「跡部」

「あん?」


跡部は書類のサインを機械的に繰り返しながら返答した。


「疲れへん?手伝おか?」

「ばーか、なめんなよ」

「俺の善心返したって」


跡部は、何があっても他人を頼らない。


「これは俺様の仕事だ。何が何でも俺が終わらせねえと意味がねえんだよ」

「それって責任感?」

「ああ」


跡部はきっと不器用なんだと思う。

なんでもかんでも全て自分で終わらせようとする。まあ、それなのにパンクしないところが跡部の凄いところ。

誰も頼らないだから誰も跡部に干渉できない。



なあ、それって辛ない?


「跡部」

「…、んだよ。邪魔すんな」

「ふふ」


抱きついてみると微かに薔薇の香りがした。跡部の瞳は確実に俺を捉え睫毛が微かに揺れる。

暫くして跡部がもがきはじめた為、後頭部に手をあて額が俺の肩に埋まるように押し付けると跡部はおとなしくなった。


「泣いてもええよ」




長い睫毛を揺らしながら、跡部が目を閉ざすのがわかった。









泣いてもいいよ





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