オヒメサマって柄じゃないけど

今日はテスト前で部活はない
だからアオと図書室に行ったものの考える事は皆同じらしく、席が空いていなかった

ファミレスでもいいが調べ物も多いから学校近くにある図書館まで来たワケだが

アオは勉強そっちのけで絵本を見ている
ガキかよ!ったく…

「ねぇ、雪成くん」
「なんだよ。勉強しろよ」
「後でするよ」
「そうかよ」
「ねぇねぇ見て、これ!雪成くんみたい」
「ふーん」
「その返事!興味無さそう!」
「ねーよ!つか絵本見てる暇あんのかよ」
「ちょっと位いいじゃん。ね、読んであげようか?」
「読まなくていい」
「そんな事いわないで!」

読め読めとしつこくて結局その絵本を手に取る

読み聞かせされるより自分で読んだ方がマシだ

オレが本を開くと一緒に覗き込んでくる
読んだんじゃねーのかよ。しかもちけぇし
突っ込むのも面倒だからそのまま絵本を読む事にした


『むかし、むかしある所にアブー王国がありました』

ふざけた名前の国だな…と出だしから手が止まる
「早く読んでってば!」って言われ仕方なくまた読み進める


むかし、むかしある所にアブー王国がありました

そこに仕えているある1人の騎士がいました

その騎士の父親が大変優秀な騎士だったので、その息子にあたるこの騎士もとても優秀でした

新しい部隊に配属された騎士はそこの上司にあたる騎士がとても厳しい人で、日々怒られ打ちのめされていました

それが悔しくて日々練習に励んでいた騎士をアブー王国の姫が毎日ひっそりと見ていました

その一生懸命な姿に惹かれた姫は結婚するならこの騎士がいいと思っていました

ある日、騎士が姫の存在に気づきます
最初は話すこともなかったのですが、毎日カゲで見ている姫が気になり始めました

そしていつしか話をするようになり、恋心を抱き始めました

身分の違いなどからそんな事を考えてはいけないと考えていたのですが

「私は決められた人と結婚するのではなく貴方と結婚したいのです」と姫に言われ騎士はその想いに胸をうたれました

だから王様に結婚の許しを得るべく、直接話に行きました

王様は姫と騎士の結婚には反対ではありませんでした
騎士の父親を大変信頼しており、その息子となれば大歓迎でした

しかし王様にとって姫は大事な娘なので、騎士が騎士の父親以上に強くあって欲しかったのです
だから王様は、騎士の上司より強くなれば結婚を許すと言いました

それから二度、三度勝負を挑みますが全く勝てませんでした

だからもっともっと練習に励みました

その上司だけではなく部下にも負けてしまい、悔しい出来事もありました

前の騎士なら怒りでどうにもなりませんでしたが、黙々と練習を続けました

そして上司が違う部隊に移動になり最後の勝負をする事になりました
これに勝てなければ姫と結婚は出来ません

騎士は緊張したけれど今までの練習の日々や悔しさを思い出します
そして、上司との勝負に挑みました
やはり上司はとても強く歯が立たないかと思ったのですが、最後の最後で勝つことが出来ました

それを見ていた王様が姫との結婚を許します

そうして強くなった騎士は姫と結婚する事になりました

それからも騎士は騎士のままでアブー王国を守りながらも、姫と幸せに暮らしたのでした


…なんだこれ

「ね、雪成くんみたいでしょ!?」
「まぁ…んな感じだけど…それにしてもこれ、子供にゃ難しいだろ」
「んー、まぁ確かに。あんまり考えてなかったけどそうかも」
「しかしこんなしょうもねぇ話でも出版出来んだな…」
「しょうもないとか言わないでよ!私はお気に入りなんだから」


買おうかなって思ってるのに!
なんてアオは言うからオレは頭を抱えた

「雪成くんが騎士…似合うよね、かっこいいよね!絶対!」
「そらどうも。アオは姫…って柄ではないな」

オレが笑うとムッとした顔をする

「どーせ私は農民の娘A位ですよ」
「あぁ、納得」
「農民の娘Aだもん…」

AでもBでもなんでもいいけど
アオは機嫌を悪くしてしまったのか黙って勉強をし始めた

何を言っても不機嫌全開のアオに冗談の通じねぇヤツだと少々呆れたけど

まぁそんな所も嫌いじゃないのは惚れた弱みか

時間が経ち図書館は人も少なくなっていて
オレらの周りには人がいなくなって

そろそろ帰ろうかと言うことになり、片付け始める

まだ気落ちした表情のアオにしつこいなと苦笑いする

……仕方ねーな

オレはアオに手を差し出す
普段そんな事しないから照れくさい

「え、雪成くん?何!?」
「いい加減機嫌直せよ」
「機嫌悪くないもん」
「はいはいそうですか…さ、帰りましょうか」

お姫様

アオの手を引いて耳元で囁けば、アオは耳まで真っ赤にして固まってるから、その反応が素直に可愛いと思った


それから時々そうやってからかうようになったオレも大概だなと心の中で苦笑いしつつ、頬を赤く染めて嬉しそうに笑うアオを見て、やっぱ悪くねぇなと納得したのだった




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企画サイト黒猫様に提出させて頂きました。
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