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「おは…、え、なにその顔。突っ込みたくないけど一応聞いとく」
朝、忠義と昇降口でばったり会い気味悪いモノを見るような目付きを向けられる。しかし、今の私にはもはやそんなこと気にならない。

「おはよ、忠義くん!今日も最高に気持ちのいい天気だね!」
「めっちゃ土砂降りやけど」
上靴に履き替えて、隣に立った忠義は私を見下ろして冷たい視線を送り続けてくる。
「…なあ、一個言うてええ?」
なに?と見上げれば、一つ溜息を吐いて「亮ちゃん」と言い出すものだから反射的に背伸びしてその口を手の平で塞いだ。

「ちょっと、なに?」
「いや、なにって…俺が言いたいわ。」
塞いだ状態のまま喋るから息がかかってこそばゆい。それに耐えれず渋々手を離せば、「うまくいったん?」と少し声を落として聞いてくる。

「うまくって…いや、別に私は告白なんてしてな「顔、笑てんで」
遮るように言われて、キュっと緩んでいたらしい口元を締める。でも、どうしたって…
「…ねえ、聞いてくれる?」



あれから、1限目を華麗にスルーして使われてない校舎の端にある空き教室、通称サボり部屋に来た。
幸いにも先客はいなくて、忠義は背もたれがボロボロのソファに腰掛けた。
「で?人をサボらせてまで話したいんやろ?」
「サボりまくって、女の子とイチャイチャしてるじゃん」
その言葉をスルーされる。今日の忠義はツンツンしてるなと思いつつもまあ、今の私には通用しない。

「えっと…、その…、」
「亮ちゃんと付き合ってんの?」

どう言おうか迷っていたら、まさかの先を言われどうせ意地悪くニヤついてるんだろうと思えば。

「…なんで、そんな顔怖いの」
「は?別に普通やろ」

いつものヘラヘラした顔じゃなく、ただ真顔で真っ直ぐ見つめてくる忠義に居心地悪く感じてしまう。イケメンの真顔ほど、怖い。

「…なあ、付き合うってそれからかわれてへん?」
「え?」
「やって…前も言ったけど先生と生徒やで?それ、アウトやん。亮ちゃんって、そこまでアホやったん?」

忠義なら、きっとからかいながらも喜んでくれるんじゃないかって。
勝手にそう思っていた。
「…な、なんで忠義がそんな風に亮ちゃんのこと」
「名前が分かってへんから言うてんねん」

ソファから立ち上がった忠義は、私の目の前に立ち、先ほどより眉間に皺を寄せて見てくる。

「卒業まで、あともう少しやん。なんで待てへんかな。もし、バレたらどうするん?」
畳み掛けるように話す忠義に言い返したいのに、浮かれていただけの私にはグサリと響くその言葉。

「もしかして、バレるわけないって思ったん?俺が誰かに話したら?」
その言葉に目を見開く。
「た、忠義はそんなことしないよ」
「なんで?分からへんやん。俺は、なんも考えずに行動した亮ちゃんが理解出来へんし、はっきり言って腹立ってんねん」

そう言い放つと、教室のドアを開け出て行こうとするのを慌てて腕を掴んで引き止める。

「待ってよ。おかしいよ、だってちょっと前までは応援してくれて「まさか、付き合うとか思ってへんやったから」

振り返って私の掴んだ手を払い、ゆっくり顔を上げた忠義の顔はひどく悲しげだった。

「なんで、ずっと見てきた俺じゃなくてよりによって教師の亮ちゃんなん」



閉まったドアを前に、私は追いかけれないまま立ち尽くしていた。


20170320










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