1.青い宇宙に落ちていく

「今日から、新しく振付を担当します名字です。よろしくお願いします」



「あ〜、ダンスリハ始まるな〜」
アルバムを発売して、ツアーの日程も決まり徐々に動き出し、いよいよダンスリハも始まる前日、仕事が一緒だった丸が車の座席にもたれかかり、独り言にしては大きな声を出した。
「うるさ。丸、それ毎回言ってんで。」
友達から着ていたLINEを返しながら、一応丸にも応えると、そうやっけ〜?と気の抜けた返事が返る。
「あ〜、絶対名前ちゃんおんねんやろうな〜」
もう、怒られる覚悟でがんばろ、と呟いたらさっさと今度主演する舞台の台本を読み始めた丸を横目に見て、今しがた名前が出た人物を思い浮かべて、さっき閉じたLINEを開く。

ー明日、ダンスリハやろ?

送信するとすぐに既読がついたのを見て、珍しく思いながらも返事を待つ。
…待つ。
……待つ。
そうこうしてたら、丸は車を降りてたっちょんお疲れ〜と帰っていく。
すっかり暗くなった画面を光らせても、変わらないロック画面。
ついには、送迎の車を降りて家に入って着ていたTシャツを脱ぎ、ズボンのポッケから煙草と携帯を出しても全く変化はない。
なるほど、これが既読無視な、と自虐的につぶやきシャワー浴びてさっさと寝ようと洗面所に行くとカウンターに置いた携帯のバイブが響いた。
その音にすぐに反応した体は慣れた手つきで画面を開いた。

ー食べ過ぎて来るなよ。

待ち望んだ返事は、予想通りで絵文字やスタンプなんて無いそっけない文面で彼女らしくてつい顔が綻ぶ。

ー了解。久々に会えるの楽しみにしてるな。

そう返事を返すと、既読がまたもすぐついて今度はすぐに返事が来た。

ー言葉後悔しないでね

「うわー、またむっずい振りなんやろうなー」
思わず出た独り言と明日のことを想像して苦笑いしつつ、文字を打つ。

ーまるちゃんいじめんどいてな(笑)

もう返ってこないだろうと携帯をまたカウンターに置き、今度こそシャワーに向かいながら思うことはひとつ。


……明日のリハは荒れるな。



20160622







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