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「先生、これ調理実習で作ったの!あげる!」
「ほんま?ありがと」

キラキラスマイルでお礼をいう人物を影からそっと見つめる。くっそう、なんでうちのクラスは今日調理実習じゃないんだ!そうすれば、今頃あの女子の居場所は私のもの…!「苗字何してんねん」
後ろから聞こえた声に振り返れば、筋肉と筋肉と八重歯で出来ていると噂の村上先生が立っていた。
「今、失礼なこと考えたやろ?」
「いや、村上先生は今日も肌が潤ってるなって」
「よし、わかった。そんなに職員室行きたいんやな」
セーラー服の後ろ襟を引っ張られ、連行されそうになったところで「村上くん、なにしてんの?」

救世主が現れた!

「おお、亮か。こいつがあまりにも平然とディスりやがったからちょっと職員室まで」
「助けて亮ちゃん!」

首を傾げながら私たちを見る亮ちゃんに両手を伸ばして助けを求める!
「え、なんてディスったん?」
「今日も肌が潤ってますねって褒めただけ」
「いや、それ完全にアウトやん」
呆れたように言う亮ちゃんに「ちょ、なんか傷ついたわ」と村上先生が背後で呟く。

「ま、村上くん。俺に免じて今回は許してやって」
「え?あ、おう。ええけど…」
村上先生は、亮ちゃんを不思議そうに見ながらも襟を掴んでいたのを離して廊下を歩いて行った。
「…え、なにその笑顔」
「だって、亮ちゃんが私を助けてくれた!どうしよう!嬉しくて今ならなんでも出来ちゃいそう!」
「なんでも?」
「うん!なんでも!あなたのためなら!」

満面の笑みで頷いた私に、さっきの女子に見せていたような笑顔でニッコリ亮ちゃんは笑った。



「亮ちゃん…なんだかこの場所とってもデジャブ…」
「お前がこないだ綺麗にしすぎた花壇、校長が見てブチ切れてん。とりあえずそこの苗植えて」
足元を見れば、色とりどりの花の苗が並んでいる。
あれ、思ってたのと違う…とはいえ、今ここには2人きり!花壇をスコップで慣らしながら、今日は日陰じゃなく隣にしゃがんだ亮ちゃんを見る。
「はぁ、亮ちゃんって本当にかっこいいね」
「はいはい」
「いや、本気で言ってるよ?その彫りが深い顔も口元のホクロも垂れすぎな目も「え、全然褒められとる気がせん」
好きなとこを上げていたら、真顔で突っ込まれる。

「なんでわかんないかなあ。だから、大好きだっつってんですよ」
「なんで俺が怒られるん…」

伝わらないもどかしさにスコップで土をガツガツ掘る。こんなにこんなに好きなのに。

「あ、苗字」
「え?」
名前を呼ばれ条件反射に亮ちゃんの方を向けば、思ったより近いとこに顔があって固まる。
「ほら、前髪に葉っぱ」
指先が前髪に触れた感触がして、見れば小さな葉っぱを持っている。わざとなのかなんなのか、首を傾げ私を見る亮ちゃんと目が合う。


「…そ、その葉っぱください。家宝にします」
「なんかすっごいきしょいから嫌」


20160912








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