僕の誕生日から3日後。
3日前には悠里が、2日前には翼たちが盛大に祝ってくれて、そんな余韻もほどほどにふつうの日を送っていたとき。
見つけた。
「ただいま、瑞希くん。」
「…おかえりなさい。」
「ん?どうしたの電気もつけな…」
帰ってきた悠里が言葉の途中で口をつぐんでしまったのは、僕のせい。
薄暗いままの部屋の真ん中に僕が正座しているから。
「あ、あの、瑞希くん?」
「…ここ、悠里も正座。」
自分の真正面をポンポンと叩けば、眉をひそめた悠里は困惑しながら正座する。
「なにか…怒ってる、よね?」
おずおずと聞いてくる悠里の目の前に、今日昼間に見つけたモノを差し出す。
「あ!それっ…!」
見て瞬時に気付いた悠里は僕の手から取り上げようとする。けどヒョイと上にあげれば届かなくて前のめりになる悠里。
「……これ、僕のでしょ。」
見つけたモノはキッチンの棚の奥に押し込まれていたラッピング袋に入った手作りクッキー。
「……」
形はお世辞にもいいとは言えないけれど、トゲーらしき形と瑞希のMらしき形のものを見れば僕の誕生日のときに作っただなんて簡単に想像できる。
悠里は肯定の言葉を言わないけど顔をみればわかる。
「なんで…しまってたの。」
「それは……ゴミの日まだだから…」
「もしかして、捨てる気だったの?」
「…だってそんなの見せたくなかったし…」
せっかくの瑞希くんの誕生日にそんなプレゼントなんてあげられなかったんだもん。
うつむいたままそういう彼女。
本当バカ。
「ばっ、バカって!」
あれ口にでちゃったんだ。
「僕は、悠里からもらうものなら…何でもほしい。」
「でも…!」
「悠里からもらうものは僕の宝物になるのに。…勝手に捨てようとするなんて…バカ。」
本当だよ。嘘でもお世辞でもない。そう伝われ、とおもってまだなにか反論しそうな悠里をギュッと抱き締めた。
「みっ、瑞希くんっ、苦しいよっ」
「…バカなことしようとした悠里にお仕置き。」
もう少しだけこのまま抱き締めて、離してあげたら真っ先にこのクッキーを食べようかな。
「……瑞希くん、…ありがとう。」
「……ん。」
貴女からもらうものが一番のプレゼント。
#大幅に遅れたけど瑞希おめでとう
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