連想ゲーム2
「ねえバーボン、ちょっとゲームに付き合う気ある?」
移動中。バーボンと二人でいることにもすっかり慣れてしまったマッドドッグは、手遊びにも空きて、運転席のバーボンに話しかけた。まだ組織に戻る前に工藤邸でやった他愛もないゲームの続きだ。
今までならこの男と慣れ合うなんてありえなかったが、未成年だとばれてからの彼はなんだかんだナマエに甘いので、何やかんやナマエも絆されているのかもしれない。
「どんなゲームです?」
「んー、逆連想ゲーム?三人の人間があるふたつのワードを聞いて思い浮かべたものから、あなたが逆にそのふたつのワードを推理するの。どう?」
「はあ…その三人って誰です?当てたら何かご褒美でも?」
「赤井秀一と私とコナン君。そうね、ご褒美、何がほしい?」
赤井と聞いた瞬間、ぴくりとバーボンの眉間が動いた。相変わらず仲が悪いらしい。だが二人の息が実はぴったりなのは知っている。マッドドッグから情報を引き出すために犯された時の手腕と息の合いようは見事なものだった。
「それじゃいつもあの男に渡している情報、たまには僕にもいただけませんか?」
「え、私いつもあなたに渡してるよね?」
思わず素の口調で言ったナマエに、バーボンも「え?」と素で聞いた。
「え、まさか、いつも中身見もせずに律儀に向こうに流してたの?」
「え、いや………」
「はー、本当、ある意味真っ直ぐな男ね。どうせあなたも見ると思ってゼロ向けの情報も入れてたのに」
「そ、それは…」
「それじゃご褒美にならないわ。…んーそうね、じゃあ、今度あなたの為だけに何かもぎ取ってきてあげる。」
「………それは魅力的な提案ですね」
「ええ、期待していて。じゃあ行くわよ?赤井秀一がビーチ、私がフェラチオ、コナン君が赤井。この三つから元のふたつのワードが分かるかしら?」
バーボンは思ったよりも真剣に考えだした。小気味いいハンドルさばきですいすいと運転しながら何かを考えているその横顔は、意外と嫌いじゃない。その目が自分に向けられた時の、手段を問わない非道さは嫌いだが。
「ひとつ、こちらから質問しても?」
「ええ、ひとつまでなら」
「その答えを出すまでにかかった時間はそれぞれどのくらいですか?」
「んー、結構前のことだから曖昧だけど…赤井が1、2分、私が十数秒、コナン君が0.2秒ってところかな」
ふむ、とバーボンはまた考え込んだ。ナマエはぼうっとその横顔を眺めていた。バーボンの顔ではなく、私立探偵の安室透のような顔になっている。何かを探る目つき。謎を解き明かしたがる子どものような。
「わか」
「……あなたって」
「りましたよ、って、はい?何です?」
「かわいい」
「は?」
運転席のバーボンが盛大にきょとんとしたのが分かった。まさか一回りも年下の小娘にそんな形容をされるとは思ってもいなかったのだろう。その表情すらもかわいく思えて、ナマエは思わずくすくす笑った。
「ベルモットがかわいがる訳が分かったわ」
「あの人とはそういう関係じゃ……というより、分かりましたよ。ずばり、酒とタバコですね?」
いつもならもっと何か言いそうなものを、先に推理を披露したいらしい。ナマエは笑いを止められないまま、その結論に至った過程をじっくり聞かされることを甘受した。