先ほど店内で騒ぎがおきた。
って言ってもテラス席だったので店内と言ってもいいのか…
とにかくお店で騒ぎが起こったのだ。
大騒ぎをしたのは若い男性の集団だ。
大声をあげていたのは二人だけだが…
黒髪に橙のバンダナが映えるくりんとした瞳の少年と、
穴だらけのとんでもない服を纏っているが知性を宿したような綺麗な瞳の青年だ。


「ありがとうございました」


そんな彼らの会計も済ませた。
気さくにおいしかったなどと言われ嬉しい気持ちを引きずりながら、このレストランに勤めているナマエは彼らのいた席をセットしなおす。
そろそろ上がる時間だ。
ここが終わったら帰ろう。


「あれ?これ…」


地面に転がっているピアスを拾い上げる。
ころんとした、かわいいかわいい苺のピアス。
先ほどの穴だらけの青年のものに違いないと確信する。
穴から覗くネクタイの苺柄が嫌でも記憶に残っていたナマエはすぐにテーブルのセットをおえて店長に挨拶をする。


「あがりますね!おつかれさまでしたー!」


人の良さそうな店長は声にまで性格が反映されているような温かい声でご苦労さんと返してくれる。
それを確認するとそのピアスを握って彼らが行った方向に走り出した。
しばらく足を進めると、まさに今別れたばかりなのだろう。
集団とは別の向きに歩き出した彼を見つけた。


「苺のおにいさーーん!!!!」


「っ!?」


一度走るのを止めて大きな声で呼ぶ。
彼は少し身構えてこちらを振り返った。
苺のお兄さん、そういう自覚あるんだ。
振り返ったのを確認して小走りで近づく。
さっきまで走って息がきれてしまった。
待ってくれている青年に近づいて息を直す。


「僕のことですか?」


「そうそう」


はぁーっと大きく深呼吸する。
うん、大分もとにもどってきた。


「はい。コレ、落とさなかった?」


そういって広げた手のひらの中。
落とさないように気を付けながら見えやすいように少し傾ける。


「確かに僕のだ」


彼は自分の片耳にピアスがないことを自ら触って確かめる。
色素の薄い髪が彼の動きにあわせて動く。


「ありがとうございます」


「いえいえ、そんなお礼いわれるほどのことじゃあないですよ」


私の手のひらから持ち主のもとに戻ったピアスはズボンのポケットにしまいこまれてしまった。
ここでつけるのも危ないもんね。
彼の片耳で揺れていたピアスも外されて、同じようにズボンの中。


「あなた、たしかレストランの」


「そうです。覚えててくれたんですね」


「ええ。ご迷惑をおかけしてすみません。あのド低能が…」


「へ?」


綺麗な顔から飛び出たきっつい言葉に思わず表情が固まる。


「あ、気にしないでください」


微笑む表情は爽やかそのものだ。
さっきのは聞き間違いかな?


「そうだ。これから時間ありますか?お茶しましょうよ」


「あら。良いの?」


「ええ、もちろんです。素敵なお店があるんですよ」


恰好に目を瞑ればかなり好い男だ。
そんな彼に声をかけられてまんざらでもない。
少しお茶しているだけで目の保養になりそうだ。
仕事で疲れている体で走った苦労を考えてもお釣りがくる。
彼のエスコートに身を任せながら彼にどんなことを聞こうかと胸をふくらましていた。








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