「最近だれかに見られている気がする」


「…私みてないよ?」


「ナマエが見ているならすぐわかる」


眠りにつく前のはなしの最中だ。
DIOは思い出したようにそう語った。


「おまえはいつまでたっても気配が消せないからな」


「うっ…」


「なに。責めているわけではない」


ナマエには思い当たる節があった。
おそらくジョセフがスタンド能力「ハーミット・パープル」に目覚めたのだ。


「頻繁に感じるからな。さきほど部下に調べさせるようにした」


「うん…それが良いんじゃないかな」


動揺を隠せているだろうか。
彼らの旅が始まるのも間近になってきた。
私のスタンドは今のところ目立った成長はなく、能力は音を消す・痛みを消すしか見つかっていない。
二つの共通性が見いだせず、特訓も既存の能力の強化のみだ。
いまのままでは、DIOを助けられる気がしない。
そもそも、私がDIOを助けるなんておこがましいかもしれない。
でもしばらく暮らしてみて、少し自分勝手だが感情は表情にすぐ出るらしく可愛いところがある。
新しい技術や知識に貪欲なのは彼の蔵書からわかる。
世界を支配することよりも、天国へ行くことに重点を置いている今のDIOは悪の中の悪と呼ぶには邪悪さがたりないように感じる。
ジョースターの血統が今も脈々と引き継がれていると知らなければ、おとなしく天国に行き方をさがすだろう。
少し前に天国云々について意味がわからないと伝えて寝てしまったが、そんなわけない。
わかってはいるし、DIOの口から伝えられたことによって、よりわかりやすかった。
魂のステージをあげることは、真の勝利者、すなわち天国へ行けることに繋がる。
魂のステージをあげる方法は一般的には深い信仰が挙げられるが、DIOはその通りにはしない。
効率が悪いし、なにより信仰心を抱くことができないだろう。
今は悪人の魂を集めている。
野放しにしておけば一般人の脅威となる極悪人の手綱をDIOは握っているのだ。
彼はいつか来ると願ってやまない天国への行く日のために極悪人を駒としておいておくのだ。
勝手に暴れられるより管理下におかれている方がよっぽど良い。
それに、彼らを集めた理由は非道を重ねるためではなく、天国へいくために必要な魂のキープだ。
天国へいくのに彼らの魂が代償になるならば、DIOはためらいなく極悪人たちの魂を渡すだろう。
そして、ナマエはこうも思っている。
DIOは承太郎たちに倒されず未来永劫の命を得たとしても、天国を垣間見ることすらできないと。
言っちゃ悪いが、一人でも殺めたことのある彼が天国にいけるとは思えない。
それなのに凄惨な過去や強い向上心、時折みせる普通の人間のような表情をみているとこのまま彼が殺されるのをおとなしく見ていられない。
ナマエはそう思っている。
それなのに能力が伴わない悔しさがたまらない。


「ねぇDIO」


「なんだ」


「わたしのスタンドどう思う?」


「シンプルさに欠けている上に能力に共通点が未だにわからない。少なくとも戦闘向きではないな」


「痛みを消すのとか。戦ってるとき便利じゃない?」


「私ならともかく、貧弱な人間では意味がない。痛みというのは体からの訴えだ。それを感じとれずに動き続けるのは死につながるぞ」


「そっかー。それなら私が使えても意味ないね」


「それでもナマエ、おまえの能力だ。しっかりしろ」


弱気になるナマエをはげますDIOは数回頭を撫ぜた後そのまま首筋に手をすべらせる。
チリン、と澄んだ音がチョーカーの鈴から響いた。


「うん。そうだね。ありがとう、DIO」


「今日はもう遅い。寝ろ」


昼夜逆転しているこの生活。
もうそろそろ日の出の時間だろうか。
チョーカーをはずしてもらって横になる。


「…おやすみ」


そう言って目を閉じる。
でもなぜだろう。
いつものように寝つける気がしない。
そわそわと身じろぎしているとDIOに気づかれる。


「どうした」


「なんか落ち着かなくって」


「そうか…」


DIOは吸血鬼なのに眠る。
人間みたいに眠いときは寝る。
寝ているところを邪魔されると人間と同じように不機嫌になる。
彼の睡眠の邪魔になってしまっただろうか。
そんなことは少し気にかけるが、ありえないことだ。
今だって不機嫌になっていないどころか穏やかな声色だ。


「それをお前にやった日、ジョースター家について話したがっていたな」


「うん。部下の人でジョースターについて知っている人はいるのかな?って気になったの」


「部下には…いないな。だが、奴には……」


「奴って、友達?」


「まあ、そんなところだ。だが奴も今はまだジョースター家について知らない。いつか知る可能性がある」


「ふーん」


後のプッチ神父のことだろう。
今はまだ神学生だ。
それでも、プッチは神を愛するように君を愛しているとDIOに伝えている。
そんなこと無欲な人間が言うことだろうか。
ちょっと異常なんじゃないの。


「だから今、ジョースターとの因縁を知っているのはナマエ。お前ひとりだけだ」


DIOは天井を仰ぎ見て続ける。


「この身体がジョジョのものだと知っているのも、お前だけだ」


まだなじんでいないのであろう首の傷を自らなぞるDIOは物憂げな表情だ。
こんな顔はじめてみた。


「ジョナサンが死んで、悲しい?」


「まさか」


いつもの顔に戻る。
想像もしてなかったDIOの表情に動揺したが、すぐにいつもの自信で満ちあふれた表情に戻る。
その後も緩やかな時間を過ごした気がする。
私はいつの間にか眠っていた。



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