DIOが言うには、まず警備をしているはずの館に突然現れた小娘に対して部下が警戒することは避けられない。
侵入経路やナマエの素性、全てが判明しない限りただの部下として招き入れても決定的な不和が生じる。
そこで客人という一番楽な方法をとったらしい。
仲良しこよしな集まりではないにしろ、できるだけ衝突は避けたい気持ちはわかる。
そこまで話すとここに座れとベッドを指す。
友人でもない異性のベッドに腰掛けることに躊躇ってしまう。


「女には困っていない。お前は貧相だし、安心しろ」


少しムッときたが、この世界の人たちはスタイル良いことは事実だ。
先ほどの女性もスタイルが良かった、と部屋を見回したがその女性はどこにもいない。


「アイスに片付けさせてある」


そうですか。
例のガオンで掃除してるのだろうか。
それにしては室内のどこにも損傷が見られない。
話す機会があったらどうやってガオンしたのか聞いてみよう。


「DIOっていつもそんな恰好なの?」


隠している部位の方が少ないくらいの布を睨みつつ問いかけた。
出会ったときと同じようにDIOはベッドに横たわっている。
完璧に鍛え上げられた体がすぐそばにある。
素晴らしすぎて目に毒だよ。


「そうだ」


「へぇ。あの黄色い服は着ないんですか?」


少しでも着衣をしてほしい私は記憶の中に黄色のジャケットを羽織るDIOがあることを思い出す。


「お前はどこまで知っているんだか」


DIOはというと殺気や威圧感、凄みといったものを感じさせない様子で笑っている。
楽しそうに喉で笑っている。
どう答えたものかと考えあぐねているとふわふわと眠気が襲ってきた。
夢の中で眠くなることはないわけではない。
せっかくの楽しい夢なのに、一度ここで眠って場面が切り替わったら寂しいな。


「ん。眠いのか?」


DIOはこちらに手を伸ばし猫をあやすように頬を撫ぜる。
その感触が心地よくて本当に寝そうだ。


「うん」


「そうか」


そういえば私どこで寝るんだろう。
ゲストルームとかあるのかな。
だめだ、眠すぎて考えられない。
どこでも良いから眠りたい。
瞼を開けておくのも難しくなって、閉じてしまった視界では何も見えない。
だんだん意識も遠くなって、音が小さくなって、最後には頬にあった感触も分からなくなってしまった。

少し肌寒く感じ落ちていた意識が戻ってくる。
DIOの出る夢を見た気がする。
長くはないが、少し疲れる夢だった。
時間があるときに漫画読み返そう。
あ、でもそんな時間あるのかな。
家にいても最低限のことを済ませるとすぐに疲れて眠る生活を続けている。
せっかく目覚まし時計が鳴っていないのだ。
二度寝したい気持ちがあるが、やはり肌寒い。
なにかもう一枚かけたいかも。
ナマエはまだ回らない頭のままぼーっと目を開ける。


「ッ!?」


ナマエは思わず息をのむ。


「DIOがいる!!!」


・・・なんでDIOがいるの?
まずここ私の部屋じゃない。
たぶん夢で見たのと同じ部屋だ。
ナマエの声に反応したDIOはもぞもぞと私の隣で動く。
吸血鬼でも眠るんだ。
私まだ夢見てるのかな。
焦りながら手の甲をつねってみたり、頬を叩いてみても痛い。
痛みを感じる夢って珍しいね〜
私はまだ夢を見ているんだ。
次起きたときこそ現実だ。
そうだ、そうに違いない。
夢の中で二度寝なんて贅沢!と思いながら再び潜りこんだベッドの中で何かが足にあたった。
なんだろう。
頭からベッドに入り直して手で物を探す。
取り出した物に驚きを隠せなかった。


「私の携帯…」


私の携帯とは言っても、これは会社から支給された携帯電話だ。
開けてみると充電が残り少ない。
電波は圏外だが、メールボックスを開く。
中には仕事の内容のメールが昨晩みたものと寸分変わらずそこに表示されていた。
現実が混じっている。
急に楽しい気分が引き戻されて、嫌な毎日がナマエの気持ちをむしばみつつあった。


「はぁ…」


携帯の電源を切って横になる。
自分がずっと裾の長いワンピースのようなパジャマを着ていることに気がつく。
ポケットはついていないので、携帯は握りしめたままだ。


「起きたのか」


「わっ!」


さっきまで寝ていたと思っていたDIOがナマエに声をかける。


「そこまで驚かなくても良いだろう」


「あ、ごめんなさい」


「謝る必要はない」


「…そうですか」


少し上から目線が気になるが、DIOはこういう人だ。
人を支配するような性格なので仕方がないだろう。
あ、この時代の携帯電話と随分違うんだ、これ。
どこかに隠した方がいいのかな。
そう思って手を握りなおしてみると先ほどまであった携帯電話の感触がなくなっていた。
チラリと手の中をみると何もない。
夢だからすぐに現れたり消えたりするらしい。
都合の良い夢だ。
DIOは真横にいる。
二人並んで寝て向い合せの状態だ。
端正な顔が近いので辺に照れてしまって直視ができない。
ぐぅー
視線をそらしたら自分のお腹から情けない音が鳴った。


「食事にしよう」


「ありがとうございます」


さっきの広間に行けと促される。
そうか、DIOの食事は人の精気だ。
量の調節とかゾンビ化はできるが、基本死ぬまで食らうんだろう。
これ以上死体を見せないように気遣ってくれてるのかな?
ここに来たときももしかしたら食事中だったのかもしれない。
もう一度礼を言って私は広間に向けて部屋を出た。


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