7月25日、今日は俺の誕生日。

もう誕生日だからって騒ぐ年じゃないってわかってるけど、やっぱり好きな人くらいには祝ってほしくって。

だから、今日だけは…!




「あれ?真田先生。おはようございます。」

「おっ!おはようっ!」

「夏休みなのにどうしたんですか?」

「えっ、いやちょっと仕事が!」



夏休みな今は補習や部活がない限りは教師だって休み。にも関わらず俺はつい学校に来てしまった。
そっ、そりゃあ!南先生も斑目の補習で来てると思ったから。
どうしても直接、おめでとうってほほえんでほしくって…。



「南先生は斑目の補習?」



なんて、知っているくせに。くーっ、情けないぜ俺。



「そうなんです、けど…」

「けど?」

「今日も瑞希くん来てくれなくって。」


しょぼん、と効果音がつきそうなくらい落ち込んだ顔。


「今日も、ってことは?」

「夏休み入ってまだ一回も…。もう25日なのに…。」


そういってカレンダーをちらりとみる先生。

その瞬間、なにかひらめいた顔で、

「そういえば7月25日って!」



お、お?オォォォ!?まさかなのか!自己申告せずとも南先生は俺の誕生日を知ってて!?


ふつふつと沸き上がってくる期待と喜びでいますぐにでも飛び上がって喜びそうな俺の横で南先生は言葉を続けた。



「たしか、かき氷の日、でしたよね!」

「へ?」

「あれ?知りませんでしたか?」

「かき、氷?」

「7な、2つ、5氷、でかき氷です!」



楽しそうに説明する先生の横で、乾いた笑いが漏れる俺。きっとその顔は赤くなっていて。
だぁああっ!すっげぇ、恥ずかしいやつだ俺!


そりゃ、そうだよな。言ってもないのに俺の誕生日なんか知るわけないよな。



「あっ、真田先生」


でも今から、今日俺の誕生日なんだよね、だなんて気まずすぎて言えないだろ!
これじゃ、おめでとうなんか言ってもらえないよなぁ。


「真田先生?真田先生ってば!」

「えっ、なに!?ごめん。」


肩をたたかれて我に返ると心配そうな南先生。かぁわいいなぁ。



「大丈夫ですか?」

「大丈夫!暑いからさっ、ついぼーっとしちゃっただけだから!」


本当は君のことを考えてて。



「暑いなら、一緒にかき氷食べに行きません?」



……え、いま、なんて、



「ほら、せっかくかき氷の日ですし。夏休みなのにこうして真田先生にも会えたし。それに、瑞希くんが来る見込みもないですし…」


それは、で、でっ…デート…なのか?



「あの、真田先生?もしかして用事が…」

「なっ!ないっ!用事なんかない全然!」

「そ、そうですか、なら、一緒にどうですか?」



あぁ神様!
俺、この歳になっていちばん嬉しい誕生日かもしんない。




にっこりと笑う南先生に、絶対今日中におめでとうと言ってもらおうと誓って笑顔を返した。









きみと過ごせる特別な日。

たとえ君が知らなくても。





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