夜。
「リゾットさーん」
控えめなノック音の後に縋るようなナマエの声が聞こえてくる。
仕事着から着替えようとしていた手をとめ、入ってくるよう扉越しに促したらおずおずと開けた扉の隙間から華奢な体がすべりこんできた。
何かあったのだろうか。
今日は仕事で朝から出かけていた。
といっても次のターゲットの情報収集だ。
時間ばかりくって肉体的な疲労はあまりない。
帰宅したのは日が暮れてから。
今日の監視役のメローネからは買い物に行ったと報告があった。
メローネにちょっかいでもかけられたか。
「どうかしたか」
もじもじ困った表情を浮かべるナマエに問いかけると予想外の答えがかえってくる。
「あの…セックスしてください!!」
「……」
閉口するしかなかない。
「あの、昨日する必要はないって言いましたよね?だから必要ないだけでしてもいいでしょ?お願いでふ、ふんむっ!?」
しかし、沈黙を許さないとでもいうようにナマエがたたみかけてくる。
聞いているだけで頭が痛くなりそうだったので思わず手で口を塞いでしまった。
ぱちくりと両目を瞬かせるナマエに何て言おうか考えよう。
「ん!……ちゅっ」
「っ!?」
考えようとした矢先だ。
手元に暖かいなにかがあたったあとぬるりと這う感触に襲われる。
口を抑えていた手を離した。
手元を確認すれば、舐められた跡が控えめに光る。
「おい…」
何を言えばいいのか戸惑っていると寝巻きがわりだろうか。
ナマエはシンプルなワンピースをゆっくりと自らたくしあげる。
「リゾットさん、私の見た目は嫌いじゃないでしょ?」
上下揃ったかわいらしいレースのあしらわれた下着が露わになる。
派手ではないが、清純な印象を受ける。
好ましい。
ワンピースの裾はくしゃくしゃになって普通より少し小さい胸の上で握り締められている。
たしかにナマエの言うとおり、彼女の容姿は嫌いではない。
問題はこれをメンバーにどう説明するかだ。
「だめですか…?」
「ああ」
もし、もしだ。
セックスするとしても、メンバーにナマエの扱いを改めて説明してからだ。
そうだ。
何事にも順序というものがある。
ここまで身体をさらけ出したナマエには悪いが今回は…
「なら、チョコ先生に会って来ます」
「なんだって?」
「いま!私と!セックスしてくれないなら!明日の朝一でチョコ先生のとこいってきます!!」
なんだって?
頭の中でも復唱してしまう。
なんだって?
「待て、しよう」
「セックス?」
「ああ、する」
女一人のせいでチームが潰されてたまるか。
反旗を翻すまでは死ぬわけにはいかない。
死んでも死にきれない。
正直、彼女がこんな脅しを使ってくるなんて驚いた。
まがりなりにもギャングに飼われていただけあるな。
肝が据わっている。
メンバーへは彼女の境遇と、扱いについて説明しなおさなければ。
やったーと笑う彼女は両手をあげて喜んでいる。
皺の残ったワンピースが彼女の体を再び隠した。
まがりなりにも任務で預かっている女だ。
女っていうには少し容姿も言動も幼いが…・
ナマエを乱暴に扱うのはご法度だろう。
軽いからだを抱え上げてベッドに降ろす。
高い高い!とナマエが喜んだのもつかの間、ぐっと首元にだきつかれた。
「リゾットさん…」
何もしていないのに熱を孕んだような声で耳元に囁かれた。
仕事で女を抱かなきゃいけないなんて、久しぶりだ。
少なくともこのチームに配属されて以来はない。
その頃を思い出しながら努めて丁寧に扱おう。
何度かそのままキスしてやればナマエは機嫌よくふふふと笑う。
そのまま舌を差し入れようとしたらトントンと胸をたたかれた。
「どうした?」
「だめなの、ちゅーはだめなの。ね、だからこっち」
手首を細い指で握られ、胸へと誘われる。
「ああ、わかった」
メンバーへの説明に付け加えなければ。
軽いキスはいいが、それ以上は禁止だ。
揉み解くように刺激を与えていると、ナマエは動きの隙をぬつてワンピースをするりと脱いでしまった。
性急な彼女の行動に少し驚いたリゾットだが表情には出さない。
黒く反転している瞳でその様子を眺める。
その間も手の動きは休めない。
脱ぎきったタイミングでブラのホックを片手で外す。
そのまま背中をすーっと指でなぞればぴくっと反応した腰がリゾットの下肢に一瞬ふれてすぐにベッドに戻っていった。
はぁっと色っぽいため息をついたナマエはそのまま白いシーツの上に黒髪を散らす。
綺麗に流れていた黒髪も、むきだしになった乳房の下のあたりに舌をはわせれば少し乱れる。
「…っは、……はぁ…ぁ……」
わざとらしくない、けれども本当に気持ちよさそうな息がナマエから漏れる。
横目でちらりと見たらピンとたった胸の飾りが主張している。
それを指ではさんでこすり付けるよう動かせば、その都度ナマエの腰がはねあがる。
「ひっ…ん、ぁっ……だめ、あ…」
「おまえがここがいいって言ったんだろう」
「そっ、う…いいからぁ…」
「気持ちいいか」
「うんっ…はぁぁ、あ…いいから、もっとぉ」
ほんの少ししかいじっていないが、浮かれたようにユラユラと動くナマエの腰。
その動きは素直に感じているナマエに煽られるように張りつめたそこへこすりつけられてるようだ。
体を離し、ついでに自分の服を脱ぎ去ってしまう。
金属だらけの服が床に落ちるたびに小さい音をたてた。
「濡れているな」
予想通りというか。
ナマエのショーツに手を這わせれば彼女の興奮がはかりしれる。
ずらして指を一本さしいれてやる。
「っあ!……はっ、んぁ…」
すでにどろどろにぬかるんだように纏わりつく。
「んん〜っ…はあ…ぁっ…んあ」
中をひっかくように動かせば、それに合わせて粘液が控えめな音をたてる。
これなら二本目もいいだろうと判断したその時。
「あっ…も、いいから、はやく…」
「だが…」
自分で言うのも気が引けるがサイズは普通より大きいと分類される。
まだ十分にならしていないのに挿入しては傷つけてしまうかもしれない。
「はやくぅ…」
「もう少し」
「っ!…ああ……んぁ、あ…」
そう言って二本目も暖かい膣内に滑り込ませる。
動きにあわせてきゅうきゅうしめつけてくる。
「やだぁ、あっ…あ…はぁ……」
「お前を傷つけるわけにはいかないからな」
ザラリとしている箇所を見つけそこを押し込むようにしていく。
「あああっ!?あっ、だ、めぇ…っああ、そこ」
「ここか」
今まで以上にびくりと反応したそこをリズミカルに圧力をかけてやれば嫌々と首を振る。
「いやっ、あっ…だめ、あ、イッちゃぁあ、あ、うのっ!だめ…ねえっ、てば、ぁっ」
「イっていいぞ」
締め付けだけじゃなくて中もびくびくと震え始めた。
そろそろ限界なんだろう。
完全に浮いてしまったナマエの腰が指の動きに合わせて小刻みに揺れる。
「やっ…やだぁ、あっ、はやくっ…んっ、あ、指じゃっ、ああっ…やあっ、だっ…あっ、あ、はやくぅっううっぶちこんでぇっ…………あっ‥あぁああぁぁあっ!」
幼い容姿からくりだされる俗っぽい言葉は腰にきた。
ふやけそうな指を引き抜いて、ナマエの太ももを掴んで開かせる。
先端が触れるだけで愛液を垂らす唇が小さく震えているのが伝わる。
勢いよく腰を落とし込んだ瞬間ナマエの体がビクビクと痙攣した。
「くっ…きついな」
「すごいぃっ…んっ…あはぁ、あっ……」
ナカが蠢きながらの歓迎に少し気分が良い。
まだ息を荒げたままのナマエを撫でて彼女が落ち着くのを待つ。
「はっ…はあ…っ……はぁ。大丈夫だから、動いて」
「あ、ああ」
言葉に従って腰を動かせば嬉しそうにナマエは嬌声をあげる。
「ああぁ、いいよぉっ、あっ、ああ、、リゾットさんのぉっ!!あっ、すごいぃっ、んんっ、あ、良いよぉ!」
「はぁ…そうか、っ…んっ」
ひっきりなしにあふれ出る蜜のせいで少し腰を揺らしただけでぐちゃぐちゃ鳴る。
柔らかい肉壁が絶えず細かく痙攣してるようで、腰を引けばぎちぎちと締めてくるのに挿れるときは奥まで受け入れる。
中の具合はかなり良好だ。
あまりの気持ちよさに思考がグラリと揺るぎそうだ。
「あっ、あぁ、ん?…・…あ゛あぁあっ、っひいぁ!いっ、ふか、いぃ!!んんっ」
開かれた足を肩に乗せてナマエの体を折りたたむように覆いかぶさる。
「はあっ…んっ…はぁ……嫌か?」
今まで太ももを掴んでいた手をナマエの顔の傍につく。
真っ赤に染まったナマエの耳に直接吹きかけるように尋ねる。
ナマエはぶんぶんと勢いよく顔をよこにふった。
「やじゃないぃっ!ひっ、ああっ、これぇっあ、ああ、ぁっ」
嫌じゃないのくらい分かる。
のばされたナマエ腕が力強く自分の首にまきつく。
「なら…っく、あっ…よかった。はぁっ」
腰の動きはそのままにナマエの背中に腕を入れて勢いよく体をそらす。
「ああぁっ!?」
「…っはぁ……」
自分はあぐらをかいて、その上にナマエの体をおとす。
軽い体が自分の腕の中で何度もはねる。
「あああっぁあああぁぁ、っ、んぁ、ねえ、ぁあ、イっちゃうぅ」
体を離そうとしているのだろうか。
首に回されていた腕がほどかれ胸板を弱い力で押し返す。
それなのに、腰は押し付ける様に揺らめいていた。
ナマエの背中に回した腕はそのまま彼女を逃がさないようにしている。
今まで以上に蠢く感覚が短くなっているナマエをそのまま追い詰める様に突き上げた。
「あぁぁっ、あっ、イッちゃあ、うううぅあぁ、あ、あ、あっイくっ、あぁっあ、あっ!!」
「はぁっ、くっ、ああ」
「ぁ〜〜〜〜っ」
「……っ」
何もかもを搾り取るようにしめあげられて、慌てて体を離す。
勢いよく出た体液がナマエの腹を汚す。
「…っ、はぁ……はっ…すまない」
気怠い体を動かし簡単にだがナマエの体を清めてやる。
その間、ナマエはぐったりと横になったままだ。
「大丈夫か」
「…え?あ。うん、すごい良かった!」
そう言って体を起こしたナマエに水を渡す。
別に具合を尋ねたわけではないのだが…。
「そうか」
にこにこしながら受け取った水を飲む彼女をベッドソファに腰掛けて眺める。
先ほどまであんなに乱れていたのに、今はそれを感じさせないほど無邪気な表情だ。
彼女と一線こえてしまった。
順番が逆になってしまった。
ナマエの説明を改めて部下にしなくては。
今晩中にどう話すか改めて考えなくては。
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