幼い頃は近所の子達とよく遊んだもので
年齢や性別など関係なく暗くなるまで遊んだものだ


3つ上のアオちゃんは近所に女の子が少なかったのもあるが、とりわけ姉と仲が良くて家にもよく遊びに来ていた

よく笑う優しいアオちゃんに自然と恋心を抱いたのは何時だったか

だからと言って何がある訳でもどうする訳でもなく過ぎていく日々

オレ以外知らない小さな恋心

小学生のオレと中学生のアオちゃん
会う回数はすっかり減ってしまっていたけれど、それでも会えば変わらず話しかけてくれた

「尽八くん!今、学校の帰り?」
「ああアオちゃん。そうだ。アオちゃんは?」
「私はこれから塾だよ!受験生だからね」
「姉も受験とやらの時はヒーヒー言っていたな。中学生は大変なんだな」
「そうなの。もう少し賢かったら良かったんだけど」


オレよりも背が高く大人びた彼女が遠くに感じる事もあった

早く、追いつきたい
自分も中学生になって背が伸びたら…少しはアオちゃんに追いつけるだろうか

そんな風に思いつつ、オレが中学生になれば彼女は高校生になった

その時には身長は少し追い抜いて、これからどんどんオレの方が大きくなる
だけど、高校生になった彼女はまた一段と大人っぽくなっていった

「アオちゃん、高校の制服が良く似合うな!」
「尽八くんも学ラン良く似合うね。背も抜かされちゃったなぁ」
「成長期だからな。もっと伸びるし、去年までとは逆で今度はオレがアオちゃんを見下ろす事になるだろうな」
「ずっと私の方が背が高かったのに、変な感じだね」

笑えばまだ可愛らしい

だけど、オレが1つ成長すれば彼女だって同じなわけで
イタチごっこの如く追いつかないもどかしさに苦しくもなった


自分自身も自転車と出会って、忙しくなっていった中学生時代
アオちゃんとは殆ど会うこともなくなっていった
だけど会えば胸が弾む

身長もオレの方が随分と高くなって声だってすっかり低くなった
少しは追いついただろうか
それでも彼女もまたどんどん綺麗になっていって

またもどかしい気持ちになるのだった

この想いを告げることはない
なんて言うのは嘘で実は何度も告げているんだ

でもその度「ありがとう!」って本気でとりあって貰えなくて、まだ意識してもらえてないんだと落胆する

何時になったら追いつくのか
何時になったら意識してもらえるのか


結局数年たってもオレのこの恋心が燻る事は1度もなかった

「尽八くん!」

中学の卒業式の日
家に帰ればアオちゃんも帰って来たようでバッタリ会った
後で会いに行くつもりだったので好都合
ゆっくり話せるのは数ヶ月ぶりだ

「アオちゃん!高校卒業、おめでとう!」
「尽八くんも中学卒業おめでとう!!」
「ありがとう。アオちゃんは大学に行くのか?」
「うん、家から通える所だから今までと変わらないよ。尽八くんは箱学だよね?通い?」
「いや、寮だよ」
「寮なの?そっか、そうだよね!自転車、強豪だもんね…それにしても、尽八くんボタン全部ない!名札も!モテモテだね」

尽八くんはかっこいいもんね
人気あるのは当たり前だよねぇ

と笑うアオちゃん
カッコイイのはまぁ…当たり前の話だし人気があるのも事実

アオちゃんに本心でそう思って貰えたら1番嬉しい
だけど、きっとアオちゃんは深く考えてないだろうな

「アオちゃん」
「なに?」

オレはポケットからある物を取り出した
これはアオちゃんに渡したかった
アオちゃんはいらないかもしれないけれど、少しでもアオちゃんの心に残りたくて、入りたくてオレは必死だ

「これを受け取ってくれないだろうか」
「ボタン…??私に…??」
「要らないかもしれんが、受け取って欲しい」
「もしかして第二ボタン?」
「当たり前だろう」

好きな子に貰って欲しいんだ

そう言えばアオちゃんはやはりいつものように「ありがとう」と言って笑った

まだ、届かない想いが届く日は来るのだろうか

それでもオレはこの想いを諦める事なんて出来なくて、アオちゃんを手に入れたくて

高校生になれば、少しは年齢の差は気にならなくなるだろうか

忙しくなるから、考える事も減るだろうけど

それでも本格的に動く事をオレは決意していた



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