5.下から見たら意外とよく見える

すばるくん、亮ちゃん、名前ちゃん。
末っ子の俺から見ると、あの3人はたまにおかしな空気になる時がある。
それが、まさに今だ。


「亮ちゃん、早くご飯食べちゃって!あ、スーツ部屋にかけてるから」
「あ、すばるくん。明日のお弁当買ってもらっていいかな?会社説明会で早くて」
バタバタと、キッチンとリビングを行ったり来たりしながら、亮ちゃんとすばるくんに話しかける名前ちゃんをソファに寝っ転がって目で追う。たぶん、いつも通りにしとるつもりなんやろうけど明らかに落ち着きがない。
いつもなら、食後はまったりしてテレビ見て笑ったりしてんのに。
亮ちゃんやって、名前ちゃんに早くしろ、なんて言われたら文句の一つでも言うのに普通に返事するし。
すばるくんは、と真正面に座ってテレビを見てた長男に視線をうつせば名前ちゃんをジッと見ていた。やっぱり、我が家の兄2人と姉はなにかおかしい。

「なあなあ、亮ちゃんと名前ちゃん喧嘩でもしてんの?」
風呂から上がって、向かいの部屋に行けばすばるくんはちょうど煙草に火を点けたところだった。
「あ!俺にも1本」片手をすばるくんに出せば「アホ。みせーねんやろ」「すばるくんやって、16で吸ってたやん」
言い返せば、「俺はええねん。つーか、お前自分のあるやろ」と言われ、やはりバレてたかと笑えば「兄貴2人を見とんのやから仕方ないか」とすばるくんは苦笑いした。
「てか、そんなことより。亮ちゃんたちどないしたん?」
すばるくんは、煙を吐き出し「なにがやねん」ととぼける。
「すばるくんやって気付いてんのやろ。おかしいやん。1日1回は言い合いしとる2人が当たり障りない会話しかしてへんとか」
そう言えば、少し目を開いて俺を見て「お前、いつまでもガキやと思ってたんやけどな」と失礼極まりないことを言う。
「家族なんやから、見てたらわかるやん」
ちょっと拗ねた声を出した俺に、すばるくんはすまんすまん、と全然心がこもってない謝罪をし2本目に火を点けて「まあ、なんやろ…」と切り出した。
「あいつらは、血はつながってへんけど同い年でガキの頃から一緒で、双子みたいに扱われてたからどっか不思議とお互いのことがわかるんやろ。名前は、どっかで亮に遠慮してた部分もあるし亮は亮で、短気やけど優しいから名前のことほっとかれへんし。」
亮ちゃんと名前ちゃんの話をするすばるくんはすごく優しい顔をする。
「それで、なんであーなるん?」
「やから、まあ、亮が名前の気持ちとか曝け出させたんちゃう?昔から、気付いてんのか知らんけど本音を言う相手も言わしたってたのも亮やから」
そう言いながら、すばるくんは優しい顔から少し寂しい顔に変わった。
「それって、名前ちゃんが俺やすばるくんには言えへんことがあるってこと?」
煙草を灰皿に擦り付けたすばるくんは、少し黙って「さあ」と放った。
「さあって…」
「まあ、あいつらのは自然と直るやろうし。お前はいつも通り姉ちゃんベッタリでおればええねん」と笑って、残り1本になったラキストを渡してきた。

「俺、アメスピやないと嫌や」と言えば生意気、と頭を叩かれた。

叩かれた頭をさすりながら、「寝るから早よ部屋戻れよ」とベッドに入るすばるくんを見る。
たぶん、すばるくんは名前ちゃんの隠していることがわかってるような気がした。


20160717




[ 5/18 ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -