オレだけを見てよ

言ってみれば一目惚れだった

オレの一つ年上のマネージャーのアオさん
初めて見た時に「なんかいいな」って軽く思っただけだったのに、毎日目で追っていた自分がいて

あー、好きなんだって思ったら今すぐにでも手に入れたくなって
毎日毎日毎日、押して押して押して

「今日こそオレと付き合ってくれますよね?答えはyesですかぁ?」

yes、ですよね?

って顔を近づけて言えば、アオさんは観念したかのように…顔を真っ赤にしながら首を縦に振ってくれた

やっと手に入った

アオさんにはオレだけを見て欲しくて、かっこ悪いけど必死だったと思う
だけどちゃんとオレだけを見てくれて、2人きりの時は沢山「悠人くんが好きだよ」って言ってくれたから安心してたんだ

この人といる時は何もかも忘れられる

ただのオレ≠ナ悠人≠ナいられるから

アオさんを初めて抱いたのはオレの実家に連れていった時
家に取りに行きたいモノがあったから着いてきて貰って…その日は誰もいなくて…
オレの部屋で2人、そんな最高のシチュエーション逃す訳ないだろ

アオさんはハジメテだった
それが嬉しくて仕方なかった
オレの、オレだけの、オレしか知らない
そんなのオトコにとっては最高に嬉しいもので

そして今日は2度目になると思う
アオさんの家に呼んでもらったから
「今日、両親旅行に行ってていないの」って頬を染めて言うからそんなの期待するしかないでしょ

そわそわしながらアオさんの部屋に入ると女の子らしい部屋に思わず胸が高鳴った
ヤッバイ…既にムラムラしてきた……
早く、早くこの可愛い人を抱きたい

なんとなく、目に入った机の上の写真立て
三つあってジッと見たらどれも

なんだよ…
結局、アオさんもそうなのかよ…

写真に写ってるアオさんの隣は全部隼人くん
どれも集合写真とはいえ、全部隼人くんが隣

何だか顔も近いし、隼人くんに肩組まれて顔赤くしてる奴もあるし、どれも2人共嬉しそうに笑ってる

敢えてオレはアオさんには隼人くんの話をしなかった
この人といる時はそんな事別に考えていたくなかったから

なのに

「アオさん」

情けない事に声が震えた

アオさんは心配そうに「どうしたの?」って言うけど、その優しさが今は残酷っすね

精一杯、笑ってみせるけど顔、歪んでるかも

不安そうな顔でオレに触れて
アオさんはなーんにも気づいてないんだ

「アオさんは…やっぱり隼人くんが好き?」
「へ!?はや…?新開さん!?」

あー…顔を赤くして目彷徨わせて

「やっぱり隼人くんの方がいいんすか?」
「新開さんは違うよ!優しくしてくれたし尊敬はしてるけど」
「写真」
「あ、あれはたまたま……」

「たまたま、ねぇ 」

たまたまって何だよ、ハッキリ言えばいいのに

自分がイラついてるのがわかっていたけど止められそうにない
好きなこの人を傷つける前に落ち着けと頭ではわかっているのに心がついていかない


隼人くん隼人くん隼人くん

この人だけは、そうでないと思ってたのに

胸が締め付けられるようなこの気持ち
今のオレには抑える事が出来なくて、そのままアオさんの手を引いてベッドに押し倒した

「悠人く、っん」

何も言わないで、何も聞きたくない
そう思い口を塞げばアオさんの肩が揺れる

唇を離してアオさんを見れば、やっぱりこの人が好きで好きで仕方ないと思い知らされた

「アオさんの好きな人は誰ですかぁ?」

「悠人くんだよ」

「嘘つき。本当に酷いっすね」

酷いのはどっちだよ

でも苦しさをこの人にぶつけるのはお門違いなのはわかってんのに、もう止められない

「俺でいっぱいになればいいのに」
「ちゃんと、好きだってば」
「ちゃんと、好きですか。どうだか」
「信じてくれないの?」

わからない
そんなの、わかんねーよ
でも…

「オレだけを見てよ…」

無理やり乱暴に抱くなんてオレには結局できる訳がない
初めてオレがここまで好きになった人

オレだけを見て?オレだけを好きでいて
こんな情けないオレの事

「…嫌いにならないで」

気持ちが昂ると泣けてくるってどこかで聞いたけど
その時はその意味もわからなかったけど、今ならわかる

この人の前ではオレ、何処までも情けない
かっこわるー

「好きだよ」

オレの頬に手を添えて、アオさんは優しい顔と声でそう言った

「私は、悠人くんが好きだから」

心配しないでよって首に腕を回されて
アオさんに引かれてそのまま倒れ込む
重くないように腕はベッドについて支えてるけど
アオさんの首筋に顔を埋めればアオさんの匂いでいっぱいになる

優しく背中を撫でられて「馬鹿だね、悠人くんは」とくすくす笑う

何となく悔しくて「何がですかぁ」って返したけれど酷く苦し紛れだなと思い心の中で苦笑い

「新開さんは新開さんで尊敬する先輩には変わりないけど。好きだって、恋心抱いているのは悠人くんだけ、世界一かっこいいのも悠人くんなんだよ」

結局アオさんは欲しかった言葉をくれる
いつもいつもいつも

「敵わないなぁ、ホント」

アオさんの顔が見たくて顔を上げたらアオさんはやっぱ優しく笑ってくれるから

「好きですよ、誰よりもアオさんが」

そう言ってキスしたら目を潤ませて嬉しいとか言ってくれるから、その顔はずっとオレだけが知っていればいいと自分の独占欲の強さに笑った


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

あのあと、集合写真が何故あの写真をチョイスしたのか聞かされて

「見せたくないけど…悠人くんが不安な気持ちになるよりは…」

って見せられた別の写真の数々は…
お世話にも写りがいいとは言えなくて

なんか違う方向いてたり目瞑ってたり
他の隼人くんが隣の奴も酷い顔のが多数

「これは飾れないでしょ…」
「あー…そっすね」

本当に、なんて言っていいのやら

「写真もそろそろ模様替えしたいんだけど…」

一緒に撮ってくれる?
なんて可愛い顔で言われて
そんなの答えは決まりきってるでしょ

「答えはyesですかー?」
ってオレには似ても似つかないモノマネで言うアオさん

可愛い

答えをいう前にキスしたらちょっと怒られたけど、その瞳にはオレだけしか写っていないのを見て何故か酷く安心した

オレとアオさんの2人しかいないから当たり前なのに

そのまま抱きしめて「答えはyesですよ」って言ったらアオさんから「やった!」って満足気な声が聞こえたから

「可愛い顔の写真飾りましょうね」

って言ったら拗ねた顔をして、コロコロ変わる表情が飽きなくて
結局その日は色々話をして過ごした

抱くのはまた今度…っすね

少し残念だけど、今日は抱きしめてキスして話したいからオレの心は満足感でいっぱいだった







back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -