「ちょっ、ちょっと待った!一くん!」
「んー?」
呑気にたのしそうな声で返事をする一くんは今、私の上に覆い被さっている。
なんでそんなことになったかというと、今から5分前。
「悠里、トリックオアトリート!」
「へ?」
「ん?トリックオアトリートで間違ってねぇだろ?」
「それは、あってるけど…」
「だから、な?」
ニコニコと言う一くんは右手を差し出す。
確かに間違ってないけど!
でも一くん、ハロウィンは明日よ!
「なんだ悠里、お菓子持ってねぇの?」
「だっ、だって今日は、」
「んーじゃあ、イタズラの方な。」
そして冒頭に戻る。
「一くんっ、何この態勢っ!」
「お菓子の代わりに悠里食ってもいい?」
「っ!よっ、よくないっ!」
さわやかな笑顔で爆弾発言をする一くんに慌てる。
「でもイタズラは決定だぜ?」
「なにっ、それ…!」
でもそんな私にはおかまいなしに、顔中にキスを落とす一くん。
「もっ、こら、んっ、」
「かーわいい悠里。」
散々私をかわいいと褒める一くんの肩を押し返して、目を見るとそれは獣の目をしていて。
「あのね、ハロウィンは明日、」
「言い訳ゲンキン。な?」
「なっ、!」
いくら説明しようとしても無駄ってことに気付いたのは、一くんの唇が自分のものに重なったとき。
trick or treat ?
(イタズラできて甘いモンももらえるってハロウィンってスゲーな!)(どこからの知識よ!)
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