読書をしているDIOの耳元で光って揺れるピアスを眺める。


「DIOの趣味がよく分かんない」


「何を言っているんだ?」


「ピ・ア・ス」


耳を指さして答えると不満そうなDIOが何か言いたげな様子である。
今日はオフの日なのだろう。
黄色い服と合わせたような金色のシンプルなピアスではなく、飾りのついたものをしている。
パッと見ピアスは女性用に見える。
それなのに違和感を感じさせないのはDIOの容姿の為せるわざだろう。
これ以外にもDIOはたくさんのピアスを持っている。
ピアスだけじゃなく、装飾品はそこらへんの女の人より種類が多いんじゃないか。
普段は半裸同然の恰好をしている割にはこだわりがあるらしい。


「ピアスは嫌いか?」


「嫌いじゃないよ」


「そうか」


「そういえば。DIOってさ、ピアスホールどうやって開けたの?」


おとなしくファーストピアスを付け続けるDIOが想像つかなかったので尋ねてみる。
そもそも彼の力でピアスホールくらいの傷ならすぐに治って埋まってしまいそうだ。


「ピアスホール?」


「え、知らないの?あー…日本語と言い方ちがうのかな?ピアスをつけるための穴だよ。」


それから日本での一般的なピアスホールの開け方を説明する。


「そんなもの開けていない」


「え?どうやって毎日ピアスつけてるの?」


「ん?それは…」


少し嫌な予感を抱いていると、DIOは読んでいた本を傍らに置く。
そして、つけていたピアスをおもむろに引き抜いた。
同時に血とほんの少量の肉片が飛ぶ。
小さな悲鳴が喉の奥であがるのを口に手をあててひっこめる。
そんな私を見て実に楽しそうな表情を浮かべるDIO。
血を流していた耳は瞬く間に治癒されていき、DIOが軽く血を拭えば綺麗な耳があらわれた。
そこにさっき引き抜かれたピアスをあてがわれ、先端が耳たぶを貫く。
少しの血が耳をつたっていったがそれまでだった。
よく見るとピアスの一部が耳に癒着している。


「こうやっている」


目の前で行われた出血を伴う行為に口元から沿えた手を離すことができない。
不衛生なんて言葉は通じない。
DIOは吸血鬼だ。
きっと雑菌はもちろんウィルスだって彼の前では意味をなさない。
人外の回復力をもって行われる強引なピアスの装着法は彼じゃないとできないだろう。
この人は本当に普通の感覚とずれている。


「そういえばナマエはピアスをしていないな」


そう言ったDIOの大きな手に頬を包まれる。
いつもなら安心して大好きだし、決まって愛の言葉をささやかれる。
でも今回は違う。
さっきまであんなことをしていたのだ。
思わず身構えて無言でDIOの表情を伺う。
ニヤニヤと悪知恵を身に着けた子どものような顔をしている。
ダメだ。これはダメだ。


「これならお前にも似合いそうだな」


先ほどそうやって見せたように、つけたピアスを引き抜く。
鋭い先端がチクリと耳に触れたところでハッと我に返る。


「待って、それ人にやったらだめだって…」


「大丈夫だ」


「や、やめて!こわいよ!!」


彼にとっては意味のない抵抗かもしれない。
でも抵抗せずにはいられない。


「ちゃんと開けるから、その方法はだ…!?」


気が付いたらナマエの体はDIOの腕の中にすっぽり収まっていた。
ザ・ワールド使ったな、と思いつつ逃げられない状況に半ば諦めていた。
でもまさか実行はしないだろう。
…でもDIOならやりかねない。
もし。もしやられたら、後でテレンスさんに消毒液をもらおう。
痛いかな、怖いな。
色んな不安を抱きながら目を瞑ってじっとする。
いつまで待っても耳に痛みはない。
不思議に思って目を開くと眼前にDIOの顔が迫っていた。


「!?」


「何を驚いている」


「だって、顔、近いんだもん」


「そんな顔をして何を言っている。ねだっているんだろう?」


逃れる隙もなくDIOに唇をとらえられる。


「っ…んは、………ん…ッふ……………っい!?」


ねじこまれた舌に翻弄されていると耳に鋭い痛みが走った。
思わずDIOの舌をかみそうになるすんでのところで我慢する。


「やはり似合うな」


満足そうなDIOに至近距離で見つめられても照れるはずもなく。


「もーーー!!やめてって言ったのに!」


どんっとDIOの胸板を押しやって部屋を出るとナマエはテレンスに消毒液をもらいに館を歩き回った。
しばらくはナマエの虫の居所は悪かったままだった。
しかし、それでも外さないピアスを確認してDIOは彼女の機嫌が良くなるまで待つことにしたのだった。








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