ep.3


健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、
            
    悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも

 これを愛し、これを敬い、これを慰め、

これを助け、その命ある限り、
                             
                                   愛することを誓いますか?


Our love will last forever




「わ!!名前ちゃんめっちゃ綺麗や〜ん!」
「ヤス…言いかたが完全にあっち系やわ」

ひさしぶりに会えた顔に緊張していた体がほぐれていく気がした。
「ヤスと亮ちゃんが1番乗りか〜」
忠義と意外にもぴったり意見の合った真っ白いドレスを着て、初めて自分じゃない誰かにヘアメイクをしてもらって始まるまでの待ち時間。
最初に新婦控え室を訪れたのは、同い年コンビだった。
「いや、みんな来てんねんで。横山くんは恥ずかしがって信ちゃんは偉い人たちの相手して丸は、カメラマンしとる」
そう笑うヤスはピシッとスーツを着て、な?と亮ちゃんに言う。
「大倉にもさっき会うたらめっちゃ緊張しとったで」
と亮ちゃんはにやり顔で笑い、細めのネクタイの先をいじっている。
「忠義は、1週間まえから緊張しとるから。あれ?すばるくんは?」
まじで、と2人は笑い名前が出てこなかったすばるくんのことを聞くと顔を見合わせた2人はへへへと笑う。
「え?なんなん?」


「え?すばるくん?」
教会での式で、早くに亡くした父の代わりに兄と入場すると決めていた私はそこにいる人物に驚かされた。
「お。なかなかええやん。腹も目立ってへんし」
まさかのモーニング姿で立っていたすばるくんは、私を見て笑う。
「え?お兄ちゃんは?」
「そのお兄ちゃんから頼まれてん。今日は一緒に歩いてやってやて」
まさかの状況に加えて、人生に一度の舞台に緊張も相まってすばるくんの顔がなかなか見れない。

「なんやねん。兄貴がええなら替わるか?」
「ちゃうちゃう!なんか、ごめん。お兄ちゃんの気持ちもすばるくんが引き受けてくれたことも嬉しくて…」
「アホ、泣くの早いわ。ほら、入らなやって。しっかり掴んどけ」
そう言って、差し出されたすばるくんの腕に手を回す。

「名前、幸せになれよ」




「あ!ほら、すばるくんめっちゃ泣いとるやん」
「ほんま。人には散々泣くな言うといて」
忠義の早く帰ってこれた日、DVDを整理してたら懐かしいものが出てきてデッキへ入れた。

「先に教会入ってさあ、名前ちゃん待ってて新婦側見たらお兄さんおるし、あの時内心パニックやってんで」
「あはは。なんか、急遽お兄ちゃんがすばるくんに頼んだらしいよ。おかんもすばるくんのおかんも太鼓判押して」
「名前ちゃんちから絶大な信頼を得てんねんなあ、すばるくん」
あんな変態なんに、と付け加えて映ったマルちゃんの変顔に笑う。
「あ!ここ、忠義も泣いてたやん」

テレビに映ったのは、披露宴で忠義に内緒でメンバーからの映像が流れた時。私の知らなかった頃の忠義からメンバーとの写真に、番組でお世話になったスタッフさん達からのメッセージ。
隣を見れば、ボロボロ涙をこぼす忠義を今でも鮮明に思い出せる。

「うわ、俺こんなに泣いとった?」
「それ、このDVD見る度言うてんで」

2人分コーヒーでも入れようと立ち上がったところで、寝室から声がした。

「ありゃ、起きちゃったか〜」
「今日は何時コースやろ…」
そう言いながら、寝室に先に向かう忠義の後ろ姿に思わず笑みが溢れる。

テレビの電源を切って、寝室に向かいそっと覗けば
優しくベビーベッドから抱き上げる忠義が目に入った。
「はいはい。起きちゃったの。ママすぐ来るで〜おっぱいやろ?」
優しく背中を撫でながら、話しかける姿になんだか涙が出そうになる。



…あの時、選択を間違えなくてよかった。


「あれ?寝ちゃった?」
ふにゃふにゃ、と泣いていた声が止み部屋に入ると忠義の腕の中で寝息を立てる姿があった。
「パパやるぅ〜」
そう言って、ちょんと忠義の腕をつつけば「でも、置いたら起きちゃうんやろうなあ」と口ではそう言いつつ、顔はにやけている。

「忠義、あたし幸せ」
見上げた顔は、突然のあたしの言葉に一回瞬きをして満面の笑みになった。


「俺は、名前ちゃんと出逢ってからずっと幸せ」




Our love will last forever…



20160907








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