできなかった。
ふにゃふにゃとしたしゃべり方しかできない。
そう、ナマエの姿はまるで酔っぱらいのようだった。
DIOの腹筋から離れようとしないナマエをDIOは無理には剥がそうとせず、じゃまそうに手で払う。
名前を呼ばれたような気がしたナマエは返事をするが、眠気に圧されている。
思考を手放す寸前に薔薇の香りがいっそう強くなった気がするがそれを確認する暇もなく眠りにおちた。



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