ep.2


大倉から衝撃的な話を聞いて、とりあえずしっかりせえと偉そうなこと言ってその日は無理矢理家に帰らせて、1人になって冷静に考えてみた。
要するに、大倉と名前の子どもが今、腹の中で育っている。


「すばるくん、顔怖いで」
「お前…ほんっま、アホやろ」
大倉じゃなく、名前と話さなくてはと連絡して取り付けた久しぶりのオフの日。家に上がって俺を見て開口一番にそう言った名前にため息つく。
こないだからため息つきすぎて、俺の幸せ無くなってそと思いながら、いつもの定位置のソファに座った。
「こないだ、忠義と話したんやろ?ありがと、家に帰らせてくれて」
「あいつもあいつやけど、お前もお前やで」
ほんま、なに考えてん?と目の前のローテーブルにお茶の入ったコップを置いた名前を見上げる。

「…また、あの時みたいに忠義に頭を下げさせたくないの」
ぽつり、と呟くように言った名前は俺の隣に腰を下ろし無意識なのかはわからないが自分のお腹に手を当てた。
「…お前、後悔せえへんの?」
そう聞けば、俯いて黙る。…それが答えやん。
「嬉しかってんやろ?初めてわかったとき」
答えなくても話しを続ければ、鼻をすする音が聞こえてくる。
「ほんまに、大倉に隠すつもりならお前は絶対写真を見られるような場所に置かんやったはずやで」
そう言えば、目を真っ赤にさせて俺を見た。
「わかった、時嬉しかった…。でも、次に考えたのはどないしよ、やってん。5年前、事務所に忠義散々頭下げてあたしとの事認めてもらえて。みんなにやってあの時迷惑かけて。ずっと、ちゃんと気をつけててん。子どもを作らないって、事務所との約束でもあったし…。やから…」
「でも、お前大倉の気持ちは無視なん?そのお腹におんのはお前と大倉の子やろ?」

ついに、声を漏らしながら泣き始めた名前の肩を抱き寄せた。
「なあ、ちゃんと話しせえへんと。大倉やってたぶん意地張って帰られへんくなっとるだけで「すばるくん、手」
慰めるように名前の肩をさすっていれば、突然背後から聞こえた声に名前と2人驚いて「わ!」なんて口から出た。
振り返れば、キャップにパーカー姿の大倉が立っていた。
「ちょ、なん!大倉、お前びっくりするやんけ!」
「俺こそ、玄関入ったら見たことあるようなスニーカーがあるし、部屋入ればすばるくん名前ちゃんの肩抱いとるし」
「言い方に悪意あるわ」

ズボンのポケットに手を入れて立ったままの大倉は、俺の隣で小さくなっている名前を見て、ひとつ息を吐いて、「ほんまごめん!!」と勢いよく頭下げた。
さすがに、それに驚いた名前は「え、ちょっと。顔上げてや」とソファから立ち上がる。

「俺、ちゃんと話を聞いてあげなあかんかったのに逃げてごめん!名前ちゃんの不安をわかってあげられてなかった…」
「…忠義は悪くないよ。勝手に背負い込んで自分勝手にしてたのはあたしやん」

2人、立って向かい合ってお互いの気持ちを言いあうのを1人ソファに座って眺める。
「なあ、お前ら俺のこと忘れてへん?」
「「あ」」



「なあ、俺もう帰ってええ?」
「え?すばるくんごはん食べてってや」
「いいよ。すばるくんほんまにありがとお。」

あれから、なぜか俺も交えて今後について話し合い、まあ結果的にこいつらは父親母親になるらしい。
名前は事務所のことを心配してたが、俺は別にそこまで心配じゃなかった。大倉を見てれば、名前と付き合ってマイナスになってないことは一目瞭然やし。5年という月日も経っている。きっと、大倉もそのことは心配してなかったからこそ、名前の行動が理解出来なかったんだろう。

「お前…散々俺を巻き込んどいてこいつと仲直りしたらそれでええんか!」
「やからやん。仲直りしたから2人がいいっていう俺の可愛い願望やん」
「可愛いもクソあるか!絶対帰らへんからな!」
「もう、忠義!すばるくん帰らんでや」

そう言ってキッチンに向かった名前を「え〜!名前ちゃん2人きりがええやん!」と大倉も後を追う。
その声に「失礼やろ」と突っ込みつつ、2人を見て笑っている自分に俺もつくづくええ奴やなと自賛して、「飯出来たら起こして〜」とソファに寝っころがった。



20160907





[ 20/21 ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -