4.時間の中に隠した本音

気付けばいつもそばにいた。


「「あ」」
大学からの帰り道、バイトも休みで食材の買い物も昨日したばかりだからと一人ぷらっと入った映画館。
見たかった洋画のリバイタルで、入ればほぼ貸し切りの状態で自分の席に近づくと、1人で座っていた人が顔を上げて思わず声が出た。


「まさか、亮ちゃんがいるとは」
「それは、こっちの台詞や」
まさか同じ映画館で同じものを同じ時間に見るなんてことが起きるなんて。とりあえず、なんとなく隣に座って恥ずかしさも感じつつ、映画が始まればあっという間の2時間で終わったら亮ちゃんに「帰るやろ」と言われ今に至る。

亮ちゃんとは、同い年で兄妹になった日から双子じゃないけど一緒にいすぎたせいか不思議と好きなものや考えてることが似てきた。とすばるくんに言われた。自分じゃあまり分からない。
隣を歩く亮ちゃんを見ると前を向いたまま「なに?」と言われ「いや、相変わらず男前だなって」と言えば「お前バカにしてるやろ」とじろっと睨まれる。
「失礼な。だってうちの大学でも亮ちゃん人気だよ?」
そう言えば、マジ?とニヤつきながら聞いてくる。
「彼女、しばらくいないよね?」
「あ〜、そうやっけ?」
首の後ろをかきながら、「てか、お前人のことより自分はどうやねん」と話しの矛先を私に向けた。
都合が悪くなると、話を逸らすのは昔からだ。
「まあ、あたしはほら就活もあるし…」
「それは俺もやけど」
間髪入れずに返ってきた言葉に、思わず黙ってしまう。なんとなくそのまま、亮ちゃんについて行くように一歩後ろ歩いて自分の足元を見ていれば前から「なあ」と呼ばれ、顔を上げる。


「名前、すばるくんには言わへんの?」
振り返った亮ちゃんは、足を止め真っ直ぐに私を見ていた。
「なに「誤魔化すなや。俺に隠されへんことはお前もわかるやろ」
道の途中で立ち止まったまま、向かい合った私達を好奇な目で通り過ぎる人達に気付いた亮ちゃんが手を取り道の端に動いた。

「もう、ええやろ。正直に言うたら」
「…簡単に言わないで」
「簡単やんけ。好きなら好きって「言えるわけない!」
声を上げた私に亮ちゃんは少しだけ驚いた顔をした。
「ずっと、すばるくんは他人の私も本当の妹みたいに可愛いがってくれた。おばさんやおじさんが亡くなってからは、私達3人の親代わりにもなってくれた。なのに…」
自分の気持ちを言いながら、涙が出てきそうになる。亮ちゃんは、黙ったままずっと私の手を握って少しだけ力を入れた。
「なのに?」
聞き返してきた亮ちゃんの声があまりに優しくて、我慢していた涙が頬を伝うのがわかった。


「私は、すばるくんを好きになってしまった…」


いつも、本音を吐き出させてくれるのは血の繋がらない同い年の兄でした。


20160713



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