少女漫画のような

※女子校に通う女の子と悠人くんのお話




「あれ!?ない!!!」

今日の帰りに定期券を買わなきゃいけないからと何となく教室でお財布を開けて見た
けれどいつもあるはずの学生証が入っていなくて青ざめる

この間、友達と映画に行くのに学割にしてもらう為に学生証を提示して…
その後お財布に閉まってからどこにいったの

とりあえずまだ時間に余裕があったから来た道を辿ってみても、学生証はどこにもなかった
駅で尋ねても、職員室で尋ねても私の学生証はどこにも無くて再申請する事も頭に過ぎる
今日いるのに…と落胆しながら授業を受けて昼休み、急に知らない番号から電話が鳴った

なんだろう…と多少不審に思いつつも、もしかして学生証かな?裏に電話番号書いてるし…と思い電話に出てみる

「も、もしもし」
「山田さんの電話であってますかぁ?」
「は、はい!山田です、合ってます」
「あーなら良かったっす。学生証、道で拾ったんで」

電話に出たら相手が男の子で思わずドキッとしてしまう

中学生の頃からずっと女子校の私には男の子と話す機会なんてあんまりないから緊張する

何となく、話しやすい男の子で安心した
彼は新開悠人くんと言って箱学の1年生らしい

「どうします?渡したいんで何処かで待ち合わせしましょうか?」

そう言われて「はい」って言おうと思ったけどちょっと待って!

学生証の拾ってくれたって事は写真も見られてるって事だよね

あの写真、すっぴんだし全然盛れてないし地味で可愛くない…
もっとちゃんとして撮ればよかったと後悔しても遅くて

あんな写真見られて、恥ずかしすぎて合わせる顔がない

だから私は「あ、駅か交番か…何処かに預けて貰っていいですか?」って言ったのに、直接渡すと押し切られて最終的に頷いてしまった


「今日は部活オフなんで何時でも行けますよ」
「そうですか、じゃあ16時30分に駅前でも大丈夫です??」
「いーっすよ。じゃあまた夕方」
「お手数かけますがよろしくお願いします」
「て言うか、アオさん2年生でしたよね?敬語じゃなくて普通に話してくれていいんで」

そう受話器越しに笑われて、ちょっと恥ずかしかったけど「じゃあ普通に話すね」って言えば「それでいいです」って優しい口調で言われた。

電話を切ってからもドキドキが止まらない


もしかして運命の出会いだったらどうしよう…なんて1人妄想する
だって、何だか今の状況が少女漫画みたいだもん

話した感じ、感じのいい子だったからもしかしたらかっこいい子だったらどうしよう!
浮かれてても世の中甘くないから、あんまり妄想しすぎると後でガッカリしてしまうかもしれないからやめとこう…なんて失礼なことを考える


でも、待って!あんまりピンと来ない子だったら「ありがとうございました」でバイバイしたらいいけど、かっこいい子だったら!?
あんまり男の子に免疫ないからすぐにドキドキしちゃうしまずいかもしれない

それよりも証明写真…なんでもっとちゃんとした顔でちゃんとした写真館とかで撮らなかったんだろう
あんなすっぴんの写真見られてしまってる以上、やっぱり気分は下がるだけだった


放課後、約束の時間が近付いてくる
髪の毛をクシでとかして、まつ毛はビューラーで上げて軽くマスカラを塗る
これだけで目がちょっとハッキリするから凄いと思う
あとはリップを塗っていい匂いのハンドクリームを丁寧に塗って…ってただ落し物届けて貰うのになんでこんなに意識してるの
会ったことない他校の男の子なのに

でも、少女趣味なのか夢見がちなのか
やっぱりもしかしたら…と思ってソワソワしてしまう


駅の前にある変なモニュメントの前で待ち合わせ
そこに向かえば、箱学の制服を来た男の子が1人立っていた

目が合えば、私に向かって手を振るからこの子が新開悠人くんのようだ


え、待って。かっこよすぎる…
正直想像以上で私の妄想してた漫画に出てくる男の子位かっこいいんですけど

途端、恥ずかしくなった
証明写真の私の記憶を消去してくれないかな、なんて


「山田さん、ですかぁ?」
「はい。新開悠人くんかな?」
「そーです。はい、これ学生証」
「あ、ありがとう〜!!!」

こんなにかっこいい子にどう接していいのかわからない
でも、こんなかっこよくて優しいなんて彼女も普通にいそうだな…

これでバイバイなんて寂しいなって思う程に胸がときめいて仕方ない

「てか山田さん写真も可愛いっすけど、実物は何倍も可愛いんでマジ驚きました」

「えっ」

「いや、普段だったらこんなの拾っても駅か何処かに預けるんですけど山田さんの写真見て可愛かったから…強引に誘ってすみませんでした」

「ううん!可愛いとか、そんな!ないない!でも、うん、私も新開くんに会えたから良かった…かな?ありがとう」

私が言うと新開くんは首を横に振って否定する
なんかその時の表情もかっこよくて…

「山田さんは可愛いですよ。話した感じも話しやすいし、良かったらこれからも連絡取って貰えたら…って思うんですけど」

ニコッて微笑まれて見とれてたら「答えはyesですかぁ?」って言われたらからが「勿論yesです!」って大きな声で言ってしまって笑われちゃった


「因みに、名前で呼んでくれると嬉しいんですけど」
「悠人くん?」
「そうです、オレもアオさんって呼んでもいいですかぁ?」

うんって頷けば悠人くんは嬉しそうに笑うから

夢見がちな私だけど、もうこれは恋の予感しかない…って思ってもいいのかな


証明写真もあれで良かったのかもしれない
ハードルが下がってるところに、ちゃんとした身なりで行ったから少しは良く見えたのかもだから


「また夜に電話してもいいですか?」
「いいよ!」
「また今度会ってくれますかぁ?」
「うん、是非!こちらこそまた会えたら嬉しいな」


これからまた会った時は可愛くなるように努力するから

「これからもよろしくお願いします」

そう差し出された手を握ればあたたかくて幸せな気持ちになった


これから私の好きな少女漫画のヒロインみたいになれるといいな



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