DIOには星形の痣がある。
すごく記号的な星の形。
言ってしまえば、その形だけを見たらファンシーだ。
妖艶な姿とは似合わない。
体は別の人のものだと言っていた。
情事後の怠い体をベッドに沈ませながらナマエはつぶやいた。


「星」


「ん?」


「星が見たいな」


ナマエと同じように裸のDIOが立ち上がって服を着始める。


「外に出るか」


「うん」


そう返事すれば、DIOはナマエに服を着せてやってそのまま抱え上げた。
自分の体を支える逞しい腕に全てを委ねる。
他人の体だとしても、この腕はDIOの腕だよ。
私のことを離したりしない。
歩くDIOの動きにあわせて小さくひょこひょこと揺れる自分の脚。
裸足の足。
このまま地面に降ろす気はないのだろうか。
靴は履かされていない。
それでもナマエは文句ひとつ言わない。
扉にいた部下にDIOが一言つたえた後、開け放たれた大きな窓から大きく跳躍した。
耳元で風のきる音が聞こえる。
目をあけているのが辛くてナマエはそっと目を閉じた。
ばたばたと服が翻っては元に戻るの繰り返し。
勢いよく街中をとんでいくDIOは人間ではない。
どこかに着地してまた飛んでいるんだろう。
時折おおきな振動があたえられる。
涼しいくらいのカイロの夜。
ナマエを支える腕の体温の冷たいこと。
こんなに冷たくちゃ人のぬくもりが恋しくなりそうだ。
急に風も音も揺れも感じなくなった。


「ついたぞ」


頭のすぐ上できこえるDIOの声で目をあけると宝石をくだいてちりばめたような星空が広がっている。
どこまで来たんだろう。
喧騒の中にある館とは違い、そこは音がなかった。
静かな砂漠だ。
延々と似たような風景が広がっている。
息ひとつきれていないDIOはその場にあぐらをかいて座り込むと、私を抱えなおして膝の上においた。
肌寒さのあまりナマエはDIOの首元に抱き着く。
それに対してDIOはナマエの体に腕をまわす。
冷たい腕がナマエの体温を分け与えたかのようにじんわりとぬるくなってくる。
暖かくもないが、これ以上さむくなることもないだろう。
微妙な体温だ。
星空を見上げてたら、なんでこの痣の形が星形とよばれているのか分からなくなっていく。
子供のころからこれは星形だという認識だったのに。
ぜんぜん違う。


「ありがとう。星、きれいだね」


腕を離す。
密着していた体にすこし隙間をあけた。


「もうちょっと見てていい?」


「夜が明けるまでなら」


「もちろんだよ。死んじゃ嫌だよ」


吸血鬼なんだ。
きっと太陽を浴びたDIOの体は灰になる。
ちょうどこの砂漠に敷き詰められたようにサラサラの砂のように。
想像しただけで少し目頭が熱くなってくる。
想像しないほうが良いのに、DIOがいなくなってしまうことを頭に思い浮かべる。


「そう簡単に死にはしない」


「うん」


「だから泣くな」


ナマエは星空を映した瞳から堪えきれない涙を流していた。
頬にするりと走った涙の痕がほんの少しだけ、星の光で煌めく。
DIOは指でそれをぬぐって、唇を降らして、舌でなめとる。
ナマエが涙を流すたびにそうする。
すぐに泣き止んだナマエだが、瞳はぐずぐずに濡れたままだ。
先ほどより星の光を孕んでしまったような瞳の輝きが見ていられなくなってDIOはナマエを胸にかき抱く。


「星を見ているだけだろう」


「今はDIOしか見えないよ」


それに暗いよ。
言葉を続けるナマエは顔を胸板に押し付けられ視界を奪われていた。


「それでも良いじゃないか」


「うん。それが良い」


DIOにナマエの体温がうつっても、夜が明けるまで二人は砂漠の真ん中で抱き合っていた。









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