『――お掛けになった番号は電波の届かないところにあるため、』



「クソッ!またかよ!」


耳元で聞こえるアナウンスを最後まで聞かずに電源ボタンを押す。

悠里に連絡がつかねぇ。特に用があるわけじゃねぇケド、電波の届かねぇとこってどこダヨ!


「チッ…」


舌打ちしてもう一回かけてみる。

それでも聞こえてくる音声は飽きもせず同じセリフを4回も繰り返す。

悠里も大人ダロ。心配も必要ねぇのはわかってる。わかってんだよ。でも、


家には居ねぇってことか?


「…って、なんで俺サマがアイツの家まで行かネェといけねぇンだよ!」


無意識に玄関で靴を履いてドアのぶに手をのばしているのに気付いて自分に突っ込む。
頭をガシガシかいてため息をつく。

「……チクショー」















「もー…ケータイどこに置いたのかしら!」


気付けばケータイが手元になく、1時間近く探しているがどうも見つからない。家の電話から掛けてみても電源が切れてるらしくて着信音は鳴らないまま。



「思い出すのよ悠里!最後どこで使ったのか…!」


そう声に出してみてもなかなか思い出せないのは年のせいなのか。


「…これじゃあ清春くんに連絡とれないじゃない。」


清春くんの電話が掛かってきてるのに出ないだなんて、きっと彼は怒ってまた悪戯を仕掛けてくる。



――ピンポーン!ピンポンピンポンピンポン




そう頭を抱えていれば鳴り響くせわしないチャイム。


「はーいっ!いま出ますから!」



あわてて玄関に向かう間も鳴りやまないチャイムに急かされてドアをあければ強い力で引き寄せられる。


「きゃあっ!!」

「……悠里テメー…」



相手は清春くん。いきなり引き寄せられたから顔が確認できたわけじゃないけど、この匂いと声で間違うはずがない。



「ど、どうしたの…?あ、もしかしてケータイつながらなかったから?」


「っ、そうだケドそうじゃネェ!」

「え?どういう意味?」


「お前、誰が来てンのか確認せずにドアあけてンじゃネェヨ!俺サマじゃなかったらどうすンだバーカ!」


「…え、…えっと…ごめん、なさい…」



ぎゅうっとキツく抱きしめられてそう言われた私は、まさか清春くんにそんなこと言われるなんて思わなかったからただ唖然とするばかり。



「…で、ケータイどうしたンだよ?」


「…あ、なくしちゃって…」



やっぱり連絡とれなかったからこうやって来てくれたのかしら。直接聞けば絶対スナオに言ってくれないと思うからなにも言わずに、清春くんの胸に顔を埋める。



「…クッソ。…この俺サマがケータイごときに、ンナ振り回されっとは…。」



素直じゃない清春くんのために、頭の上でそう小さく呟かれた言葉には触れないでいてあげよう。
















#清春が心配性だったらいいのにな





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