じゃれつくなら噛み跡くらいつけてくれ

「アオさん!」

笑顔で駆け寄ってくるこのかっこいい男の子は一つ下の後輩で彼氏だったりする。
ああ、今日も存在が眩しい…!

「雪成くん、お疲れ様」

「いや、それよりいつも待たせてすみません」

「いいよー待ってると思ってないし、練習見てるの楽しいし」

「アオさんは本当に優しいっすね」

ニコッと効果音が付きそうな笑顔と共に私の頭を優しく撫でる
そのちょっとした仕草も未だになれずに心臓がドキドキする

優しくてかっこよくて、そして私をすごく大切にしてくれて…
そんな素敵な彼がどうして私と付き合っているのか好きでいてくれるのか時々不思議な気持ちになる

いつもは一緒に帰るだけなんだけど今日は雪成くんの部活が少し早く終わったから、私の家で一緒に宿題をする約束をしているのだ

私は家と学校がびっくりする位近いので寮ではなく通いだから、こうやってお家デートも割と簡単にできちゃう訳で
雪成くんは忙しいから頻繁にはムリだけど時々こうして少し長く一緒にいれる日は貴重だから嬉しくて仕方がない

「お邪魔します」

「どうぞ、そのまま部屋いってて」

「はい」

飲み物とおやつを用意して部屋に入る
私の部屋に雪成くんがいるのはなんかこう…
ちっぽけな部屋が輝いてみえる!

「はい、飲み物とおやつ」

「あ、ありがとうございます。あれ?今日アオさんのお母さん達は?」

「お母さん達仕事が遅くなるみたい!今日は私たち2人だから気を使わないで過ごしてね」

「そうなんですね。じゃあさっさと宿題終わらせましょうか」

「うん」

……

宿題をしている時も雪成くんがいつも先に終わるから、後ろから抱きしめられたりして邪魔をする
スキンシップが好きみたいで宿題の時に限らず2人の時は遠慮なくじゃれついてくるから私は心臓がいくつあっても持ちそうにない

「待って待って!もうすぐ終わるから〜」

「待ちません」

抱きしめる力が強くなる。
それだけでドキドキするのに話す時もいちいち私の耳元で話すから、雪成くんの声が近すぎるのと息がかかるから頭が真っ白になりそうだ

「まだですか?遅いですねアオさん」

「雪成くんがそういう事するからだよ、もう終わった!」

「そう言う事ってなんですか?」

「もう、わかってるくせに!」

ちょっと意地悪な物言いと笑顔にまたドキドキさせられる

カバンに宿題のプリントや筆箱をしまうのに雪成くんから少し離れて片付けていると

「アオさん」

不意に呼ばれて振り向いたら優しい顔をした雪成くんがいて

もう、近い!

「わ、びっくりした」

「はは。アオさん可愛いです」

そんな事を言って私の頬に手を添えるから、私はそっと目を閉じた

いつもの優しいキス
そっと触れるような優しい優しいそれに心が暖かくなる
ギュッと抱きしめられて「好きです」って雪成くんの声が聞こえて幸せな気持ちになる

「私も好き」

何度も何度も降ってくるキスの嵐に心が満たされる

…のだけど!

なんかこう、もっと!もっと来て欲しい!ガツッと!

優しいのも幸せで嬉しいけど、あのレースの時みたいなあの感じも見てみたい…っていうのは私のわがままなんだろうか

はしたないのかなこんな考え
沢山スキンシップしてくれてギュッてしてくれてキスもしてくれるのにそこから先がなかなか進まない

もう、私はとっくに先に進みたいと思ってるのにな…

「雪成くん…もっと」

「もっと?…ダメですよ、男の前でそんな事を言っちゃ」

「やだ」

ギューと自分から抱きついてみる
あ、おっぱい当たってるかも、でもいいもん
絶対離すもんかと抱きしめる力を強める

「アオさん、」

「いや」

何度もやんわりと離そうとする雪成くんに抵抗する

「…ったく…」

雪成くんの声のトーンが変わったからそっと顔を見る
雰囲気がいつもと違ってドキドキする

「雪成くん?」

「大切にしようと我慢してたのに。何で煽るんですか?知りませんよ、泣いても」

「雪成くんになら泣かされてもいい」

そう言って雪成くんにキスをする
そういえば私からしたのは初めてかも
なんて思ってたらガシッと私の後頭部に雪成くんの手が回っていつもと違う激しいキスに変わる

ついていくのに必死で息も上手くできない
そんな事お構い無しに雪成くんは離してくれない
離されたいと思わないけど…

しばらくしてそっと唇が離れた

「止めるなら今のうちです」

「や、止めないで!」

「はぁ…本当に…今までのガマンが意味ねーな…覚悟して下さいよ?」

荒々しいキスが続いて何が何だかわからない

「ゆ、雪成く…っん」

「オレがどれだけ我慢したと思ってるんすか。大体アオさんは他のヤツらと近すぎんだよ距離が!その度こっちがどんな気持ちでいたか…」

頑なに崩してくれなかった敬語も崩れて、顔は見た事ない男の人の顔
何だか食べられちゃいそうでドキドキしっぱなしだ

「もう我慢しねぇ」

そう言ってまたキスを落とす。
唇から頬、頬から耳、耳から首筋に雪成くんの唇が移動してきたと思ったらチクっとした痛み。

「いたっ」

「黙ってて下さい」

ボタンを少し外されて今度は肩に痛み。
あ、噛んだ!

鎖骨や肩に何度も来る痛み
かと思えはすっと首筋を舐められて唇にキスをされる
また息継ぎをする暇も与えてくれないキス
ドキドキして頭が真っ白になって涙が出そう
嫌だからとかじゃなくて嬉しいから

でも結局最後の最後は優しくキスするから雪成くんはやっぱり優しい王子様だ

服を直して鏡を見ると隠しきれない赤が恥ずかしくて仕方なかったけど、雪成くんの印だと思うと嬉しくていつまでも眺めていたくなった


*****

オレなりに大切にしたかった
ニコニコ優しいアオさんにいつも癒されて
好きになって告って付き合うことになって
ずっと幸せな笑顔でいてほしいからオレなりに精一杯優しくしてきた

アオさんの優しい所に惚れた癖に塔一郎が怪我した時にさり気なく手当てしてるのを見た時に凄く妬いたし、新開さんたちと楽しそうに話す姿を見てモヤモヤして仕方なかった

それでも嫌な思いや怖い思いをさせたくなかったかったし、自分の欲を押し付ける事はしたくなかった

だから全部抑えていたのに
なのにアオさんが煽るんだ
オレのガマンの意味はなんだったんだ
もう知らねぇ

キツく抱きしめて噛み付くようにキスして
首筋に吸い付いて、肩にも吸い付くだけじゃ物足りず本当に噛み付いてしまった
申し訳ない気持ちが湧いたのに、アオさんの顔を見たらゾクゾクしちまった

まだ煽るのか
もっと、もっとって物欲しそうな顔すんな

オレだってもっと見たい
もっと色んな顔を見たい、寧ろ泣いてる姿も見てみたい
加虐心が煽られる。止まりそうもねぇ

思わずこめかみに手をやる

ガリっとカサブタに手をかけた時に「雪成くん、すき」って言うアオさんの声で我に返った

「あっぶね、スイッチ入れちまうとこだった」


スイッチ入れちまったら本当に危ない

色んな顔を見たいとは思うけど、ガマンなんかもう出来ねぇけど、今日はこれだけの顔を見れたんだ。充分だろ
そう自分に言い聞かせる

「スイッチ?」

不思議そうな顔で聞いてくるアオさんはやっぱ可愛い

「…こっちの話です。アオさんは黙ってて下さい」

精一杯優しい口調で精一杯優しくキスをする。

結局大切にしたいんだよ

いや、大事にしてない訳じゃないけど今日の行動も…多分

ボタンを閉めても見える赤い跡にアオさんは怒るかななんて思ったが、鏡を見て赤面しつつも嬉しそうな顔をするからこれで良かったのかもと自分を納得させた




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企画サイト黒猫様に提出させて頂きました。
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