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「忠義、最近遊んでくれないね」
「ちょっと最近親が仕事忙しくて、夕飯作ったりしてんねん」
え〜、超エライ!と笑う目の前の女の子は、じゃああたしが作り行こうか?と続ける。
それに笑って、
「ほんま?やけど、もうすぐ落ち着くみたいやし大丈夫。ありがとう」
そう笑えば、頬を赤く染めてこちらを見上げたところで休み時間を終えるチャイムが鳴った。
教室に戻る背中を見送り、次はまだ休める授業やったはずと自身の教室と反対へ足を進めようと振り返ると亮ちゃんが目の前に立っていた。

「おい、どこ行くねん」
「…ちょっと、腹痛くて保健室です」
「さっきまで、いちゃついてたやんけ」
「いちゃついてはない」
しまった、次は亮ちゃんの授業か…計画したサボりを諦めるかとため息ついて亮ちゃんに付いて教室へ向かう。

「あ、そういや誕生日おめでとー」
後ろからかけた声に足を止めず顔だけ振り返った亮ちゃんは「1週間前やけどな」と鼻で笑う。
「名前から祝ってもらったん?」
そう言った俺の言葉に、一瞬亮ちゃんの背中がギクと動いた気がして、おや?と思う。
「…あー、なんかそういや、言われたなあ」
あくまで、普通を装っているつもりらしい亮ちゃんはスタスタと微妙に歩く速度が早まった。

「ちょ、なんでそんな急ぐん?」
「アホ、チャイム鳴り終わっとるやろ。お前はもう少し急げ」

あっという間に教室の前に着いて、あーあ突ついたらなんか聞けそうやったのにと教室の扉に手をかける。

「…お前、あいつからなんも聞いてないん?」
小さく聞こえた亮ちゃんの声に、そちらを見れば伺うような瞳と目が合う。

「聞いてないけど…え、なに?なにを?」

ならええわ、と俺より先に教室に入った亮ちゃんの声が聞こえてくる。
慌てて、自分も教室に入って席に座る。後ろの名前に亮ちゃんと一緒に来たことを突っ込まれると思ったのに特になんも言われない。
教壇に立つ亮ちゃんを見て、そっと後ろを振り返る。前を見ていた名前と目が合い不思議そうに、なに?と聞いてくる。

「なあ、亮ちゃんとなんかあったん?」

その言葉に名前は、こっちが驚いてしまうほど顔を真っ赤にし視線を下げて俯いた。


おいおいおい。

「え、なにが「大倉、前向け」
聞こうとした言葉を遮られ、ちょっとむくれながら渋々前を見て亮ちゃんをじっと睨む。
俺の視線を避けるように、授業を始めた亮ちゃんは黒板の方を向いた。


「亮ちゃんも男やねんなあ」

ひとり呟いた言葉は、空気中に消えた。



20161228









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