わかりやすいモノなんだ

恋心とは正直邪魔なモノだと思っていた

女子に騒がれたり応援してもらえるのは励みにもなるし嬉しいものだけど、只それだけで
告白されるのも嬉しくないと言えばウソになる
人に好かれて嫌な気持ちはしないからな

しかし誰かと付き合うとかそんな事を考えた事なんてなかった今まで。
いや、今も本音ではそれはないなと思っている

忙しいのだ、毎日が
ロードで始まりロードで終わる日々
学生の本分の勉強もある

だから特定の誰か≠想ったりする暇なんてあるはずがなかったんだ

なのに…

クラスメイトのアオちゃんに恋心を抱いたのは何時頃からだろうか


前の席だったアオちゃん
プリントを回された時にこちらを振り向いた時の笑顔が不覚にもいいなと思った

たまたま委員会も同じになり、忙しいオレに気を遣って知らない所で仕事をしていてくれたのを知り、詫びた時に「バレちゃったかー」っておどけた笑顔とその優しさがいいな、可愛いなと思ってしまったんだ


その後、彼女はいいよと言っていたがオレも一緒に仕事をするようになった
それで話をする機会も増えて、教室でもたわいない話をするようになって…
前の席の彼女の肩をトンと叩いた時に振り返って「ん?」って言う時の顔もいいなと思って…
話す声もテンポも心地よいのだ


「それって普通に好きなんじゃねーのォ?」
「だろうな」

「な、何!?」

荒北や新開達と昼食を取っていた時にアオちゃんの話をしていたらそう荒北達に言われてそこで腑に落ちてしまい、この気持ちに気づいた時には止めるのが難しくなっていた

でもまだ今は忙しい
とは言いつつも別にきっとオレだから誰かと付き合うにしても上手く行くだろう

忙しいのは言い訳なのかもしれない
だがしかし今はそういう訳にもいかんのだ

しかしどうにも目で追ってしまう

後ろ姿を見ているだけでも癒されるがこちらを向いて欲しい
でもそんな何度も呼ぶのは怪しいし

そんな風な気持ちで日々を過ごしていたら、席替えがあって見事に離れてしまった

誰もが羨む一番後ろの窓側を引き当てたのは流石オレだと言えよう
アオちゃんは真ん中の列の一番前という残念な席を引き当ててた

離れても別にクラスメイトだし話すこともある
委員会だって同じだし

「東堂くん席離れちゃったね」
「そうだな、それにしてもいい席を引いたなアオちゃんは!」
「あ、嫌味か!」

オレが笑うとアオちゃんに肩を叩かれた
その手を掴んでしまいたい…
そう思うオレは末期だなと心の中で苦笑いをした

授業中もふと前方にいるアオちゃんをつい目で追ってしまう

ここまで想っているのならばいっその事気持ちを告げてしまえ!と思う自分とそんな余裕はあるのか?と思う自分にため息が出る

今想いを告げてアオちゃんを付き合う事になればとてつもないモチベーションになるだろう
頑張らねば…とより身が引き締まる思いをするだろう

頭ではわかっていても、今ではないだろうという気持ちが邪魔をする

何の拘りか自分自身でもわからなくなる

恋心とは思考回路をこんなにも狂わせる

だからそれに溺れるのが未知故に恐怖でもあるのかもしれない
情けないな…と自嘲する

「東堂くん、どうしたの?」

まただ
委員会の資料をまとめていると言うのにアオちゃんを見つめてしまっていた

「いや、何でもない」
「視線が痛いんですけどー?なにか付いてる?」

その笑顔が好きだ
その声が好きだ
アオちゃんがただただ好きなんだ

もう認めてしまえ!吐き出してしまえ!
そうしたら楽になる

…そもそもオレはアオちゃんに恋心を抱いているがアオちゃんはどうだろうか
そんな事、そう言えば考えた事がなかったな


「おーい、東堂くん?」

そう言ってオレの肩を叩くアオちゃんの腕を思わず掴んでしまった

「アオちゃん、」
「え、なに?どうしたの?東堂くん?」

驚いているな。そうだろうな
離さねば、わかっているのに
離せないし言葉が出ない

アオちゃんの目を見る
アオちゃんもオレを真っ直ぐ見据えている

好きだ、アオちゃんが好きだ

言ってしまえ、言わねば

言葉が出ない
なのに、アオちゃんは顔を真っ赤にして心なしか目も潤んでいる

可愛い…!!好きだ、好きなんだ
早く!もう言おう、言ってしまおう

「東堂くん、あの、あのね!」
「アオちゃん、好きだ」
「うん!私も好き!」

今、何と言った?

迷いに迷った癖に衝動的に出た想いの言葉
そして間を入れずに返ってきた言葉に耳を疑う

驚いた顔でアオちゃんを見る
そしたら顔を相変わらず真っ赤にしたアオちゃんが

「だから、私も好き…なんですけど」

同じ気持ちなんだな、そう思ったら口元が緩みそうだ

「そうか、ならオレと付き合ってくれるか?」
「はい!喜んで!」

そう言ってオレに飛び込んできたアオちゃんは可愛いと思う

ーーーー

それから付き合いが始まって、忙しい日々は変わらないがアオが恋人と言うだけで気分は段違いなもので
ロードと恋愛、両立なんて出来ないと言うやつも多いがこれは杞憂に終わった


「ウッゼ」
「ウザくはないな!まぁ聞け荒北!」
「おめーのノロケは聞き飽きたんだよ!あっち行けボケナス!」
「なにー!?お前も今後の参考になるだろう」
「ならねーよ!ウゼェ…あ!山田チャン、このバァカ何とかしてくんなァイ?」

荒北の言葉に振り向けばアオが手を振っていた

「アオ!?」
「練習見に来ちゃった!」
「そうかそうか!こっちの日陰にいるといい」

日陰まで手を引いてから頭を軽くなでる
ほら、そうしたら頬を赤らめるだろう
その顔が可愛いしオレは好きなんだ

「私も好きだよ」
「な!?」
「あれ?思ってること違った!?恥ずかしっ」
「いや、違わない」

違わないが何故わかったのだろう
そう心の中で思えばアオは「尽八くんはわかりやすいんだもん」ってクスクス笑う

そうなのか?と少々腑に落ちないがそうなのだろうな

「気をつけて、行ってらっしゃい」

「ああ。行ってくる。終わったら一緒に帰ろうな」

「うん!待ってるね」

ロードに乗って山を越えてまたここに帰って来たらアオがいると思うとより頑張れるものだな

浮かれすぎだと荒北に叩かれても、オレの心はとてつもなく晴れやかだった




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