なんだかんだいって

「荒北先輩!荒北先輩!荒北先輩!」
「アァ?んだよ山田チャン。朝からうるせぇ」
「そんな冷たい事言わないで下さいよ!」
「ハァ…」

朝から騒がしい山田チャンに頭が痛くなる
マネージャーとしては働きモノだし真面目で基本的にはイイコだけどォ…

部活前後は部活中とは別人みたいに絡んできやがる
可愛いっちゃ可愛いけど毎度これだと疲れるっつーか…
まぁ何を言おうが構わず寄ってくるから邪険には扱えねェ
めんどくせーとは思うがウゼェとは思わねェし


「先輩聞いて下さい!」
「ハイハイなんデスカー」
「おお!出た棒読み!」
「ッセ、早く言えバァカ。もう聞かねェぞ」
「ごめんなさい!あのですね!」


あんだけ絡んどいて言ってきた事が
昨日の小テスト満点だった、苦手な英語なのにと

それだけかよ!って心の中で呆れ返る
まぁいつもの事だけどォ、だからなんだって話だろ

「ヘェ」
「そんな!今日も冷たい!!」
「ハァ…モウイイ?」
「あ!それだけじゃなくて…今日も頑張れるように褒めて下さい!!」

ハァ!?褒めるってなんだよ褒めるって
バッカじゃねーの
オレが?頑張ったネーって!褒めろと?
ハッ!

「めんどくせーからイヤだ」
「えー!」
「さ教室行こ」
「待って下さい!荒北先輩」

腕をガシッと掴まれる、必死かよ

「んだよ…イヤなもんはイヤだ」
「あっそーですか。じゃあ荒北先輩のドリンクだけうっすーくうっすーーーーーく!しちゃいますからね!」
「ハァ!?いい加減にしねェと怒るぞ」

少し声を荒げれば山田チャンは拗ねたような、悲しそうなようなどちらとも取れる顔をしてオレは言葉に詰まる

「…調子乗りました、ごめんなさい。だって荒北先輩に褒めて欲しかったんだもん」

あー…そゆ顔反則だっつーの!

「あー!山田さん泣かしたー!荒北さんが泣かしたー!」

真波が野次を飛ばすだけ飛ばして部室から出ていった
つかまだ泣いてねーし!

「少し位褒めてやれよ靖友」
「偶には褒めてやればいいではないか!心の狭いヤツだな荒北は!」
「山田は頑張った」

どいつもこいつも好き勝手言うだけ言って部室を出て行った
なんなんだよ一体…ったく…

今はもう山田チャンとオレしかいねぇ
…チッ…仕方ねェな。世話の焼けるヤツ

ハァとわざとらしくため息をつけば山田チャンの肩が大きく跳ねる

今更ビビってんじゃねーよバァカチャンが

「あー…ガンバッタネ」

人を褒めるなんざすることねェからわかんねェんだよ

「言わせんなよバァカ」

色んな感情を誤魔化すように山田チャンの頭をクシャっと撫でたら山田チャンが見た事ない位嬉しそうな顔をするから、まぁたまにはネと自分の中で言い聞かせた



ーーーーーーーー


「ところで山田ちゃんは何であんなに靖友に懐いてるんだ?」

「荒北先輩って…実家で飼ってる猫に似てるんです。見た目も性格も…ツンなんです!ツン!」

ネコ…

「荒北にそっくりな猫!?顔も性格も!?さぞかしブサイクな猫なのだろうな!!」

東堂マジコロス

んだよ…ネコですかソウデスカ

複雑な心境ではあるがオレはめんどくせェから何も言わなかった

「でも、本当にイケメンなんですよ!家のネコ!荒北先輩もかっこいいじゃないですか」

一生懸命話す山田チャンを見ていて考える
あーアレだ、山田チャンはオレん家のアキチャンに似てるのかも

懐いて寄って来る所とか
叱れば悲しそうな顔をする所とか
褒めれば嬉しそうに笑うところとか

だから結局甘やかしちまうんだな

と、納得したのだった





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