帯を解いて肌蹴た午前0時



なんとなく、たまには正直になってみようと思ったの。


「なんで浴衣?」
仕事から帰ってきたすばるは、リビングで出迎えた私を見て一言呟いた。
「可愛い?」すばるの質問には答えないまま、感想を求めれば「え?てか、どないしたん?」と全く欲しい答えをくれないどころか、ちょっと半笑いなところを見れば完全に馬鹿にしている。
「可愛い?」しかし、諦めない私は再度同じことを聞くと「まあー、ええんちゃう?」つか、今日の飯なにー?とキッチンに行き、冷蔵庫を開ける始末。

「…チキン南蛮」
メニューを言った私の声に冷蔵庫の扉を閉めて苦笑いして「もお〜なんやねん」と不貞腐れた顔をした私の前に立った。
「なんやねんじゃないでしょ!可愛い可愛い彼女が浴衣着てるんだよ?もっと感動するべきでしょ!」
と不満を訴えれば「自分で可愛い言うてるやん」と呆れたように笑って、私の足元から頭まで視線を動かしたすばるは「いや、でもほんまなに?なに企んでんの?」と、失礼極まりない事を言う。

すると、ベランダに続く窓から独特の音が聞こえた。
二人ともその音に窓の外を見れば色とりどりの花火がうち上がっている。それを見てすばるは「あ…」と声を出し私は思わず俯いた。

別に花火大会に行けるなんて、思わなかった。でも、たまたま涼みに入ったデパートで浴衣フェアがあっていて。白地に真っ赤な花が派手すぎずにあしらわれた浴衣を見つけて、これを着たところをすばるに見せたいと思った。可愛い、似おうてるやんってただ、笑わせたかっただけ。
結局、素直になる予定がいつもの性格が出て、すばるにはきつく言ってしまうし自己嫌悪に落ち込み出す思考を引き上げるように「名前」とすばるが名前を呼んだ。
顔をあげれば、優しい顔で笑うすばると目が合って「花火、見に行くか?」と言われる。
その言葉に、一瞬反応しかけたけどすぐに冷静になる頭に「ごめんね。気を遣わせたかったわけじゃない」と謝れば「浴衣、似おうてるよ」と優しい声が聞こえた。まるで、すばるがバラードを優しく優しく歌う時みたいな声に泣きそうになる。

「…ベランダで見るか」
そっと私の手を取り、ベランダに出て打ち上がる花火を見上げる。
「こんな絶景ポイントやったんやなあ」とすばるは呟いて横顔を見れば花火の色がその瞳に映っている。なんとなく、繋いだままの左手に力を入れればふ、と息を漏らすように笑ってすばるはキスをしてきた。

「…浴衣って、やっぱ色気がこう…」
やはり、優しくてもすばるはすばる。顔から下心ってものが溢れ出ている。
「ねえ。さっきまですっごい男前だったのに、なにその顔」
「え?まあ、はっきり言うて脱がせることしか考えてへんやろ」
笑いながら、私の頬を両手で挟んできたすばるは「浴衣脱がせたことあらへんなー」と、喜んでいいのかわからないデリカシー無いことを言う。
それに、胸あたりを小突けば「なんやねん」と挟んでいた両手を後頭部に回して抱きしめてきた。

「すばる大好きよ」
たまには、正直に素直に。「…ベッド行く?」やっぱり、気持ちが性欲に直結してるらしいすばるに笑って「ちゃんと脱がせてよ」と言えば「中途半端もええんちゃう」と言われ、思わず笑い声が大きくなった。


すばるは、もちろん浴衣を脱がせられるはずもなく肌蹴たままの私を見て、「こっちのが、ええな」とこれまた喜んでいいのかわからないことをベッドの上で笑って呟いた。


20160717


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第4弾は、すばるくんでした。
このタイトル思いついたとき、すばるくんが浮かびまして。
男前な顔で下ネタ言われたいわー←





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