おいかけて、つかまえる | ナノ


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泉田先輩のトレーニングの後、一緒に今日はファミレスでご飯を食べようって約束をしたんだ

デートみたいで嬉しいなぁって思いつつ…

今日は月イチでくるアレのせいか、ちょっと頭痛がして
保健室で頭痛薬をもらって飲んだからか、何だか眠い…

最近のお薬って眠くならない成分のが多いイメージだけどこの薬は違うのかな

泉田先輩のトレーニング姿見るの好きだし、なるべくならひとつも取りこぼさず目に焼き付けたい

いつでもかっこいいから勿体なくて

だけど今日はちょっと無理かもしれない…

先輩、集中してると絶対こっち見ないから少しくらい寝てしまってもいいかな
15分くらい寝たら目が覚めるとか言うし…

少しだけ、いいかな…

なんか丁度いいところにマットが畳んであるしこれ、いい枕かもしれない

先輩はあと30分以上はトレーニングするから、少しだけ…






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今日もいい感じにトレーニングが出来た
アオちゃんが同じ空間にいると思うと奮起出来るから単純だ

ふと、いつもアオちゃんがいる方に目を向ける

いつも目を向ければ笑って…ん?

おかしいな、いつもなら座って待っててくれて…

「寝てる…?」

近づいて見ればアオちゃんは寝息を立てていて
疲れてるのかな?と心配になった

それにしても、スカートなのに足を投げ出して…
無防備すぎる!!

太ももまで捲れあがってるスカートを見て慌ててスカートを直す
ボクだけしかいないから良いものを、他の奴らに見られたら…と思うとゾッとする

あとできちんと話さないと…と心の中で思いつつ、顔に目を向ける
ここまでまじまじと見た事はなかったかもしれない

日に焼けてるボクとは違って白い頬

そっと触れてみたら、柔らかくてすべすべで

閉じられた目を見てふと思った

キスをする時ってこんな風に目を閉じるんだろうな…
唇もほんのり赤くて、柔らかそう

何となく、触れてる頬から親指だけスっと移動させて唇をなぞる

軽く押せば想像していた通りの柔らかさにクラクラする

「可愛い」

本当に可愛すぎるよ


…ダメだ、起こさないと…

「起きて」

軽く肩を揺するけど全然反応してくれなくて

「アオちゃん、起きて」

本当に…
起きなくて焦るボクの気持ちも知らないで、キミは気持ちよさそうに寝息を立てて

「泉田先輩…」
「ん?起きた?」
「せんぱい…」

起きたかと思えばまた寝息を立てて
寝言か…

え、寝言!?

寝言でボクを呼んだの?
どんな夢をみてるの

キミは本当に…
ボクをいつも慌てさせるんだ


ねぇ、キスをしたら起きたりする?
何処かのおとぎ話みたいにさ


アオちゃんが好きだよ

そっと手を握れば、握り返してくれて
堪らなく可愛いじゃないか

全く…参ったな


また顔を見れば、その赤い唇が美味しそうで

吸い込まれるかのように顔を近づけた





「…泉田先輩?」

唇まであと5センチ、って所でアオちゃんの目が開いた

物凄い近距離で目が合って固まる

少しぼんやりとした目がまた可愛い…んだけど!


ボクは…ボクは何をしようとしてたんだ!?

後退ろうとしたけど、身体が動かなくて尻もちをついてしまった

そしたらアオちゃんが飛び起きて

「大丈夫ですか!?」

なんて、聞くんだ

さっきの行動、何も思わなかったのかな?

ボクの下心もいよいよバレているのではと不安になるのに、とんでもない事をしようとしていたのに、キミはボクの心配をするの?

その優しさに、純粋さに胸が痛くなる

「大丈夫だよ」

上手く笑えているか不安だったけど、ボクの顔を見て良かった…とふにゃりと笑うアオちゃんがやっぱりどうしようもなく可愛くて


思わず抱きしめてしまったんだ

「せ、先輩!?」

もう、隠せる気がしない
キミへの想いはもうとっくに溢れて止まらないんだ

もう少し自信と確信が欲しかった

臆病で情けないけど、確実にアオちゃんが欲しかった

だから、もっともっとゆっくり進んで行こう
なんて思っていたのに

事故じゃなく、故意でアオちゃんを抱きしめてしまった

覚悟を決めろ、泉田塔一郎…!


抱きしめてしまった意味を話さなければ
もう誤魔化すことなんて出来ない


「ボクの話しを聞いてくれる?」


ボクは覚悟を決めた


もう後戻りは出来ない





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