お願い聞いて

「ねえ、アオさん」

そう呼びかけて来たのは後輩の真波くん
…それで彼氏だったりする
今日はテスト期間だから真波くんの家で一緒に勉強している


「なに?どうしたの?わからない所でもあるの?」
「んー別に…そんなことよりも」
「ちょっと!勉強中!」

後ろから抱きついてくる真波くんに戸惑う
だってこうなったら真波くんは言う事聞かないから…

「アオさんってさオレに甘えたりしてくれないよね」
「はい!?」
「だからー、オレはこうやって抱きしめたり、そんなんじゃなくても色々…甘えてばかりでしょ?」
「そう、かなぁ?」

そんなの気にした事無かったけど
でもだってそんな…くっついたり甘えたりなんて出来ないよ恥ずかしいし

甘えてもらうのは可愛いし嬉しいからいいんだけど自分からとか、ね?

「そうだよー、ねぇ何か甘えてみて?」
「そんな事言われても…」
「お願い!」
「それってお願いする事なの…?」
「いいじゃん、ね?早く早く」

凄く可愛い笑顔
本当にこの子は天使だよ…
私はその笑顔に弱いんだってば

バッっと手を広げる真波くん

あーもう多分これは無理だダメだ観念するしかないか

小さくため息をついて私は真波くんの胸に飛び込んでギューっと抱きしめる

恥ずかしくて真波くんの胸に顔を埋める
真波くんの匂いが好きで落ち着くんだ
もうこれだけで幸せだよ

「こっち向いて?」

そうやって彼は耳元で囁くけど、私は知らぬふりをした
そんな顔見るなんて無理

「無視しないでよ。こっち見て」
「む、無理〜」
「ふーん。じゃあもう押し倒すけどいいよね?」
「え!?」
「あ、こっち向いた」

悪戯に笑う真波くんは前言撤回、小悪魔だ!

「真波くんのバカ!意地悪!」
「アハハ、バカでも意地悪でもいいよ別に。それよりもねぇ、名前で呼んで?真波くんはナシ」
「え…名前で呼ぶの…」
「本当はずっと呼んで欲しいと思ってるのに、呼んでくれないし」
「だって恥ずかしいんだもん」

なんとなく、名前って恥ずかしくて
一気に距離が縮まる感じが
…いや縮まるのはいい事なんだけどさ

「じゃあオレももう山田さんて呼ぶから」
「え!?それはやだ」
「何かいいました?山田さん」

いきなり敬語になるし苗字で呼ぶし
凄く寂しい気持ちになる私はワガママかもしれない

「じゃあ勉強しましょうか」

そう言って私から離れる真波くん
待ってって言ったのに聞いてくれないし、こっち見てくれないし…

たまらなく寂しくなって、私に背中を向けて机に向かった真波くんに後ろから抱きついた

「ごめんね」
「なにがですかー?」
「名前で呼ぶのとか色々…恥ずかしかったから…怒らないでごめん」
「別に怒ってないですよ」
「嘘だぁ、そんなよそよそしくしないでよ山岳くん…苗字で呼ぶとか言わないで」

それでも何も言ってくれないから寂しい

「こっち向いて、お願い」
「仕方ないなぁ」

振り向いた真波くん…山岳くんの顔はとてもにこやかで
良かったぁ

前に向き直った山岳くんにもう1度抱きついた

「…すき」

思わず、出た言葉だった
そんな言葉なのにキミはそんな嬉しそうな顔するの?

「オレも好き、大好きだよ」

そう言って山岳くんが思い切り抱きしめるから
少し苦しいけど、幸せだからいいや

「幸せ…」
「あーもう…たまんない。アオ…大好き、可愛い」

頬に手を添えられて顔が近づくから私はそっと目を閉じた



「……で、結局勉強…進まなかったけど」
「アハハ、何とかなるでしょ」
「大丈夫なの!?真波くん!テスト!」
「何ですか山田さん」
「あ、間違えた!もう!山岳くん」
「はぁい」

もう振り回されっぱなしの自分に苦笑い
だけど彼には敵いそうもない

だけど「お願い、勉強頑張ろ?」って少し甘えて言うと3回に1回は聞いてくれるようになったから少し進歩したのかな

私も山岳くんもね







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