友だちになる
「セブルス!見て!」
セブルスが内心でやきもきしていたのが嘘のように、彼女はその呼称をあっさりと口にするようになった。その頃には裏庭でのお喋りもすっかり定番になり、薬学の授業でも隣に座るようになっていた。最初は薬学の苦手な生徒と得意な生徒で組んでバランスを取るためだの何だの理由がついていたが、そのうちナマエもスラグホーン教授に気に入られ、スネイプとナマエが二人でいるのは至極当然のようになっていた。
「……そうはしゃいでいると、また湖にレポートを落とすぞ」
「そんなことしないよ、君じゃあるまいし。それに私だってもうおチビの初心者魔女じゃないんだから」
「湖にレポートを落としたのは風だ。ぼくじゃない。……そんなに言うなら成果を見せてもらおうか」
「だから見てって言ってるじゃない。……ほら」
そうして二人はかわるがわる呪文を試し、お互いの呪文の改善点や反対呪文について熱く語り合うのだった。
*
「ねえセブルス、……あ!ごめん」
「今のは何に対する謝罪だ?」
「うっかりファーストネームで呼んじゃった」
……今更か。スネイプは思わずため息をついた。改めて承認するのも何だか気恥ずかしくて黙っていたのを、何でこうも素直に口にしてしまうのか。
「たまに、君がなぜスリザリンなのか疑わしくなる。……相手が、つまりこの場合ぼくのことだが、何も言ってこないならばわざわざ自分でそれを掘り返して弱みにすることもあるまい」
「弱みに?君が?考えもしなかった」
きょとんとしたナマエを見てスネイプはまた溜め息を吐きたくなった。というかついた。それを口にするなと言っているのに。
「たまたま僕と君が敵対していないだけだ。これがスリザリンの他の生徒なら…どんな些細な揚げ足だってとるだろうし、それを種に君の弱みだって握るだろう。どんなに取るに足らない小物の弱みでも握りたがる人間たちの集まりだ」
「なるほど。……分かる気はする。君といるとつい気を抜いてしまうんだ……その、友だち、みたいに思っているから」
少し俯いた友人に、スネイプは何も言ってやることができなかった。