ごめんなさいより、
言って欲しい言葉があったんだね。












SORRY SORRY and LOVE YOU











悲しい。そんな陳腐な言葉で片付けられるような次元の問題ではなかった。

一生分の『ごめんなさい』を口にしたような気がする。最早口癖の域だ。それ程にこれは大問題だったんだ。





「ごめんなさい、跡部、なあ」

「…」



口も聞いてくれない。聞いてくれる筈がない。







跡部のファーストキスを奪った罪はこんなにも大きかった。


今考えれば、付き合っている訳でもない跡部にキスをするだなんて滑稽な話だ。しかも、男の俺が。










跡部は俺を軽蔑しているだろうか。口すら聞いてくれない今、それを知るすべはない。









「跡部、なあ…っ。悪かったって…」

「なあ…!お願いやから話聞いてや」

「ほんにすまん思っとる、やから…」

「跡部…、なあ聞こえとんのやろ?」



跡部の周囲は冷蔵庫をしばらく開けたままにしたときのような冷気が漂っていた。もはや人前で謝り続けることへの羞恥心はない。













「…てめーは、何が悪いと思ってるんだ」

「へ?」


突然振り返り難しい質問を投げかけてきた。跡部の目はどこか悲しそうに揺れていた。


「言うとることわからんのやけど…」

「だから…、俺がどうしててめーに腹が立ってんだと思ってんだ」

「え…」

やはりぱっとする答えは出ない。跡部は俺にキスをされたことが嫌だった、それは違うのか。


「わから…、わかりません」

「……チッ」


けれど跡部は、舌打ちをしたにしては不機嫌そうな表情はしておらず、やはり悲哀に似た何かを孕んでいた。


「なあ…、教えてくれん…?わからないんや…」


跡部は何も言わなかった。目を逸らして俯くだけ。握り締めた拳が小さく揺れている。


「なあ、跡…」

「俺は…、意味なくキスされたのが嫌だったんだよ…っ」

「…!」


跡部はまだ目を逸らしたまま、吐き捨てるように言葉を紡ぐ。


「よく…わからんのやけど…」

「だから…、俺は、てめーが好きだから…っ、ちゃんと気持ちが乗せてあるキスをして欲しかったんだよ…!」









ひと粒だけ落ちてしまった綺麗な涙。あとは全部俺が受けとめて、抱き締めてあげる。

いつの間にか誰も居なくなった空間。心臓の音だけがばくばくうるさい。




「ごめん…ごめん跡部…っ」

「うっせーよ…離せ…っ!」

「なあ、今度こそお話し聞いて?」

「ん…」









「あの時な?ちゃんと、気持ちも乗せといたんやで?ごめんな跡部」









好きや。











SORRY SORRY and LOVE YOU
理解は謝恩から始まるのだと。







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切甘を目指した結果です。
跡部は、受ける言葉や行為全てに意味を求めていたら素敵だなぁ。



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