お風呂は快適なものだった。
大浴場を独り占めしている、まさにそんな広さなのだ。
こんなお風呂が広かったらお風呂が好きになりそうだ。
さて、入浴を終えたあとは少しバタバタした。
DIOはすぐに集められる仲間を招集し、私のお披露目を開始したのだ。
もちろんのことざわつく。
今まで客人(プッチとかかな)が来ても館に住み込みで働く者以外に紹介しなかったDIOがわざわざ皆を集めて私を紹介した。
何かあるに違いない!と勘繰るホルホースに、嫉妬心を顕わにしてハンカチをギリギリかんでるマライアとミドラー。
一気に賑やかになった広間をナマエは少しうるさいと感じていた。
顔をしかめていたナマエの都合なんて関係なしにエンヤ婆は手や顔を触ったあげくDIOに希望をもたらす者だ!!と言い始める。
その言葉にDIOはもちろん、部下の者もざわついて各々好きなように話を広げていた。
先ほどよりも大きくなった騒ぎにいい加減ナマエがうんざりしていると徐々に喧騒が遠くなるのを感じた。
もう騒ぎは収まったかなと周囲を見回してみると皆の口は動いている。
それでいて全員スタンドを出現させてこちらを向いている。
何が起こったか分からなかったがDIOに肩をぽんぽんと叩かれ音が戻ってきた。

「そういうわけだ。行くぞナマエ」

「??」

そして、ナマエは肩に添えられた手からぐいっと力を感じ、身を任せるままにDIOの隣を歩いている。
食事の前は迷子になったため時間がかかったが、普通に歩けばすぐつく距離であったらしい。
こんな距離で迷子になってたらそりゃヴァニラさんも不安がるかな。
ちらりと見上げれば満足そうなDIOの表情がうかがえる。
初めて来た部屋にまた戻ってきた。
ここはDIOの部屋って思っておこう。

「貴様のスタンドが具現した」

扉を閉めて伝えられた言葉に驚いたのは誰でもない。自分だ。

「え!?!?どこどこ!?どこなんですか!?」

後ろをぐるりと見回してもどこにもスタンドらしきものは見つからない。

「今は出ていない」

「そうですか…」

「ナマエにはこのDIO自らスタンド指南をしてやろう」

素直に礼を言うと、うむと頷くDIO。
よっぽど危険なスタンドでない限りはザ・ワールドにとって不利になることはないのだろう。
スパルタ指導にならないかが不安だがここはDIOに任せて損はないはずだ。

「さっきエンヤが占ったあとにスタンドが出現した。あのときの感覚は思い出せるか?」

「ごめんなさい。よく覚えていません」

「ではその時なにか考えていたか?」

「なにかって、あっ・・・」

なにかってうるさいって考えてたけど、それをここで言ったら失礼になるんじゃないのかな。

「え、その、すごく失礼になってしまうんですけど」

「構わない」

「少し騒がしいなって、そう考えてました」

ほう、と答えるDIOを見ながら少し反応がおじいちゃんっぽいと感じる。
100年も一人で海底にいたら不老不死とは言えども精神的には年をとるのだろうか。
ぼーっと扉のそばで立ってたらDIOがこちらに近づいてきて指で髪をとかしてくる。
びくりと体がはねるのは仕方がない。
なんたって距離が近すぎるのだ。
それでもおとなしく髪をいじられている。

「たしかに少し騒ぎすぎだったな。それで、その時何か変わった事はなかったことは?」

「変わったことって言ってもいつも通りぼんやりしてたら音が小さくなって」

「それかもしれないな」

「?」

「スタンド能力だ。聴力を低くする能力の可能性がある」

そうなのかな、あんまり役に立たなさそうだな。
そう考えている私の正面では、それとも振動を抑えるかとかぶつくさ言ってるDIOがいる。
髪を撫でる手は未だに離れないままだ。

「ねぇ」

「なんだ」

「髪、いつまで撫でてるの?」

「フン。こちらの勝手だ。気にしなければいい」

少し機嫌を損ねてしまったかもしれない。
不安に思いDIOを見上げると穏やかな表情を浮かべていた。

「そろそろ眠くならないのか」

「言われてみればちょっとねむいかもしれません」

「じゃあ寝るぞ」

にっこり笑ったかと思えばぐいっと腕を引っ張られてベッドまでつれていかれる。
なにぶん素材が最高なので笑顔を向けられるとかっこよすぎて困る。
昨晩も眠る前に思ったけど私はここにいる間はDIOと睡眠を共にするのだろうか。
拒否して血を吸われたらどうしよう、と怯えながらDIOの隣にそろそろと横たわる。
この館は主の体質故に太陽光が一切入ってこない。
さらに時計がどこにも見当たらないので体内時計がおかしくなっててもおかしくない。
これから寝ようとしている時間が昼か夜かもわからない。
昼夜逆転してたら体に悪そうだな…

「DIOって私のこと犬か猫かなにかかと思ってない?」

DIOはベッドに入ると髪だけではなく体も撫でてきた。
しかし、そこにいやらしさは全くない。
私たちがペットを可愛がるような撫で方なのだ。

「ナマエは人間だろう?」

「そうだよ。でもDIOは吸血鬼だから人間もペットになるんじゃないの?」

「…面白いことを言うんだな」

「面白いの?」

「ああ。面白い。そうだな…犬なんか飼うより人間の方が何倍も良い」

「犬の人間にへいこらする態度が嫌いなんだよね」

「正にその通りだ。犬を飼う奴の気がしれない」

漫画を読んだときとは別人のような表情を浮かべたりするので、違う人なのかと思った。
しかし、過去に起こった出来事やエピソードなどはそのままなのかもしれない。
ということはこれから承太郎たちと会うかもしれない…

「そろそろ眠れ」

「うん」

考えていても仕方ない。
とりあえずできることをしたい。

「ねぇ、DIO。お願いがあるんだけど」

「なんだ」

「スタンドの練習?っていうのか訓練っていうのか…とにかくスタンドを強くしたいの」

「明日テレンスに用意させる」

「へ?用意?」

「音の出るものや部屋、それに訓練する場所も必要だろう?」

「ええ」

「テレンスにさせるから気にするな」

「ありがとう!おやすみなさい!」

「ああ」

明日からの訓練にそなえて眠ることにした。
いつから闘いが始まるか詳しく覚えていないが、始まってからではあまり時間もとれないだろう。
しっかりしなければ。


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