幸せな1日に

おいかけて、つかまえるの番外編です


「もしもしアオちゃんどうしたんだい?」
「泉田先輩!お誕生日おめでとうございます!」
「ああ、そうだったね。ありがとう」
「また学校で改めて言わせて下さいね」
「うん。ありがとう、嬉しいよ。また学校でね」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」



今日は特別な日


泉田先輩と出会って好きになった日、初めて寮まで送ってもらって筋肉を触った日、初めて一緒にお弁当食べて筋トレした日、付き合った日、初めてキスした日、仲直りした日…


私にとってはどれも大切な日
だけど、今日この日こそ1番大切なのかもしれない

だって、今日と言う日があるから泉田先輩が存在してるし、泉田先輩がいるからこうして幸せな日々を過ごせてる


だから色んな想いを込めてお祝いしたい



ひと月以上前から今日という日をどう祝おうか考えてきた
時には黒田先輩や葦木場先輩に相談もしたりして

きっとどんな事をしても喜んでくれるのが泉田先輩だけど…
それでも今日は誰よりも幸せだと思ってくれたらな


2人でお祝い出来るのは昼休み
放課後は黒田先輩と葦木場先輩達とのお祝いにまぜてもらうから

朝からお弁当作りに励む
いろんな種類を彩り良く、何度も練習したから綺麗に出来たはず

ケーキも焼いた
仕上げは放課後1度帰ってから急いでするから
そして部活が終わる頃に持ってくの

プレゼントも用意した
大人みたいにかっこいいものはあげられないけれど…
少しでも何かしたかったから

自分自身もいつもより、気持ち見た目の気合いも入れて
昨日は友達にオススメしてもらったパックもしたし、なんかいい感じ


「泉田先輩!こんにちは」
「アオちゃん、何だかいつにも増して大荷物だね」
「はいちょっと…へへ。これお弁当です」
「いつもよりお弁当箱が大きいから大荷物だったんだね。ありがとう、お腹減ってたし嬉しい」


お弁当箱を開けた先輩は初めてお弁当を渡した時みたいな反応をして、少し懐かしい気持ちになった

誕生日仕様のお弁当
ちょっと可愛すぎたかなって思ったけど、嬉しいと可愛いと喜んでくれた泉田先輩を見ると幸せな気持ちになる

…先輩に幸せだと思って欲しいと言いながら私が幸せな気持ちになってどうするんだろうと心の中で苦笑い

「凄いね、アオちゃん。HappyBirthdayってノリとか自分で切ったの?これ大変だったでしょ?」
「大丈夫です、練習したから…あっ! 」
「わざわざ練習してくれたの?そっか…そうなんだ」

ボクのためにありがとう
美味しいし可愛いし幸せだよ

そう笑う泉田先輩の微笑みがいつにも増して優しくて
なんだろう菩薩かな??

「アオちゃん」
「何ですか?」
「抱きしめていい?」
「勿論!」

アンディさんフランクさんもおめでとうございます
ファビアンさんも皆さんおめでとうございます

「泉田先輩、本当におめでとうございます」
「ありがとう。本当に、ありがとう。今日は寮まで送らせてね」
「はい」

少し見つめあって、キスするんだろうな…って思った

んだけど

「ちゅ、ちゅちゅちゅーーーー!するよ!ユキちゃん見てみてほら!わぁー!凄い!照れるどうしよう!」
「バカ!静かにしろ拓斗!ほら、もっと屈め!見えてんだよお前は!」

「ユキ、拓斗、もう遅いよ」

何だかデジャブ


放課後、すぐに寮に帰ってケーキの仕上げをして
何度も練習したかいがあってとても綺麗に出来たと思う

試作はいつも黒田先輩や葦木場先輩とか時には銅橋先輩にも食べてもらって…色々アドバイス貰っただけの事はある…気がする

箱に入れた位に黒田先輩から「部室集合」と連絡が来たから急いで向かう

部室前には葦木場先輩がいて「アオちゃん!どうぞどうぞ待ってたよ〜」と手を引かれて部室に入ればまだ泉田先輩は来てなかった

葦木場先輩が楽しそうに壁に飾り付けをしていて、テーブルの上には何だかタンパク質!って感じの食べ物が並んでいた

だけど泉田先輩の好きなたこ焼きも銅橋先輩が焼いていた
「おう来たかアオ!お前も沢山食えよ!!」
「はい、ありがとうございます」

やたらタコがデカい。タコがはみ出てる
豪快なたこ焼きはきっと美味しいだろうな

「そろそろ塔ちゃん呼んでくるね!」

そう葦木場先輩が部室を出ていった
黒田先輩が皆にクラッカーを配って、その後程なくして泉田先輩が来たんだ

クラッカーを鳴らしておめでとうを言えば、泉田先輩は豆鉄砲を食らったような顔をしていた

「大成功ってところだな」っていった黒田先輩のドヤ顔は忘れない

皆でワイワイしている中に部外者の私も入れてもらえて本当に有り難い

先輩が嬉しそうに笑う顔、やっぱり好きだな

今日は節制をしてないのか割と食べてて
最後に出したケーキも驚いてて…喜んでくれて嬉しかった

「全部美味しい。皆、ありがとう」

その時のあたたかい雰囲気は本当に一生忘れられない思い出になったと思う
泉田先輩を幸せにしたい1日なのに、何度私が幸せになったでしょうか


帰り道は手を繋いで帰った
寮までの遠くない道のりでも私には幸せな時間

「アオちゃん今日は沢山ありがとう。本当にサプライズだらけで驚いたよ」
「随分前から計画立ててたんです。良かったサプライズ成功して」
「そうだったんだ。気付かなかったよ、ありがとう。本当に良い一日だったよ」
「本当ですか!?やった!嬉しいな。あ、あと先輩」
「ん?」

私が急に立ち止まったから先輩も立ち止まる

もうすっかり秋の匂いがするな…
なんて、ぼんやりと思いながらもちゃんと渡さなきゃ、言わなきゃと自分を奮い立たせる
いざ言おうと思ったら緊張してしまって

先輩は私の言葉を待ってくれてるかのように優しい顔をしていた

カバンからまだ渡していなかったプレゼントを取り出して渡せば先輩はまた驚いた顔をしていた

「何度も言ったけど言わせてくださいね。泉田先輩お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。…これは?」
「誕生日プレゼントです」
「沢山プレゼント貰ったのに、これもいいの?」
「はい」

腕をひかれたと思ったらそのまま抱きしめられた

「沢山ありがとう」

「全然…先輩、本当におめでとうございます。先輩を産んでくれたお母様ありがとうございます。先輩生まれて来てくれてありがとうございます。先輩、大好き。先輩に出会えてこうしてお付き合い出来て抱きしめて貰って…私は幸せです」

「ボクの方が幸せだよ。今日一日ずっと笑ってた気がする。仲間が祝ってくれて、アオちゃんも祝ってくれて…こんなに嬉しい事はないよ。今日のボクはきっと誰よりも世界一の幸せ者だと思う」

ありがとう、アオちゃん
大好きだよ

先輩がそう言うと、私の頬に手を添えたから

目を閉じる前に先輩の顔を見ればやっぱりとても
とても穏やかに笑ってた

頬に添えられた先輩の手に私の手を重ねると、先輩は少し眉を下げて「本当に敵わないな」って笑うから

私は意味がわからなくて、そんな私を見て先輩は更に笑った

「ずっとキミが大好きだよ」

その優しくも真剣な目に何度射抜かれたでしょうか

「私もずっと泉田先輩が大好きです」

今日何度見たかな、その嬉しそうな顔

私が今日は幸せにしたいって思っても結局私の方が幸せな気持ちになっている気がして仕方がない

「さぁ、目閉じて?」

先輩に言われて素直に目を閉じれば、優しくてあたたかいキスの嵐が降ってきた




HappyBirthday
泉田塔一郎くん



back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -