私が精市くんの病室を訪ねると、丁度これから検査に行くようで、病室の前に看護婦さんといた。 精市くんが私の存在に気付いてくれて、笑いかけてくれる。毎度のことながら、精市くんが笑いかけてくれると胸が、こう、ぎゅっとなる(この感情を、私は思い出せない)。 「今から検査なんだ。すぐ終わるから、良かったら中で待っててくれないかな」 「うん、待ってる。検査頑張ってね」 ありがとう、精市くんはそう言って看護婦さんと検査室の方向に向かっていった。 精市くんに言われたとおりに病室にお邪魔させて貰い、よくよく考えてみれば、病室に入ったのは初めてだと思った。 病室は私と同じ個室で、病院の部屋の造りなんて同じようなはずだろうに、何だか私と精市くんの病室は全然違って見えた。 ベッドの脇にあった椅子を取り出して座り、ちょっと行儀悪いのかもしれないけど、精市くんの病室をぐるりと見渡した。 外からは、賑やかな声が聞こえる。 「(…そうか、花だ…)」 私と精市くんの病室の大きな違いは、精市くんの病室を飾るきれいな花だった。 「(精市くん、お花好きだし家族の人が持ってきてくれてるのかな…)」 花のことには詳しくないけど、この花の存在が精市くんらしさを出してるのかと思った。 「あれ、アンタ誰?」 綺麗に生けてある花を見ていると(と言っても詳しくないから分からないんだけど)、背を向けていた病室の扉の方から声がした。振り向くと見覚えのある集団。誰だったかな…と少ない記憶を辿っていくと、つい最近。精市くんと出会った日に来てた人達だ。 「(ということは、この人達がテニス部の人、かな…?)え、と…、初めまして…」 慌てて椅子から立ち上がり、挨拶と共に軽くお辞儀をする。 わらわらと病室に全員が入ってきて、広い病室が一気に狭く感じた。 「で、アンタ誰な訳?」 まるで珍しいものを見るかのように、私をジロジロと見る髪の毛がもじゃもじゃの男の子。 そこで私は1つの疑問が浮かんだのです。 彼にとって、私はだれ? |