花の精

褒められシリーズの福富くんの設定



花の精を見た

そう言ったら荒北が体温計を持ってきたがオレは至って健康だ

部活の休憩中にたまたま通りかかった花壇のある場所
そこに1人の女子生徒がいた

色とりどりの花の中にいる彼女が花の精に見えた

その日から休憩になると意味もなく花壇のあるあの場所を通ってしまうのだ

ほぼ毎日、その女子生徒は花の水やりや手入れをしている
それを遠目から眺めるのが日課になっていた

「こんな所にいたのか」
「新開か」
「おめさん、最近休憩になると居なくなるけど…」
「…」

何やら話す新開をよそに無意識に例の女子生徒を見ていたようで

「なるほどな、あの子は山田 アオさんだよ。去年同じクラスだったから知ってる」
「そうか」

山田 アオ、山田アオ
1度聞けばきちんと頭に記憶された

その次の日も山田はそこにいて
手が汚れてもおかまないなしに土に触れる山田
その後水遣りをする姿を見るのがすっかり楽しみになっている自分自身の感情は何なのか気付きもしなかった

花に興味がある訳ではないが、見ているウチに新たな花が咲いたりしている事にも気付いた

咲いた花を見て微笑む山田はやはり花の精だと、新開達に話した




「寿一、おめさん今日も花壇に行ってたのか」
「ああ」
「フク、それはもはや恋ではないのか」
「恋ィ!?福チャンがぁ!?」

恋、か
オレは山田を好いてると言うことだろうか
考えた事がなかった…と暫し考える

「毎日会いたくて花壇に行くのだろう。それにフクにはその山田さんが花の精とやらに見えると言うではないか。少なくとも惹かれているんだろ」
「それもそうだな。オレもそう思ってた所だよ。寿一は山田さんが好きなのか?」
「何バァカな事言ってんだヨ。福チャンに限って」

「そうかもしれない」

「「「え!?!?」」」

「ンだよ!マジか福チャン」
「ああ」
「ヒュウ!おめでとう寿一、初恋か?」
「そうか、フクが恋か 」


お節介をやこうとするヤツらには何もするなと釘を刺す
不満げだったが、また相談に乗ってくれと言えばそれで手を打ってくれたようだ


「しかしフク、見つめているだけでは何も始まらんよ。話しかけてみてはどうだ?」
「それもそうだな。寿一、明日早速話しかけてみたらいいんじゃないか」
「頑張れェ」


と言われた事を思い出しつつ花壇に行けば、山田がいた
話しかけたら驚いていたけれど、山田は気さくなのか普通に会話出来た
オレのことは知っていると言われ、嬉しく思う

新しく咲いていた花を共に見て、花の名前を聞けば山田は調べてくれた
その花の名前と花言葉も聞いて1つ知識がついた気がする

そしてその時、山田に恋人がいないと聞いて心の中で「よし」と右の拳を握った自分がいた



「寿一、今日は話せたのか」
「ああ。新たな花の名前と花言葉を聞いた」
「ほう、そんな会話をしたのか」
「福ちゃん花言葉とか興味あんのかよ」
「あと恋人はいないと言っていた」
「チャンスだな、どんどん押していけよ寿一」
「そうだそ、フク」
「福ちゃんなら大丈夫だろ。つーかその山田とやらはどんなヤツなんだヨ。新開、オマエ去年同じクラスだったんだろ」
「普通の子だよ。普通にいい子」
「オレも気になって昨日見てきたが、至って普通だったな。感じの良さそうな子ではあったが」
「性悪女だったら全力で阻止すっけど、まァ普通が1番か」

普通、普通とヤツらは連呼していたが


「福富くん、休憩?」
「ああ」
「お疲れ様」

そう笑う山田は普通なんかではなくやはり綺麗だと思う

「綺麗だな」
「ああ、この花綺麗だよね」
「花もだが山田が綺麗だ」
「福富くん、またそんな事言う!毎回毎回ありがとね」

そう頬を染める山田は可愛らしいとも思った
前に咲いていた桃色のチューリップみたいな色をした頬に思わず触れたら、柔らかくて触れた事のない感触に驚く


「あ、土ついてた?ありがとう」
「…!」
「恥ずかしい!よく土ついちゃうみたい」
「いや違う、前に咲いてた花の色に似てたからで」
「へ?」
「いや…」

無意識と言えど無断で触れてしまった
異性に許可もなく触れるなんて言語道断

「勝手に触れてすまない」
「あ、え、なんで謝るの!気にしてないよ」
「女子の山田に勝手に触れるなんて言語道断。すまなかった」
「本当に気にしてないよ!びっくりしたけど、嫌じゃなかったから。頭上げて?ね?」
「…」

それでも頭を上げることが出来なかった
予測不能な自分の行動にも頭がついて行けず
どうきちんと詫びたら良いのか考えていた

そしたら小さな両手がオレの頬に触れたと思ったらそのまま上を向かされて

「山田」
「頭なんて下げないでよ。本当に嫌じゃなかったし、怒ってないし。ほら、私も福富くんのほっぺ勝手に触ったよ。これでおあいこだからね」
「すまない」
「だから謝らないでよ。それにしても福富くんの手って凄く大きいんだね。男の子の手ってこんなにも大きいなんてびっくりしたよ」
「山田の手は小さくて驚いた」
「そうかな?ねえ」

そう言ってオレの前に手のひらを向ける山田
大きさ比べだろうか
そっと手を重ねた時、胸が高鳴ったと同時に小さい手にまた驚いた

「やっぱり凄く大きい」
「山田は小さいな。こんな小さな手であの花達を咲かすのか」
「何言ってるの福富くん。私は水遣りと草引き位しかしてないよ。私が咲かしてる訳じゃないのに大袈裟だから」
「大袈裟ではない。その手助けがなければここまで綺麗に咲かないだろう」

今までたいした手入れをされていなかったこの花壇が綺麗な花を咲かすようになったのは紛れもなく山田が手入れをするようになってから

「でも委員会に入ってなかったらこの花壇の事知らないままだったんだろうな。って思ったら嫌々だった委員会も悪いことばかりじゃないね」
「そうか」
「うん。委員会に入ってなかったら福富くんとこうして話す機会もなかったしね」



「…と言うことを話した」
「なんだよ結構脈アリじゃナァイ!?」
「いい感じだぞフク!もう一押しだな」
「意外に大胆だな寿一は」
「さっさと告っちまえよ福チャン」
「いや、まだ早いだろう。もう少しだな」
「いやあ、結構行ける気がするけど」


告白か
いつかはするだろうがまだ早い
もう少し信頼関係を築くことが大事だろう


そう思いながら今日も今日とて花壇を目指す


「福富くん!ちょっと来て!」
「どうした」
「この前、福富くんと一緒に植えた花無事に咲いたよ」

少し前、山田と一緒に花の苗を植えた
すぐ咲く花だと言っていたがこんなにも早く花を咲かすなんて知らなかった
花を植えたり育てたりなどは小学生の時以来だ

「綺麗だね」

そう言って花を見つめる山田も、咲いてる花も

「ああ、綺麗だ」

そしてはらりと山田の髪に落ちたのは初めて話した時に咲いた花で
その時に花の名前と花言葉を知ったオレにとって感慨深い花

花を背に花を見つめる山田
頭に落ちた花は髪飾りをつけているみたいで

「やはり花の精だな」
「へ?」
「この世のものとは思えない」

髪に付いてる花を取る

「あ、えっと、お花付いてたの?取ってくれてありがとう」
「いや…山田は花が似合う」
「そんな事言われたことないよ。さっきも何だか福富くん変なこと言ってたでしょ 。花の精とかなんとか 」
「おかしいか」

おかしな事を言っただろうか
人間なのに花の精と言われて不愉快だったか

「すまなかった」
「え、なんで謝るの!違うよ、なんかこっちがごめん。花の精とかそんな綺麗なものじゃないのにそんな事言うからびっくりしただけなの」
「いや、山田は綺麗だ」

初めて見た時、花の精かと思って見とれた

そう言えば山田は頬をまた桃色のチューリップのように染めた

「そんな恐れ多いよ!」
「オレは嘘はつかないと前に言った。初めて見た日から山田に惹かれてた。この髪に付いていた花…。この花の事を話せたあの日は初めて話せて浮かれていたと思う」
「ちょ、ちょっと待って頭がついて行かない。えっと、何だか勘違いしちゃいそう」
「勘違いとは?」
「そんな風に言われたら女の子は勘違いしちゃうから簡単にそんな事言っちゃダメだよ福富くん」
「??どういう事だ?」
「ほら、なんかちょっと内容が告白みたでに勘違いしちゃう…と言いますか…」

勘違いでもなんでもなくオレは山田を好いているがおかしな事を言っただろうか

と思った時に東堂の言葉が頭を過ぎった

“フク、思いを告げる時はきちんと好いている事をつげるんだ。オレらならオマエの考えている事もわかるが、普通の女子には言葉足らずでは伝わらないからな”


「勘違いではない。言葉足らずだった。オレは山田が好きだ」

一目惚れだと皆は言った
そうだったのだろう。初めて見たあの日から惹かれていたのだから

「え、本当に?ほんと?」
「オレは嘘は付かないと何度も言った。初めて見た時から山田に惹かれてた」
「ねえ福富くん、この花の花言葉前に教えたでしょ」
「ああ」
「あの時から私も気になってたよ福富くんの事。話すのも最初は緊張したけど、どんどん打ち解けて…福富くんが来るのが楽しみになってた」

大きく風が吹いた
そしたらまたあの時の花が舞う

その花と山田が綺麗でまた見とれていたと思う

「ねぇ、この花の花言葉の意味まだあってね。ラブレターって意味もあるんだよ。なんか凄いよね。ありがとう、福富くん」

私も福富くんが好きだよ


そう言われて心が躍る
同じ気持ちでいてくれた事を嬉しく思った

「恋人になってくれないか」

そう言って手を差し出せば、山田がオレの手を握る

「もちろん、喜んで」

小さな手は温かくてでも何処か頼りなくて
これから大切にしなければと決意した

「ねえ福富くん、花言葉なんだけどまだあってね」
「まだあるのか」
「あの花自体が愛の花って言われてるんだって。愛の始まり、そんな意味もあるんだよ」

これからもよろしくねと満面の笑みで言う山田は可愛らしいと心底思ったのだった




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「ヒュウ!寿一もついに彼女持ちか」
「上手く行ったようで一安心だな。真っ直ぐな所がヤツのいい所だ」
「流石だぜフクちゃんはヨ。それにしても何かお花畑な雰囲気だな。こそばゆいっつーか」
「おっ!花壇の前だけにお花畑ってか?靖友も面白い事言うな」
「…」
「…バッカじゃねーの、サッッブ!ダッセ!」




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