偽装する
「…………ジェームズ、出てきていいよ」
「……やあナマエ。自分と家族が殺されている映像ってのはやっぱり気分が悪いね」
「いつバレるとも分からない。さっさと偽造を手伝って」
倒れているジェームズ“だった”男を見ながら透明マントを脱いで現れたジェームズ本人に、ナマエは無表情のまま言った。そう、すべてはナマエが作り出した幻像だったのだ。リリーとハリーは安全が確保できるまで二階に隠れているように言ってある。
二人で現場の偽物の血を消し去り、代わりに本物の血をまき散らす。魔法が解けて元の姿に戻ってしまった二人の男女の遺体と赤子の遺体をもう一度変身させ、横たわらせる。この戦争で死んでしまったとある幸せな夫婦とその赤子の遺体を。
一歩間違えれば、ポッター一家の未来の姿だったかもしれない家族たちだ。
「……ごめんね、こんなことに使ってしまって」
ジェームズはそっと遺体に謝る彼女の横顔を見つめた。
「相変わらず、君の偽造はすごいね。“最高の幻術士”と呼ばれるワケだ」
「魔法使いなんてみんな幻術士じゃないか。マグル出身に言わせてもらえば大差はないね」
「そうなのかな?マグルの感覚はよく分からないけど」
何気ない口調で会話を続ける。もちろん手元は現場の偽造にせわしなく動かしながら。
「君が僕を想ってたなんて知らなかったな」
「…………は?」
ナマエの手が止まった。
「だってさっき言ってただろう?想い人が死ぬ幻像でイライラしてるって」
「…………言ったかな、そんなこと。言ったとしてもリリーのことだ。大切な友人ってのを言い間違えた」
ナマエはそれ以上の追及をジェームズに許さず、また忙しく手を動かし始めた。