11. trust me,trust me



「なあ、大倉たちってまだ付き合ってんよな?」

レギュラー番組の収録の2本取りの日。間の休憩に楽屋で本を読んでれば頭上から聞こえた亮ちゃんの声。それに、「え?急になに」と首を傾げて答える。亮ちゃんは椅子に座り背もたれに寄りかかりながら携帯を扱って「いや〜…」と歯切れの悪い返事をする。
え、マジでなんなん?と思いながら、亮ちゃんを呼べば「昨日ってさ、お前一人やったん?」と聞かれ昨日を頭の中で回想する。
てか、昨日はラジオやから部屋に着いたのは日付変わって…と口に出せば「名前と一緒やなかったん?」と確認するように言われ、頷けば「そう…なんや」とめちゃくちゃ不安を煽るような返事をする。
「ちょっと、なによ。なんなん?名前ちゃんの浮気現場でも見たん?」とすこしイラつきながら亮ちゃんに言えば、冗談のつもりが「いや、浮気かわからんけど…なんか男に抱き締められてた」と爆弾を落としてきた。

「…は?」
俺の声にパッと顔を見た亮ちゃんはいつも以上に目を垂らしていた。


「あれ?忠義来てたんだね」
収録後、異様な空気の俺にみんなは触れず、とりあえずそそくさと帰ろうとしていた亮ちゃんを捕まえて詳しく聞けば。
友達と飯を食べて店を出たところで、いちゃついてるカップルが目に入りなんとなく見ていれば女の方と目が合い、それが名前ちゃんやったと。見間違いやないん?と聞けば、「やって…、亮ちゃんって言われてん…」となぜか俺よりしょげている亮ちゃんを置いて楽屋を出た。そして、そのまま名前ちゃん家に帰ってきて、仕事から帰宅した彼女を出迎えて今に至る。
「なんで、そんな顔してんの?」
「そんな顔って、どんなんよ」
「…明らかに、怒ってます俺って顔」
ソファに座ってる俺の隣に腰を下ろした名前ちゃんから、嗅ぎ慣れない匂いがして「忠義?」と顔を覗き込む彼女の瞳をじっと見る。
「昨日、亮ちゃんと会うたんやろ?」
その一言に、サッと名前ちゃんの顔が変わった。
「いや、会ってへん」
「なんで、嘘つくん?名前ちゃん、すぐ顔に出るから分かんねんで」
責めるような口調になってしまう自分にブレーキをかけようとしても止まらない。
「俺に言えへんようなことしたん?昨日、地元の友達と会うって言うてたやん」
そう言って、名前ちゃんが俺を見て口を開きかけてまた閉じる。
「いちゃついてた相手誰?」
「いちゃついてへんし!」そう言いながらソファから寝室に向かう名前ちゃんを追いかける。
「やったら、嘘つかんと説明してや!」

思わず寝室のドアを強く叩いてしまって名前ちゃんを見れば、最近じゃ見なかった無表情な顔が俺を見つめる。
「ごめ、「今日は、帰って。」
その言葉に、「なんなん?俺に言うことなんもないん?」と自嘲して聞けば名前ちゃんは「…今、なにを言うても忠義は信じられへんやろ」と冷静なことを言う。


「俺のこと、信じてへんのは名前ちゃんやん」

投げ捨てるように口からでた言葉に一瞬、ひどく傷ついた表情が視界に入ったけど余裕なんてあるはずもない俺は、そのまま彼女の家を後にした。


どうして、この時ちゃんと話を聞いてあげられなかったんだろう。




20160721











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