10.いわゆる似た者同士



ことのはじまりは、隣に座る男の一言だ。

「名前ちゃんってさ、いつから俺のこと好きやったん?」

なんとなく、お互い早く終わった方の家に帰ることが習慣になって今日は私が忠義の家に来た日。
「ごはん、何が食べたい?」から始まり、リクエスト通りに夕飯をこしらえてくれ、私の好きなワインまで買って至れり尽くせりな忠義になんとなく警戒していれば。
二人でソファに座って定番になった晩酌をしていると、さらりと聞いてきた質問に忠義を見る。
「は?」
「やから、名前ちゃんっていつから俺のこと好きやったんかなって」
空になったグラスにワインを並々注ぎ(そんな飲み方…)、ヘラっと笑って両足をソファにあげあぐらをかいて私の方に体を向けた忠義は聞く気満々といった表情で見てくる。
「そんなん、知らんでええやろ」誤魔化すように、ソファから立ち上がろうとした私の右手を掴んで「名前ちゃん座って」と言ってくる忠義に思わずその通りにもう一度座り直す。
「なんで、知りたいん?」
「え?知りたないの?好きな人が俺のどこに惹かれてくれたんか気になるやん」
ニコニコ笑いながら、いつもよりゆったり喋る忠義は少し酔っているらしい。
「ちなみに、俺は初めてちゃんと喋ったとき」
ほら、名前ちゃんが口説かれてたやん、と言われ忠義を見れば「え?覚えてへん?」と聞かれる。
「いや、覚えて…るけど」
歯切れの悪い返事になったのは、あの日まさに自分も忠義を意識し始めたからでもある。
漫画やドラマみたいだと思った自分が恥ずかしくなり、前はこんな乙女なこと思わなかったのに…と考えて横から感じた視線に意識がハッとして忠義を見ればニヤニヤしながらワイングラスに口つけている。
「な、なに?」
「名前ちゃん、もしかしてあの時俺と話して好きになってくれたん?」
からかうような口調に「知らん!もうええやろ」と言えば大きな口を開けて笑う忠義は「名前ちゃんわかりやす!」と次第にヒャーヒャー言って笑いだしてその口を両手で挟む。
「笑いすぎやろ。帰るで」とトーン低めで言えば、タコみたいになった口を閉じるが、やはり笑いが止まらないらしい忠義は肩が震えている。
「もう!なんやねん!」
顔から手を離し、テーブルに置いていたワイングラスを取り、先ほどの忠義と同じように並々とワインを注ぐ。
「ほんっま、名前ちゃん可愛い」
語尾にハートマークがついてそうなテンションで、顔を覗き込んできた忠義に「近いわ」と言えば、

「名前ちゃん、愛してる」

まさかの不意打ちの台詞に、柄にもなく完全に意識もなにもかも忠義に持っていかれる。
愛してるなんて、簡単に言う男はきらいだったのにな。
優しく落ちてきた唇にそっと瞳を閉じた。


「すばるくん、大倉さんってさ…」
「お前もかい」「え?」



20160715

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